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ガバナンス編集部

【第11回ふじのくにニッポンの縁側フォーラム】地域共生の土台となる合理的配慮について意見交換/イベントレポート

地方自治

2026.05.20

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【ガバナンス・トピックス】
地域共生の土台となる、合理的配慮について意見交換
──第11回ふじのくにニッポンの縁側フォーラム

社会福祉の課題などについて議論する「ふじのくにニッポンの縁側フォーラム」が2月14日、静岡市で開催された。今年のテーマは「トラウマのケア・地域共生・合理的配慮 ~見えない傷(バリアー)を考える~」。当日は全国から福祉に関わる多くの人たちが集まり、支援対象者のみならず支援者の側にも焦点を当てながら意見を交わした。

関わる力を育てる

基調講演「強度行動障害の地域共生と合理的配慮」

 プログラムは、野澤和弘さん(植草学園大学副学長/内閣府差別解消法検討会座長)の基調講演「強度行動障害の地域共生と合理的配慮」からスタート。

 「強度行動障害の地域共生モデル」の構築をめざす研究班の代表も務める野澤さんは、強度行動障害支援者養成研修と現場の実際との乖離に言及。「調査研究から、約8割の施設・事業所が研修を受講しているとわかった一方で、研修で学んだはずのTEACCHプログラム、応用行動分析といった専門的な手法は、現場ではあまり行われていないことも判明した。むしろ、閉鎖空間の提供やマンツーマン支援など、環境整備・人員配置でしのいでいるのが実情」と指摘。こうした乖離を埋める方法として、問題行動の背景をトラウマという観点でとらえる「トラウマインフォームドケア(TIC)」や、支援者側が自身に内在する偏見やバイアスなどを見つめ直し支援の質を向上させていく「シナジープログラム」などが有効であると論じた。

 「これらの視点を取り入れることは、発症の予防や緩和、さらには支援者自身のエンパワーメントにもつながる。また、支援者側の“理性的に関わる力”の養成を地域にも展開すれば、まちに開放感や多様な価値観が生まれ、さらなるシナジーが期待できるだろう」と期待を寄せた。

発表の様子

講演「生きにくい家族を支援し続けて ~北の国の合理的配慮~」

 続いて、新内留美子さん(社会福祉法人麦の子会)が、「生きにくい家族を支援し続けて ~北の国の合理的配慮~」と題し講演。麦の子では、幼児部門、学童部門、成人部門、家庭・くらし部門、医療・地域支援連携部門──と多岐にわたる事業を展開し、利用者家族をも含む幅広い支援を続けている。

 もともと麦の子の利用者であったという新内さん。家族支援に話が及ぶと、「私は当初、麦の子を“娘の障害を軽くしてくれるところ”と考えていた。けれどある日、娘と映っているビデオを見て、自分がちぐはぐな関わり方をしていることに気づいた。変わらなければと思った」と経験を明かした。カウンセリングやトラウマワーク、職員やほかの利用者家族との交流を通じ「自分の本当の感情に気づくことができた。そうした中で、娘との関係もだんだんと良くなっていった」という。

児童精神科医の目線から──トラウマケアとシナジー

講演「トラウマインフォームドケアと合理的配慮」

 次に、八木淳子さん(岩手医科大学教授/児童精神科医)が、実症例をもとにした架空事例も交えながら、「トラウマインフォームドケアと合理的配慮」をテーマに講演を行った。

 「TICでは、行動を出発点ではなく結果ととらえる」と八木さん。一般に、目で見える「行動」は問題化されやすく、その行動をやめさせることに焦点が当たりやすい。一方TICでは、行動を起こさせる「感情」のほうに着目し、問題行動に対しては“困りごとの顕在化”といった考え方をするという。

 「トラウマケアの重層構造の中でも、TICは最も基盤にあるアプローチ。すべての人を対象に、すべての人が実践できる。

 例えば、風邪をひいた、発熱したと言ったら、『頑張って学校に行って』と返す人はいない。それは、風邪をひいたらどうなるか・どうするべきかをみんなが知っているから。この、『風邪』を『トラウマ』に置き換えたように理解していくのがTIC」。TICにまず必要なのは特別な技術ではなく、“相手を理解しようとする素朴な心”なのだと八木さんは強調する。

