
ガバナンスTOPICS【イベントレポート】
【第16回 都市調査研究グランプリ(CR-1グランプリ)表彰式】地域課題解決に貢献する調査研究の優秀事例/イベントレポート
NEW地方自治
2026.05.19
目次
出典書籍:『月刊ガバナンス』2026年5月号
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月刊 ガバナンス 2026年5月号
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【ガバナンス・トピックス】
地域課題を踏まえ、次なる施策に繋がる調査研究を表彰
──第16回都市調査研究グランプリ(CR-1グランプリ)表彰式
(公財)日本都市センターは2月19日に第16回都市調査研究グランプリ(CR-1グランプリ)表彰式を都内で行った。全国の都市自治体や自治体職員による調査研究の優秀な事例を表彰した。
地域課題の解決に貢献する調査研究を評価
全国の都市自治体や職員が行った調査研究を募集し、優秀な事例を表彰する本グランプリは、2010年度から実施。今回で16回を数えました。

今回は21件(政策基礎部門10件、政策応用部門7件、実務部門4件)が応募。例年同様、(公財)日本都市センターによる第一次審査、そして第二次審査および最終審査は都市自治体の経営に関する学識経験者3人による審査委員会(横道清孝・政策研究大学院大学名誉教授・客員教授(座長)、和田一郎・獨協大学教授、片桐由希子・金沢工業大学准教授)によって行われた。最終的に、最優秀賞1件、優秀賞2件、奨励賞1件が入賞作品として決定した。
表彰に先立ち横道座長が全体講評を述べ、「いずれも地域の実情に即したものであり、課題解決に向けた具体的な施策につながるものも多くみられた。地域の実情に即した調査研究は、他の都市自治体にとっても意義深い知見と見識を明示しており、広く地域課題の探究・解決に貢献する役割も担いうるもの。今後も、それぞれの地域課題を踏まえた多様な調査研究が、新しい研究手法も積極的に取り入れつつ展開されることを期待したい」と全体講評した。

今回は4つの調査研究が受賞した(写真提供=(公財)日本都市センター研究室)。
現場に即した調査研究を表彰
最優秀賞「近代の熊本市における軍用地移転と戦後の渡鹿(とろく)緑地」
最優秀賞には、美濃口紀子さん(熊本市都市政策研究所)の「近代の熊本市における軍用地移転と戦後の渡鹿(とろく)緑地」(政策基礎部門)が選ばれた。
この研究は、熊本市にある戦後に国有財産となった旧軍用地(二大緑地(「熊本城緑地」「渡鹿緑地」))が、昭和20~30年代に戦災復興や災害復旧で果たした役割を公文書から明らかにし、今後の政策立案にも役立てることを目的としたもの。3年間に及ぶ調査研究の集大成で、軍都として発展した同市の旧軍用地や旧緑地の歴史的経緯を丁寧な調査と分析をし、都市計画にも影響を与えたことも明らかにした。
審査委員会は、「軍都・熊本の形成と戦後都市計画を『緑地』の変遷という視点で記載したことがユニークであり、同市の歴史的・地誌的変遷を分かりやすく表している」と講評。加えて、「市政史料の掘り起こし・体系化を通じて、戦後復興・災害復旧・都市緑地政策の基礎資料を提供しており、今後の都市計画や文化財行政に資する社会的価値があり、自治体シンクタンクの公共的意義として、本調査研究の価値は大きい」と評価した。
美濃口さんは、調査を通して「都市計画や将来像を考えるためには公文書(1次資料)から得られる根拠や、土地利用の歴史的経緯を認識することが重要だ」と述べ、「都市政策に資する調査研究を継続していきたい。得られた知見を市民の皆様と広く共有していきたい」と語った。

