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【中山間地域フォーラム20周年・全国町村会 共催シンポジウム】中山間地域のこれからを考える/イベントレポート
NEW地方自治
2026.09.01
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【ガバナンス・トピックス】
中山間地域のこれからを考える
──中山間地域フォーラム設立20周年記念シンポジウム/全国町村会 都市・農山漁村共創社会創造シンポジウム
「中山間地域」を支援するNPO法人中山間地域フォーラム(会長=生源寺眞一・東京大学名誉教授)と全国町村会は共催で6月27日に都内でシンポジウムを開催した。各地の地域づくりに関わる実践者らが登壇し、多様な立場から中山間地域の現在地と将来像を議論した。
中山間地域フォーラム20周年
今回のシンポジウムは、中山間地域フォーラム20周年を記念して「中山間地域のこれまで・これから」をテーマに、昨年に引き続き全国町村会の都市・農山漁村共創社会創造シンポジウムと共催で開催されました。

冒頭、生源寺会長が挨拶。「昨年に続いて全国町村会と共催で開催できることはとても意味のあること。とりわけ町村の役場は、農業のみならずそれ以外の産業、環境保全あるいは修復、さらには教育や福祉といった多彩な領域の職員がひとつ屋根の下で活動しているという特徴がある。職員が異なる領域に取り組むことも珍しくない。これは中山間地域の持つ多彩な性格という点からも自然なことで、中山間地域フォーラムとしても歓迎すべきことだ。20年というひとつの歴史を共有する時間になれば」と会場に投げかけた。

中山間地域フォーラムと全国町村会の共催で開催。全国から多くの人が参加した。
中山間地域のこれまで
第1部は「つながる中山間地域」というテーマを設定。まず、野中和雄・中山間地域フォーラム特別顧問が「中山間地域のこれまで」と題して講演した。
野中さんは、“激動の20年の物語”と表現し、1999年の新農業基本法、2000年の中山間地域等直接支払制度の導入という画期的な制度ができたが、しかし、中山間地域の厳しい状況を考えると、この政策だけで支えるのは難しく、もっと地域に寄り添った支援、省庁だけでなく国民全体を応援団にしてやっていかないと、中山間地域はどうにもならない──という経緯で各界に呼びかけまして、2006年に同フォーラムを設立までの経緯を紹介。会は、地域と都市の人を繋ぐことで地域を応援をしていくということをコンセプトに、優良事例よりもむしろ、本当に困っている地域に親身に寄り添って活動していくことに重きを置いた。また、政府の動きに対しても意見や提言も行ってきた。
野中さんは「20年間の活動を通し、中山間地域のためにいろいろやっているなという認識はある程度持っていただけるようになったのではないか」と振り返った。一方で、人口減少社会において、中山間地域への国民の関心が低下、さらに地方自治体の農政に対する関心の低下に危機感を示した。
野中さんは、「全国の人たちと今後ともお互いに繋がり、中山間地域に寄り添って活動し、政府に対してはこれからも忌憚なく率直な意見を言って、大いに日本の将来の中山間地域の未来のために活動していきたい」と将来を見据えた。
中山間地域の現在地
西和賀町における中山間地域対策
続いて、2本のトークセッションが行われた。まず、「岩手県西和賀町における中山間地域対策」と題し、泉川道浩さん(岩手県西和賀町役場)、高橋秀さん(やまに農産㈱)が登壇し、図司直也・法政大学教授がコーディネーターを務めた。
岩手県西和賀町の取り組みと現状
西和賀町は岩手県の西端に位置し、県内で唯一の特別豪雪地帯。同フォーラムが発足当初から支援等で交流を深めてきた自治体のひとつ。様々な取組みを実践してきた。まず、泉川さんが地域と取組みについて紹介した。「中山間地域直接支払制度のおかげでたくさんあった耕作放棄地がきれいになっていった。成果があったと感じている」と振り返った。
また、同町大野集落の事例に触れ、「集落では、土地を守った。集落でできない人が出た時は、その土地を集落で経営した。集落の経営面積が増えてくると、任意組織では成り立たなくなり、機械等も持たなければならず、どうしても先行きが見えなくなってきた。そこに、『地域まるっと中間管理方式』という方式に出会い、一般社団法人(大野もっこりの郷)を作り、集落の農地を引き受けている」と説明した。
