議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会で最初に感じる違和感は何か?|議会局「軍師」論のススメ 第109回

NEW地方自治

2025.11.13

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本記事は、『月刊ガバナンス』2025年4月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 ありがたいことに、この連載も今月から10年目に入る。これほど続くとは筆者自身も思っていなかったが、ひとえに皆様のおかげである。

 さて今号では、2月に立命館大学大阪梅田キャンパスで開催された「議会事務局研究会設立15周年記念シンポジウム」(駒林良則・立命館大学特任教授主宰)でお話ししたことの一部を、さらに掘り下げることによって、新任の議会(事務)局職員の皆さんへのエールとしたい。

■「伝統」と「格式」の代償

 議会(事務)局(以下「議会局」)へ赴任して忘れてほしくないことの一つに、執行部からの異動直後に覚える違和感がある。それは、ほとんどの議会で、執行部よりも時代掛かっているように思えることが多々残されていることだ。もちろん執行部の価値基準が全て先進的で正しいなどとは思わないが、情報公開度、立法趣旨の視点を含む広義の法令遵守度など、現在の社会通念と異なるところも多いことが、その違和感の根源である。

 原因の一つは議事だけに限らない広義の「先例主義」にあると筆者は感じている。先例に拠ることは、不測の事態を防止し、円滑な事務執行に資する一面もあり、そのこと自体が全否定されるものではない。だが、時代の変遷とともに劇的にハードルが上がっている社会規範や、社会通念が激変していることも珍しくないため、過去に先人が最適解と判断したものが、現在でも最適だとは言い難いことがますます増えていると感じる。

 したがって、その都度、妥当性を検証しなければ、時代に相応しくない判断となる可能性は高い。そして前例踏襲のツケによって「古いものを見たければ博物館か議会へ行け」(注)と揶揄され、市民感覚とのズレを増幅してきた一面も否定できないのではないだろうか。

注 登壇者・盛泰子氏の発言中、議員研修時に聞いたフレーズとして引用されたもの(野村稔氏、片山善博氏など複数人が発信されている)

 職員視点からも、執行部では前例踏襲でしか仕事を進められないことはマイナスイメージとなるが、議会局では「伝統」と「格式」を守るという大義名分のもとで、先例どおりにしか仕事をしないことが、むしろプラスイメージとさえなる。同一自治体内で、真逆の評価となる現状に驚きを禁じ得ないのである。

■局職員は「デキる職員」たれ!

 全国でよく聞く話としては、執行部では主体的に仕事をこなしていた優秀な人材が、議会局へ来た途端に「指示待ち職員」に変貌してしまうという嘆きがある。

 それは、誰のために仕事をするのか、という大命題とも密接に関わる。局職員研修で受講者に質問しても、執行部では市民のために仕事をしてきたが、議会局では議員のために仕事をしているという局職員が多い。議会局では市民との距離が遠くなり、近視眼的に議員の動向にのみ目が向きがちになる。そのため、執行部では市民福祉増進のために主体的にボトムアップする「デキる職員」が、議会では自ら能力を封印し、議員からのオーダーがなければ動かない「デキない職員」になってしまうということのようである。

 だが、法的にも執行部職員よりも萎縮的な執務態度を正当化する根拠などはなく、自治体職員は常に法的根拠を意識して行動することが求められる。したがって、議会局職員は常に立法趣旨を意識して議会活動を俯瞰し、「先例主義」に染まって思考停止することなく、主体的に議会、議員に発意することが求められるのではないだろうか。

 

第110回 なぜ「議会局」であるべきなのか? は2025年〇月〇日(〇)公開予定です。

 

著者プロフィール

早稲田大学デモクラシー創造研究所招聘研究員
議会事務局研究会 共同代表
元大津市議会局長
清水 克士 しみず・かつし


1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長、局長などを歴任し、2023年3月に定年退職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。


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清水 克士

大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員

しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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