議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

「専決処分」を安易に考えすぎではないか?|議会局「軍師」論のススメ 第114回

NEW地方自治

2026.04.16

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本記事は、『月刊ガバナンス』2025年9月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 議会改革関連の研修で話すとき、依頼テーマは異なっていても、どの議会もが抱える本質的な課題は同じだと感じることがある。それは、「専決処分」に対する意識である。今号では専決処分について、あらためて考えてみたい。

■改革の本旨との矛盾

 専決処分とは、本来、議会が議決、決定すべきことを首長が議会に代わって決定することである。地方自治法179条では緊急の事件(以下「緊急専決」)、180条では議会があらかじめ委任した軽易な事項(以下「委任専決」)が対象とされる。多くの場合179条の「特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らか」であると認められるかが問題となる。

  「通年議会」「議会BCP」「オンライン議会」などの改革手法の本質的な部分は、いずれも緊急専決を回避するところに主眼があるといえるだろう。「通年議会」は会期を通年(1年)とし議会の判断で本会議等を開催できるようにすることによって、「議会BCP」は非常時における議会活動維持の道筋を明確化することによって、「オンライン議会」は、将来的には議場に参集せずとも本会議も含めて完結することを目指すことによって、いずれも本会議、委員会等を機動的に開催可能とするための手段といえるからである。

 執行機関と議事機関が独立、対等の関係にある二元的代表制の視点から議会の立場を考えれば、議会の存在意義を問われかねない専決処分を避けようとするのが当然の姿勢である。ところが通年議会を導入したにもかかわらず、年度末の税条例改正のための臨時会開催を避けるために、会期を通年とせず緊急専決の対象としたり、税条例改正を軽易な事項とみなして、委任専決している例もあるようだ。だが、議案提出が予想される時期を意図的に会期からはずすのは、通年議会導入の理念とは相反するものであり、また歳入に関わる議案を軽易な事項とみなすのは無理があるだろう。

 オンライン議会についても、コロナ禍で議会へ参集できない状況でも議会活動を継続するために深化してきたものである。現行法上、本会議はオンライン開催できないとされるが、そもそも委員会でさえ、オンライン開催するために例規改正済みの議会は全体の21.4%、実践済みの議会は全体の7.2%に過ぎず、必要性の理解が高まっているとはとてもいえないだろう(注)

注 総務省「地方議会における委員会のオンライン出席の状況」(2024年1月1日時点)

 そのような実態からは、専決処分が議会の存在意義をスポイルするものだとの意識が、議会全体に乏しいと思わざるを得ないのである。

■国際常識との乖離

 一方、グローバル視点からの「専決処分」は、わが国特有の制度に思える。専決処分は、議会の議決権を直接代替する制度だが、欧米では緊急措置として執行権を一時的に拡張するに過ぎず、本質的な部分での制度設計に関する思想の違いを感じるのである。自治体の最終意思決定は議会が行うものである以上、執行機関にその権限を代行させることなど、災害等の真の緊急事態以外にはあり得ないと考えているからではないだろうか。

 ところがわが国では客観的に議会を開けないとは思えない状況で、議会自ら専決処分を望んでいるかのような事例があまりにも多い。二元的代表制の根本原理から俯瞰して、議会運営全般を再考することが必要ではないだろうか。

 

第115回 憲法上の要請と有権者の期待を軽視して良いのか? は2026年5月14日(木)公開予定です。

 

著者プロフィール

早稲田大学デモクラシー創造研究所招聘研究員
議会事務局研究会 共同代表
元大津市議会局長
清水 克士 しみず・かつし


1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長、局長などを歴任し、2023年3月に定年退職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。


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清水 克士

清水 克士

大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員

しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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