
議会局「軍師」論のススメ
議会BCPに根拠条例は不要なのか?|議会局「軍師」論のススメ 第117回
NEW地方自治
2026.07.23
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出典書籍:『月刊ガバナンス』2025年12月号
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本記事は、『月刊ガバナンス』2025年12月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
議会BCP(業務継続計画)については、本誌2024年10月号でも論じたが、最近の同テーマに関する議員研修の中で新たに浮き彫りになってきた課題もあるため、今号ではその論点を中心に、あらためて議会BCPについて考えてみたい。
■計画運用のための根本的課題
最近は議会BCP策定中ではあるが、その必要性の認識について議員間で温度差があるため、意識共有の目的で研修依頼されるとともに、策定中の原案についての意見も併せて求められることが増えた。
前者の状況での代表的な課題は、避難所へ議員が行くことの是非がある。一般的には執行部の災害対応を阻害することが論点となるが、さらに前段階では議員が避難所に行くこと自体を、選挙目当てのパフォーマンスと捉えて問題視する議会もある。だが、そこに機関としての議会が市民のためにどのように行動すべきかとの視点はなく、議員間の都合が優先された価値判断による本末転倒が生じている。
後者については、それぞれの自治体で被災経験がある事象に関しては、必要以上に詳細に場合分けされて対応策が示されている一方、それ以外の事象についての対応に関しては表層的で、まだまだ未完と思われる原案に遭遇することもある。
だが、最も根本的な課題と感じるのは、議会BCPそのものではなく、その運用を支える根拠条例の整備がほとんどされていないことだ。執行部ではむしろ根拠法令、条例に基づいて各種計画を策定するほうが一般的である。もちろん議会基本条例に理念を書き込んでいる例はあるが、自治体の防災関連条例に、議会の非常時対応を明示した根拠条例を整備した議会はまれではないだろうか。
■根拠条例整備の必要性
大津市議会では地方議会初の「議会BCP」を2013年度に策定し、その根拠条例に位置付けることを目的の一つとした「大津市災害等対策基本条例」を翌年度に制定することを、当初から計画していた。
条例制定の意義は、議会は災害時には無力で何もできないとの市民の誤解を解き、議会の責務と役割を明記することによって、従前は市民、事業者、執行機関による三者協働の災害対応理念から、市民、事業者、議会を含む自治体の三者協働による形に進化させることを、公式な形で市民に示すところにある。
それは、二元的代表制は平時に限るとの意思が憲法に示されていない以上、議決機関として常に機能発揮するための最大限の努力が、議会には求められると考えるからだ。
一方、実務上の意義は、議会BCPの理念を実践し運用していくには一定の予算確保が必要になるからでもある。具体的には、議員と局職員が非常参集した際に必要となる3日分の水、食料の確保を担保するサバイバルローラーバッグを全員配布しており、その更新費用や議会内でも確保しておく必要がある非常用品の購入、毎年の実施を義務付けている議会内防災訓練費用などに一定の予算を必要とし、それができなければ議会BCPなど絵に描いた餅になるからだ。
いずれにしても、災害が多発する昨今において、議会BCPの策定が必要であるとの認識は全国の自治体議会に一定根付いたと感じるが、その根拠条例整備の必要性はほとんど認識されておらず、その重要性をあらためて強調しておきたい。
第118回 なぜ議会では長期実行計画が一般的ではないのか? は2026年8月20日(木)公開予定です。
著者プロフィール
早稲田大学デモクラシー創造研究所招聘研究員
議会事務局研究会 共同代表
元大津市議会局長
清水 克士 しみず・かつし
1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長、局長などを歴任し、2023年3月に定年退職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。
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