また、泉川さんは、「山が最初に“負の遺産”になり、次に田んぼが“負の遺産”になった。そして、今は家だ。まち全体でこれから起きていく課題だ。これらを解決していかないと未来の西和賀はないと感じている」と厳しい現状を紹介した。
中山間地域での農業の魅力
次に、同町で農業法人を経営する高橋さんが中山間地域での農業の魅力を語った。同町出身の高橋さんは5年前にUターン。両親が立ち上げた農業法人を引き継ぎ、代表をしている。
もともと子どもの頃から農業をやりたいと思っていたという高橋さんは、大学は農学部に進学、その後農業共済組合に就職したのち、家業を継いだ。前職時代から高橋さんは「農業を通じて自己実現をしたかった」と語った。
トークセッション
二人の発表に続いて、トークセッション行われた。人口が減少していく中で、地域(の農地)のバトンを受ける次の世代(30代)の高橋さんは、「農地の維持は、その地域住民がいないと難しい場面も出てくるだろう。法人でその管理を請け負うような方法もあると思うが、今後規模拡大していく中で、管理していく地域が、それが増えていくことを考えると、いくら社員がいても足りなくなってしまう。法人としては、営農を可能な限り継続し、例えば雇用を作り出して定住してもらう。定住してもらった地域で、農地の保全活動をしてもらうような方法が延命の措置のひとつなのではないか。それが次の代まで引き継げるのかは、20年後、30年後はわからないが頑張っていきたいと思っている」と未来を見据えた。
最後に泉川さんが、「シンポジウムに毎年参加し、事例発表をした人を何人も西和賀に呼んできた。そのおかげで、問題がひとつ、またひとつと解決してきた」とフォーラムでの繋がりの感謝を述べた。
田園回帰のこれから
もうひとつのトークセッションは、「田園回帰のこれから」と題し、山崎笙吾さん(長野県泰阜村役場)と同村とのつながりの深い図司教授が登壇し、西原是良・岐阜大学環境社会共生体研究センター准教授がコーディネーターを務めた。
セッションのタイトルの「田園回帰」は都市部に住んでいる人たちが農村に足繁く通う、あるいは移り住むことなどの動きのことで、同フォーラムでは2014年にこのテーマでシンポジウムを開催。田園回帰のこれからを考える上で、これまでの約10年を振り返ろうとこのセッションは企画された。
登壇した山崎さんは、山梨県出身。東京の大学を卒業後、日本農業新聞の記者を経て、2018年にIターン移住した。学生時代から全国各地の地域を訪ね歩いてきた山崎さんにとって、泰阜村もそのひとつだったという。妻と3人の子育てをしながら、役場では移住・定住、地方創生やDX等を担当、今年から林務、農業委員会等を担当している。
泰阜村の移住政策
人口約1400人の同村にはNPO法人グリーンウッド自然体験教育センターがあり、全国から山村留学や自然体験をしに多くの人が来ており、以前から若者の移住者が多いという。
自身も移住者であり、役場で移住担当もしてきた山崎さんは「移住政策はシャカリキになって人を集めるというスタンスではなく、地域に合った人をどう見極めるかという点に重きがある」とし、「大切なことは数値の目標を置かないこと。行政として目標を設定すると、達成するために無理をする悪循環が生まれてしまうからだ。できるだけ移住希望者の希望を聞いて何度も見学に来てもらって、悪い面をできるだけ知ってもらう。それでもいいという人だけを支援している」という。どうしても合わない人は近隣の市町村に紹介し、「地域全体と移住者が増えればいいという考え方だ」と移住者に対する態度を紹介した。
田園回帰世代と生業
山崎さんは、「今年から農林業に携わり始めて、改めて中山間地域の生業は非常に厳しいということ今更ながら感じている。農林業のプレイヤーの不足や耕作放棄地、鳥獣被害が深刻化してきたりしている。今年度からは村内で狩猟も始めた。私のような田園回帰世代は、ただ村に住むだけではなく、こういった生業にもしっかりと関わっていくことが重要になってくるのでは」と自身の経験も交えながらの報告をした。
トークセッション