受賞者らは、研究内容を発表した。
優秀賞「西条市に効果的な空き家対策に向けた具体的施策の提言」
優秀賞には2件が選ばれた。西条市自治政策研究所の「西条市に効果的な空き家対策に向けた具体的施策の提言」(実務部門)は、文献や先進事例の調査、分析をもとに、同市の空き家対策についての「意識啓発における課題」「中古物件市場の活性化における課題」「老朽危険空家の除却における課題」の3つの課題を解決するために、住まいを取り巻くライフサイクルの各段階に応じた効果的な空き家対策について、民間企業との連携も含めた具体的な提言(12の提言)を行った。
現状の空き家等への取組みに加えて、取得(新築)から除却(取り壊し)に至る住まいを取り巻くライフサイクルの各段階に応じて「空き家を生まない・放置しない」ための提言を行っている点が特徴。
■西条市版空き家対策ハンドブックの作成
■オンラインでの空き家通報制度の構築
■おくやみ窓口での空き家に関する情報提供
■民泊施設等への改修のための補助金の創設
──など12の提言は、視察した先進自治体の実績から数値的な効果を算定し、客観的かつ具体的な政策効果を算出。提言内容の優先度と難易度を設定し、提言の実現可能性にも言及した。
審査委員会は、「空き家問題を住まいとしてのライフサイクル全体で捉え、発生予防から除却までを一貫して提言している点が実務的かつ独創的である」と講評し、優先度などをつけた点も「実装を意識している」と評価した。特定研究員の高橋蒼さんは「全国的に空き家の増加が深刻な社会問題だが、愛媛県内の空き家率は全国的に見ても高く、西条市においても2008年からの15年間で空き家数が約5000戸増加し、生活環境の悪化や防災面からもその対策は待ったなしの状況だ。提言が、市民の安全・安心な暮らしを守り、同様の課題を抱える全国の自治体にとっても解決の一助となれば」と語った。
優秀賞「宇都宮市中心市街地における良好な親水空間の形成に関する調査研究」
優秀賞もう一件は、橋爪孝介さん(宇都宮市市政研究センター)の「宇都宮市中心市街地における良好な親水空間の形成に関する調査研究」(政策応用部門)が選ばれた。
この研究は、隠れた「水の都」である宇都宮市の魅力向上を図る視点から、良好な景観づくりに資する水辺空間の形成を目的とし、同市での水辺空間・親水空間の形成可能性について検証したもの。研究では、文献調査とGIS分析、さらには実地踏査によって「親水空間」の形成に向けて政策を検討した。また、将来的に親水空間の維持に中心的な役割を果たすと考えられる大学生らの意見を政策提言に反映。同市の現状に適した「公民の連携体制」「主要河川に関する提案」「小水路に関する提案」の提言を行った。
審査委員会は、「大学生の意識・提案を活用した政策提言は、将来の担い手を巻き込む試みだ。文献・GIS・実地踏査を組み合わせた多角的手法により、理論から現場へと降りていく調査・研究の構成が高く評価できる」と講評した。
奨励賞「宇都宮市における出生率抑制の要因分析に関する調査研究~不妊治療費助成施策の効果と出生率シミュレーション~」
奨励賞には、岸裕希奈さん・小林 俊輔さん・稲村武さん(宇都宮市市政研究センター)・鎌田健司さん(宇都宮市EBPMアドバイザリー・ボード/明治大学政治経済学部准教授)らによる「宇都宮市における出生率抑制の要因分析に関する調査研究~不妊治療費助成施策の効果と出生率シミュレーション~」(政策基礎部門)が選ばれた。
同研究は、不妊治療制度の助成申請データや市民意識調査を踏まえ、少子化対策に係る金銭的給付策の効果と、少子化の進行につながる所得以外の要因を探ることを目的とした。同市不妊治療(生殖補助医療等)支援制度の助成申請データ等を活用し、施策の数値的効果を明らかにした点等が特徴だ。
講評では、「全国の出生構造を基準とした要因分析により、同市の不妊治療制度による出生率上昇への効果などが具体的な数値として示され、政策提言の対象が明確化されたことは評価できる」とされた。一方で、「プレコンセプションケアや社会包括的子育て支援という政策提言との関係性に弱いところ、規模や社会的状況などが類似した自治体との比較を行うことで、地域固有の課題や政策提言の方向性もより明確になる」と今後の研究に期待した。
表彰式では、賞状授与と各受賞者による研究内容の発表に続き、受賞者と横道座長も交えて、研究について意見交換が行われた。受賞を喜ぶとともに、新たな知見を共有する機会となった。
(本誌/浦谷 收)
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特集:議会基本条例の現在地
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