議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

地方選挙は国政選挙の前座に過ぎないのか?|議会局「軍師」論のススメ 第113回

NEW地方自治

2026.03.19

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本記事は、『月刊ガバナンス』2025年8月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 この論稿が世に出るころには参議院議員選挙(以下「参院選」)も終わっているはずだが、今号では参院選の前哨戦と報じられていた東京都議会議員選挙(以下「都議選」)で思うところがあり、地方議会や住民自治のあり方について、あらためて考えてみたい。

■地方選挙が政党選択選挙なのか

 都議選に関する報道で違和感を覚えたのは、「各党が参院選の前哨戦と位置づける都議選」という前振りを、各社申し合わせたように同じくしていたことだ。前哨戦とは「主力の本格的な戦闘に先だっての前哨の部隊間での小戦闘」とされる。

 もちろん、大規模な自治体議会では、国政同様、実質的には政党政治化していることは承知しているが、それが首都の議会であっても法的には国政とは何の関係もない地方議会の一つに過ぎない。それにもかかわらず、小規模な国政議会のように類型化され、都議選が参院選の前座とも受け取れる表現は妥当なのだろうか?

 開票速報でも、まるで国政選挙の結果を報じるように、政党別の獲得議席数を中心に報道されていた。

 だが法定要件を満たす政党は、現職国会議員が5人以上在籍、または直近の衆議院議員選挙、直近、その前の参議院議員選挙のいずれかでの得票率が2%以上、のどちらかを満たすことが公職選挙法などで必要とされるが、いずれも国政に関する要件であり、地方政治における規定はない。特定地域や自治体を中心に活動する地域政党についても、地域に根ざした政治団体に過ぎず、政党要件を満たす政党ではない。

 当然、都議選の選挙制度も比例代表制ではなく、有権者は候補者個人に投票している。それなのに地方選挙においても、有権者は候補者の主張など無関係に、所属政党だけを判断材料に投票先を決めているかのような報道は、個々の候補者に対しても失礼ではないだろうか。

■住民自治との矛盾

 もちろんマスコミも法的な枠組みなど、百も承知の上での報道であろう。だが、日本国憲法に定める「地方自治の本旨」の一つとされる「住民自治」の観点からは、地方にも政党政治を持ち込むことは矛盾を孕むのではないか。住民自治とは「地域のことは地域の住民が決めること」であり、政党政治が地方に持ち込まれることは、住民の代表である自治体議員の意思だけではなく、住民ではない中央の政党幹部の意思も地域に持ち込まれることを意味するからだ(逆説的には都議選は、党幹部の多くも都民だから問題ないとの論も成り立ちうるが)。

 地方自治に関する法律に政党に関する規定がない背景には、政党政治と住民自治は親和性に欠けるとの判断が、立法者意思にあるように思えるのである。そう考えると、地方選挙を国政選挙の前哨戦などと位置づけること自体が、中央集権への回帰を想起させ、住民自治を軽視する方向に誘導するものと言えなくもない。国家権力そのものではなくとも、中央の意思に地方を従わせるという意味では、政党政治も本質的には中央集権的であり、地方分権や住民自治とは馴染まない一面があるからだ。

 見方によっては、地方議会の存在を軽んじているような報道が、あたりまえのようになされていることに、今なお地方分権や住民自治が根づかない現実を突きつけられているようで、残念でならないのである。

 

第114回 「専決処分」を安易に考えすぎではないか? は2026年4月16日(木)公開予定です。

 

著者プロフィール

早稲田大学デモクラシー創造研究所招聘研究員
議会事務局研究会 共同代表
元大津市議会局長
清水 克士 しみず・かつし


1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長、局長などを歴任し、2023年3月に定年退職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。


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清水 克士

大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員

しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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