 また、そのほかの重要な視点として、家族や支援者の二次受傷にも言及。「私たちの支援が通じなかった。自分の技術がないからだ──と、支援者も傷つき、トラウマの影響を受けていく。こうした並行プロセス(*1)を理解しながら、関わるすべての人の安心安全を守る環境をつくっていくことが大切」と説明した。

*1 トラウマ支援の現場で、支援対象者と同じような反応が支援者や組織に表れること。

発表の様子

講演「シナジーの紹介──寄り添うために」

 続いて、シークレットゲストとして内山登紀夫さん(福島学院大学教授/児童精神科医)が登壇。「シナジーの紹介──寄り添うために」と題し、講演を行った。

 「シナジーは支援者に焦点を当てる。障害特性から出発しない。薬物療法が主体だった時代にこの考え方と出会い、目からうろこだった」と、内山さんは振り返る。

 シナジーを考えるうえでのポイントは、「ストレスは感情的反応を引き起こす」という、当たり前だが見逃されがちな視点だ。感情的反応は新たなストレスを生み、やがて悪循環に陥る。だからこそ支援者は、感情的反応を理性的反応へと切り替える必要があるという。

 ニューロダイバーシティ(*2)など発達特性に関わる概念も多く参照しながら、内山さんは「障害のある人とそうでない人のコミュニケーションの断絶は、単なる個人の能力や相性の問題ではない。社会の中に存在する、権力構造が反映されたものだ」と指摘。「たいていは、心のうちで無自覚に差別してしまったり、不平等をもたらしている。すべては私たち次第。もしも私たちが考え方を変え、行動を変えれば、必ず結果が得られる」と言葉を重ねた。

*2 神経多様性。脳や神経に由来するさまざまな特性の違いを多様性ととらえ、相互に尊重していこうとする考え方。

多様な立場から意見を交換

縁側対談「傷ついた子どもや障がい者と共に生きる ~支援者に求められる合理的配慮~」

 次に、「傷ついた子どもや障がい者と共に生きる ~支援者に求められる合理的配慮~」をテーマに縁側対談を実施。八木さん、御代田太一さん(東京大学 障害者のリアルに迫るゼミ主任講師)、坂間多加志さん(ふじ虹の会)、田村順子さん(株式会社MIYO取締役)、小長井雅代さん(縁側フォーラム副代表)が登壇し、司会は野澤さんが務めた。

 御代田さんは、自身が制作する冊子『潜福』を紹介。福祉の多様なフィールドに潜り込んだ若い世代がエッセイを寄せ合い、福祉の豊かさや価値を発信するものだ。

 「支援現場ではいろんなことが起こるが、例えばアセスメントシートを書く中でも、自分を主語にした言葉が出ることは少ない。そうした部分をちゃんと言葉にしていこう、という思いでつくった」と話す。

 障害福祉のケースワーカーを長く務め、私生活では養育里親にも登録しているという坂間さんは、自身の経験も交えながら合理的配慮について考察。「『調子が悪いなら来なければいい』と考えるのは差別的取り扱い。配慮して“やらせないようにする”のではなく、バリアを軽くして“できるようにする”のが合理的配慮だろう。弱みを開示するのはとても勇気がいることで、開示を受けたのに何もしないのは尊厳を踏みにじるのと同じ。法律の力は、マジョリティを強固にするものではなく、力の弱い人を補助するもの──そんな考えが当たり前の社会になれば」と語った。

 田村さんは現在、静岡市内で“女性特化型”の就労支援事業所やグループホーム、相談支援事業所を運営している。「10代の頃から福祉の世界に関わる中で、『男性が苦手』という女性に多く出会ってきた。そんな生きづらさを抱える女性のために、事業所を立ちあげた。現場目線で考えてみると、合理的配慮とは優しさでも特別扱いでもなく、人が公平に生きるための環境調整をしていくこと」と実感を込めた。

対談の様子
定番の縁側対談では、それぞれの経験をもとに意見が交わされた。

 最後に、川口正義さん(独立型社会福祉士事務所子どもと家族の相談室 寺子屋お~ぷん・どあ共同代表)の講演で会は終了した。多様な視点から福祉のあり方を考える場となった。

(本誌/森田愛望)

 

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