山崎さんの報告を受けて図司教授は、「田園回帰の動きが単なるブームではなく、定着してきていることがこの10年を振り返って感じた。ただ移住するのではなく、その地域でどう生きていくか、生業や地域との関わりがより深く問われるようになってきている」と分析した。コーディネートした西原准教授は、「移住がブームとなった初期の頃は『憧れ』だったり、『田舎暮らし』という側面にフォーカスが当たっていたように思う。それからだんだんと具体的にどう生きていくか、どう仕事をしていくか──といった、どういうふうに地域と関わっていくかが重視されるようになってきた。行政側も、ただ人を集めればいいというわけではなく、本当にその地域に合った人、地域で一緒に生きていける人というの、マッチングしていくということが重要になってきているのではないか」とまとめセッションを締めた。
「賢く縮む」の先進地から
第2部では、「中山間地域から『賢く縮む』を考える~岡山からの問題提起~」と題して行われた。
冒頭、小田切徳美・明治大学教授が趣旨を説明。「第1部のキーワードが『つながる』だとしたら、第2部は『縮む』だ。「スマートシュリンク」をめぐっては、岡山県美咲町の名前を聞かない日はないくらい様々なところに登場している。今日は美咲町を解剖してみたい」と話し、スタート。
人口減少時代の自治体経営
まず、嶋田暁文・九州大学大学院教授が「人口減少時代の自治体経営」をテーマに講演を行った。
嶋田教授は、人口減少時代の自治体運営を考える上での最初に対峙しなければならない壁として
①限られた数の職員で増大する業務の遂行
②税収減で財政運営の厳しさ
の二つを挙げた。
その上で
①行政需要の抑制
②代替的政策手段の模索
③自治体間連携・補完
④民間力の活用
⑤AI等の活用や業務の見直し~組織運営の見直しと余力の創出
⑥人材の確保と育成
⑦「具体的に考える」ことを大事に
──の7つがこれからの自治体運営に求められると述べた。
「賢く縮む」から「賢く挑戦する」へ
嶋田教授の講演に続き、全国町村会が作成したインタビュー映像「岡山県美咲町の挑戦」が上映された。その後、青野高陽町長が登壇し、「『賢く縮む』から『賢く挑戦する』へ」と題して、講演した。
青野町長は、就任してから「賢く縮む」ことで同町が全国的に注目されるようになった今日までの経緯を振り返った。「公共施設の賢く収縮がクローズアップされがちだが、岡山県内初めての小中一貫の義務教育学校の開校や公共施設機能の集約、ソフト面では小規模多機能自治が同時並行で進んできた。当初は『あきらめて白旗を挙げるのか』『役場の仕事を押し付けるのか』などと反対も多かったが、住民、役場や社協の職員、町外からの応援団などの存在おかげでがんばってこられた」と述べた。
そして、「人口減少や高齢化は誰のせいでもない。人口は減少してもウェルビーイングは縮ませない。そのためには縮むことを恐れない。縮むことに前向きになって、どう縮んでいくのか、住民の皆さんと一生懸命考えている」とし、「今年策定された第4次美咲町総合振興計画で『賢く挑戦するまち』を掲げた。縮むばかりのイメージではなく、“挑戦しない町に未来はない”と思い、身の丈にあった挑戦をしていきたい」と未来を見据えた。また、全国から視察が相次いでいることで、「全国からたくさんの人が美咲町を見に来ている。住民のみなさんのやっていることは間違ってないと言われているようでとても励みになる」と述べた。
美咲町の取り組みを支える土台
青野町長の講演に続き、岡山県内や中国地方の過疎地域を支援しているNPO法人みんなの集落研究所主席研究員の阿部典子さんが補足コメントをした。同研究所は2015年から美咲町に関わり、小規模多機能自治の取組み(主に地域運営組織の基盤づくり)の伴走支援をしている。
阿部さんは、「同町には青野町長が就任する以前から社会福祉協議会が小地域ケア会議を実施し、福祉と地域づくりや体制があった」と紹介。小規模多機能自治を推進する上で「社協のみなさんが強力な助っ人だった」と、取り組みが進む素地が地域にあったことを明らかにした。そして「地域それぞれで、住民の皆さんが考えながら自分たちの進めやすい方法で取り組んでいる。この姿勢が美咲町の小規模多機能自治を支えてくる土台になっているのではないか」と分析した。
賢く縮むの本質とは
「賢く縮む」を考える
その後、「『賢く縮む』を考える」と題しパネルディスカッションが行われた。青野町長、阿部さん、嶋田教授らが壇上に揃い、小田切教授がコーディネートした。ディスカッションでは、賢く縮むの本質と条件について議論された。
