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ガバナンス編集部

【自治体学会横浜大会プレフォーラム】「自治体学」の未来を見つめる/イベントレポート

地方自治

2026.09.02

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【ガバナンス・トピックス】
「自治体学」の未来を見つめる
──自治体学会横浜大会プレフォーラム

自治体学会(阿部昌樹理事長)は、今年8月21~22日に第40回横浜大会を開催する。その開催に先駆け、5月30日にプレフォーラムを開催した。本大会と同じ横浜を会場に、大都市、小さい自治体それぞれのまちづくりのあり方を考える時間となった。

大小の自治体のまちづくりから学ぶ

 市民・自治体職員・研究者のネットワークである同学会は、1986年に設立。今年8月に開催される40周年記念の横浜大会に先立ち、関東学院大学横浜・関内キャンパスでプレフォーラムが開催されました。

 今回は「『自治体学』の未来に向けて~横浜で語り合う市民自治とまちづくり~」をテーマに、第1分科会では都市・横浜の都市政策、まちづくりについて、第2分科会では、小規模自治体の地域づくりについて、地元・神奈川県ならではの題材が設定された。

 まず、地元実行委員会委員長の鈴木伸治・横浜市立大学教授が登壇した。「本学会は、横浜の地で都市プランナーとして多大な功績を残された田村明先生が設立に大きく関わった学会だ。田村先生は『プランナーは未来の市民のために働く』と仰っていた。この精神は今を生きる私たち、そしてこれからの地域社会を担う全ての人々の道標となるものだ。自治体学会は今年40周年を迎える。社会の課題が複雑化する今こそ、田村さんをはじめ先人たちの思想を振り返り、同時に次世代へどうつないでいくのかを考えなければならない。今日の議論が夏に開催される本大会の熱い議論のキックオフとなれば」と挨拶を述べた。

記者会見の様子①
横浜市の都市デザインを担ってきた、同市都市デザイン室の面々がその歴史を振り返った。

ヨコハマの都市デザインを知る

 第1分科会では、「横浜都心部のまちづくりに見る自治体の都市政策の今と昔~関内及び周辺地区のまちづくりを題材として~」と題し、関内地区を中心とした横浜都市部の都市政策の歩みと現在地を見つめた。コーディネーターは、小西真樹さん(横浜市職員)が務めた。

 この分科会では、かつて、飛鳥田一雄(あすかたいちお)市長から横浜市のまちづくりを任された都市プランナー・田村明氏の実践の足跡をたどりながら、横浜市職員として都市デザインに関わってきた3人が登壇した。

田村明氏の都市デザインの功績

 まず、田口俊夫さん(NPO法人田村明記念・まちづくり研究会副理事長)が登壇。田口さんは、田村明氏が横浜市企画調整局長を務めた最後(1978年4月)に入った都市デザイン担当職員。現在は、2015年に設立したNPO団体で、田村氏らが行った横浜市のまちづくりと都市経営の歴史を研究し、その成果を「まちづくりアーカイブズ」として公開する活動を行っている。

 田口さんは、「客観的かつ科学的に検証しなければならないという思いでやっている。田村氏は膨大な著書や論考を残しているがそれだけでは分からない部分が多い。実際にまちづくり関係者らがどういう気持ちや思惑で関わっていたかということまで詳細に記録にとどめ、そしてそれを公開し、みなさんに使ってもらいたい──という思いで活動をしている」と説明した。

 その上で田口さんは、田村氏の行った都市デザイン(高速道路の地下化など)について詳細に説明。「田村氏が都市デザイン全体の調整をし、その事例を見た職員たちが勉強をし、育っていき、その後の横浜市のまちづくりを推進していったのではないか」と、田村氏の横浜市での都市デザインの功績について述べた。

都市デザイン50年の変遷と7つの目標

 次に、秋元康幸さん(横浜国立大学・横浜市立大学客員教授、元・横浜市役所都市デザイン室長、NPO法人BankART1929副代表)が登壇した。在職中は、都市デザイン室長や創造都市推進部長などを歴任し、横浜のまちづくりの最前線で活躍をしてきた。