「賢く縮む」の課題と本質
嶋田教授は、まず、このキーワードが孕んでいる問題について述べた。
「人口が減少してもそこに住む一人ひとりの生活の質を維持・向上させ、住民が暮らし続けられるよう、『未来を選び直す』ための取組みという意味であれば賛成だ。しかし、この言葉には撤退・周辺部の切り捨てを『合理的で賢い政策』として美化する言葉になる可能性がある」と指摘。「賢く縮む(スマートシュリンク)」は、自治体全体にとっての効率性」向上のために特に「周辺部」の人々に不利益を甘受させがちで、通俗的な「コンパクトシティ論」に回収されやすく、結果として「周辺部に住み続ける人は自己責任」、「不便な場所に住むならサービス低下は受入れてください」といった言説につながりかねない、と警鐘を鳴らした。
そして、「縮小は誰にとって『賢い』のかを常に問うべきだ」とし、「縮小(シュリンク)はあくまで手段のはずだ。縮小する中で、何をどこまで守るのかを地域でしっかり考えるべきだ。そのためには、『権利保障』と『住民参加』が重要だ」と述べた。
その上で、美咲町の実践から学ぶことは「縮小を大きく進めたことそれ自体ではない」とし、
①住民による主体的な取組みのきっかけとしての「縮小」
②小規模多機能自治は「しなければならない(must)」の原理ではなく、「したい(will)」「できる(can)」の原理で多様な担い手を巻き込むことに成功し、「ごちゃまぜ」を実現している
③ハード×ソフトによって「にぎやかな過疎」を生み出している
④「自治の重層化(多層な自治レイヤーの相互作用)が効果的に機能している
⑤地域のことを「自分事」として捉えて活動する住民
⑥都合の悪いことも含めて情報を共有し、住民達と本気で向き合ってきた町長と職員たちの真摯な姿勢
──が学ぶべきことだと述べた。
そして、「『賢く縮む」』の本質というのは、単なる縮小の技術ではなくて、住民との協働のプロセスであり、地域の新たな価値を創造していくための、まさに挑戦のプロセスであると、そのように捉えるべきではないか」とまとめた。
住民を置き去りにしない姿勢
青野町長は「行政の論理だけで一律に切り捨ててしまわないように、地域ごとに違う事情や思いをできるだけ汲み取りながら、それぞれの地域に合った縮み方、あるいは新しい拠点の作り方を模索してきたつもりだ。まだまだ課題はたくさんあり、完璧ではないが、『住民の皆さんを置き去りにしない』ということだけは、肝に銘じてやってきた」と「賢く縮む」ための姿勢を語った。
住民の主体性を育む
阿部さんは、「住民たちに『自分たちで未来を作っていくんだ』という当事者意識が芽生えた時に、初めてその地域は「賢く縮む」第一歩を踏み出せるのだと思う。行政から言われて渋々縮むのではなくて、自分たちの意志で、自分たちの地域のサイズや形を選び直す。その主体性を育むことが、本質的な部分だろう」と伴走支援の立場からコメントした。
議論を総括
最後に小田切教授が議論を総括。
■美咲町のコンパクト化は多面的に行われており、本質は住民自治充実志向型と言える。報道や一部の論説はその一面性しか捉えていないのではないか
■美咲町には「見えない自治の仕組み」がある。自治の仕組みの重層性や好循環が地域課題共有会議(庁内横断会議)にはあった。そこでは固有名詞で語られている
■中間支援組織の役割や機能を考えることが重要だ。行政の中に中間支援機能を持つ人がいる。中間支援組織は作るものではなく、探すもの、発掘すべきもの
■美咲町の縮小政策は徐々に完成度を高めていった。完成形ではない。いわば「未完のスマートシュリンク」だ。
■ここから数十年かけ完成形に近づける時間がかかる。表面的な横展開は避けるべきだ。美咲町からWHYやHOWを学び、具体的に考えることが重要だ
──とまとめた。

「賢く縮む」まちづくりについて深い議論が交わされた。
*
当日は台風接近にも関わらず全国から多くの参加者が会場に集った。また美咲町からは住民らがパブリックビューイングで議論を見つめた。表面的でない地域の本質について考える有意義が時間となった。
(本誌/浦谷 收)
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特集1:〝豊かな〟人口減少社会を描くには
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