 秋元さんは、都市デザイン50年の変遷をたどり、以下のように整理。

①萌芽期(1960年代):「横浜の都市づくり」構想と都市デザインの萌芽
■飛鳥田一雄市長時代、田村明氏が六大事業を推進
■田村明氏が、都市デザイン的な考え方で、都市づくりを推進
■プロジェクト、コントロール、アーバンデザインの駆使
■事例:高速道路地下化。

②黎明期(1970年代):横浜型都市デザインの誕生と発展
■企画調整室にアーバンデザインチームが発足
■岩﨑駿介氏が、横浜のアーバンデザインの基礎となる考え方を整理
■事例:くすのき広場、都心プロムナード、馬車道、ペア広場。

③拡張期(1980~90年代):都市計画・まちづくりの領域と主体を広げるイノベーター
■横浜市長が飛鳥田氏から細郷道一氏時代へ。
 田村明氏の体制から変わり、都市デザインの確立と領域拡大。
 都市デザインが、歴史・水と緑、郊外、住民参加など、横断型調整をしながら領域を拡大
■事例:歴史を生かしたまちづくり(北沢猛氏)、水と緑、郊外展開、参加のまちづくり。

④波及期(2000年代~):みんなで行う都市デザイン
■非成長・人口減少の時代に向け模索をしはじめた時代、景観条例による都市デザイン協議
■地域まちづくりの推進(地域まちづくり条例・ヨコハマ市民まち普請事業)
■事例:地域まちづくりの推進、創造都市(北沢猛氏・横浜市参与)、インナーハーバー構想、景観ビジョン

──という変遷を概観した。

 秋元さんは、「田村氏は、横浜市六大事業など大きな事業をやってきたが『細かいデザインが市民の手に触れるのだ』と言っていた」とし、その上で、「個性と魅力ある人間的なまちをつくる」ための都市デザインの7つの目標(擁護すべき価値)として、
①歩行者活動を擁護し、安全で快適な歩行者空間を確保する
②地域の地形や植生などの自然的特徴を大切にする
③地域の歴史的、文化的資産を大切にする
④オープンスペースや緑を豊かにする
⑤海、川などの水辺空間を大切にする
⑥人々がふれあえる場、コミュニケーションの場を増やす
⑦形態的、視覚的美しさを求める
──を紹介。

 秋元さんは、「ただ美しいものだけを作れば良いというのではなく、そこで活動している人達が心豊かにあることが大切であることが、横浜の都市デザインの根本的な理論として守られてきているのではないか」と述べた。

「市新市庁舎デザインコンセプトブック」について

 三人目は、現役で横浜市の都市デザインに関わっている桂有生さん(横浜市都市整備局都市デザイン室デザイン調整担当係長)が登壇した。桂さんは2007年に都市デザイン専門職として同市都市デザイン室に入り、一貫して同市の都市デザインに関わってきた。講演では、横浜の都市デザインの歴史を振り返りつつ、現在の取組みについて説明した。

 桂さんは、2020年に完成した8代目横浜市庁舎を建設するにあたって作成した「市新市庁舎デザインコンセプトブック」について紹介。設計・施工一括発注方式(デザインビルド方式)という新しい手法で進め、事業者を選定するにあたり、市民の方々はじめ、事業者と「横浜市の考える新市庁舎のデザイン」や「新市庁舎がまちづくりで果たすべき役割」についての方向性を共有するためにまとめたという。

 また、このようなコンセプトブック/デザインノートは、都市デザイン室として、
■俯瞰的な計画と実際のハード整備
■トップダウンとボトムアップ
■市の希望と民間企業の計画
■局間調整/協働や共創の指針
──などの間を繋ぐツールとして、様々な場面でシリーズ化して作成しているという。

 桂さんは、「各主体の横つなぎ、横断的調整をミッションとする都市デザイン室が中間領域で効果を発揮するための手法になっている」と語った。

 さらに新たな都市デザインのあり方の検討している状況についても言及。横浜らしい暮らしの実現に向けた「取組み姿勢」を載せた冊子『まちを くらしを デザインするヨコハマ』について紹介した。

 後半は登壇者らでパネルディスカッションが行われ、議論を深めた。

記者会見の様子②
横浜市都市デザイン室の桂有生さんは、都市デザインをアップデートしている取組みについて紹介した。

神奈川県内の「小さな自治」の実践例を紹介

 第2分科会では、「『小さな自治』の魅力と連携~神奈川から考える持続可能な地域づくり」という題で、視点を「小さな自治」へと移し、少子化や人口減少が叫ばれる時代において、多様な町の事例から「顔の見える関係性」だからこそ生まれる住民自治の魅力や持続可能な地域づくりの条件を考えた。コーディネーターは、牧瀬稔・関東学院大学法学部地域創生学科教授が務めた。

 分科会では、「小さな自治」を、人口の少ない自治体(町村)が展開する自治と定義し県内4町から、卜部直也さん(真鶴町政策推進課まちづくり公社担当課長)、冨田陽子さん(山北町議会議員)、山梨崇仁さん(葉山町長)、渡辺優子さん(二宮町・一般社団法人あそびの庭代表理事)の4人が登壇し、それぞれの「小さな自治」によるまちづくりの実践を紹介した。

真鶴町のまちづくり

 このうち、真鶴町職員の卜部さんは学生時代に同町の「美の条例」に憧れて、2000年に入庁、移住し、同町のまちづくりに関わってきた。

 卜部(うらべ)さんは、入庁1年目に住民から「美しい景観を守って生活はよくなるのか?」という問いかけをされたことをきっかけに、「『美しい風景から生まれる豊かさ探し』がライフワークになっている」と自己紹介。町内での小さな自治の積み重ねによる様々なイベントや県内はじめてのサテライトオフィス誘致プロジェクトなど公民協働による取組みを紹介した。卜部さんは、「町内で多様なプロジェクトが立ち上がることによって芋づる式に人の関係性が生まれ、真鶴を媒介にして様々なパートナーシップができている。それぞれの分野で関係人口が創出されている」と話した。

 そして、「真鶴の様々な関係人口が生まれているが、いずれも立派な建物を造るといったハードではなくソフトで地域を変えていく事業ばかり。都市とは異なる風景があるからこそ、まちに来て仕事をして、移住して、商売をする、という流れが真鶴ではできあがっているのではないか」と実感を込めた。

葉山町内での公民連携事業

 また、葉山町の山梨町長は、町内での様々な公民連携事業について紹介。「町内会・自治会・子ども会などの地縁団体のほか、民間企業なとの協定などの連携が増加している」と述べた。また、2025年に町制施行100周年を迎えた同町では、100以上の記念事業が住民を巻き込んで実施されたという。山梨町長は「記念事業を通じて、町を知り、人を知り、繋がる機会の創出につながった」と実感を込めた。

 さらに、町内での土地開発における財産権・法律の壁を地域自治で乗り越えてきた事例についても紹介。この経験から「自らの地域を主体的に守り、創ることが小さな自治によって実践されてきた」と振り返った。

記者会見の様子③
真鶴町、山北町、葉山町、二宮町、それぞれの「小さな自治」の実践を語った。

三つの論点でディスカッション

 分科会の後半は、デスカッション。それぞれが、異なる立場ながら地域や自治を考える上で重要な役割を果たしてきた登壇者らが、①小さな自治の魅力とは何か。何が人を惹きつけるのか②小さな自治の連携をどうすればよいか③持続可能な小さな自治づくりはどうすればよいか、の三つの論点で語り合った。

 卜部さんは、行政職員の立場から「地域愛や住民の努力だけに頼るのではなく、『小さな自治』が成り立つ仕組みや環境の構築は、行政が向き合える仕事。対話と徹底した情報公開、課題共有することで多様な住民が関れる入口を作ることが重要だ」と展望した。山北町議の冨田さんは、「真鶴町の美の基準などのように、まちとしての軸を持つことが重要だと感じる。連携が必要な時代だからこそ、まちの“らしさ”をデザインすることが重要なのではないか」と会場に問いかけた。渡辺さんは「目先ではなく、ちょっと先、もっと先を見つめ、永く暮らしていけるまちを作っていきたい」と語った。その後会場参加者からの質問を受けてさらに議論を深掘りした。

 今回のプレフォーラムでは、第1分科会で横浜市の大きな都市デザインについて、第2分科会では小さな自治の実践という大小のまちづくりを見つめた。規模の違いはあれど、それぞれには共通点も多く、学びの多い時間となった。第40回記念横浜大会は8月21~22日に開催される(詳細は同学会HPを参照)。

(本誌/浦谷 收)

 

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