
議会局「軍師」論のススメ
百条調査権の可能性と限界はどこまでか?|議会局「軍師」論のススメ 第116回
NEW地方自治
2026.06.18
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出典書籍:『月刊ガバナンス』2025年11月号
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本記事は、『月刊ガバナンス』2025年11月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
9月中旬、筆者も共同代表を務める「議会事務局研究会」(駒林良則・立命館大学特任教授主宰)で、百条調査権が議論のテーマとなった。最近、何かと報道される百条委員会は、全国の自治体議会で年間20件前後が設置されるが、先行研究も少なく議論の余地は大きい。
■百条調査に相応しい事案とは
議論の前提となる報告は、元東京都立川市議会事務局の小林直岐会員から「百条調査権の可能性と限界の再検討」と題してされた。主旨は百条調査権の活用分野を拡大しようとする具体的な提案と、違法ではないが内在的制約から調査権を行使すべきでない限界があるのではないかとの指摘であった。
特に後者の視点からは、「政争目的の調査権行使は、権限の逸脱または濫用の疑いが強いのではないか」とし、具体例としては静岡県伊東市議会での百条委員会がそれに該当するのではないかとの指摘があった。調査の焦点は実質的には市長の学歴の真偽であるが、議会として強力な権限を背景とした百条調査権を行使しなければ明らかにできない内容とまではいえず、主眼は市長に対する政争目的ではないかと思えるからである。
■首長が百条委を調査できるのか
次に議論となったのは、福岡県大刀洗町議会での百条委員会である。同委員会は、職員の旅費不正支出と「大刀洗町マルシェかてて」の設置根拠や経理処理についての調査を主眼としたものである。だが、本件での特異な展開は、町長が「経理処理の妥当性と百条委員会による職員への人権侵害の有無を含む委員会運営を検証する第三者委員会」の設置を表明したことである。
これについては、「百条委の運営自体を調査する第三者委員会は、私も聞いたことがない。かなり問題があると思う」(注1)との新聞報道があったこともあり、なぜ問題なのかに研究会での議論は集中した。
注1 毎日新聞2025年9月7日(神奈川大学・幸田雅治教授の見解)
大局的には、元来、議会は行政に対する監視権限を法定付与された機関であるが、首長が議会に対して監視・調査する法的根拠はなく、このような第三者委員会は二元的代表制を基礎とする我が国の地方自治制度の根幹に反するのではないかとの疑念が生じる。複数の住民代表による合議制機関だからこそ、議会には多様な視点での監視が法的に期待されているのではないかと考えると、独任制の執行機関が合議制の議事機関の運営を監視しようとするのは立法趣旨に反しないだろうか。仮に法理上許されるとしても、少なくとも首長による監視権限も個別に法定されていることが、大前提になるのではないか。
手続論的には、町長は第三者委員会に業務委託する形をとっているが、実態上は地方自治法(以下「法」)138条の4第3項に定める長の附属機関といえ、同委員会が条例設置でないことに疑念がある。
「附属機関とは、(中略)執行機関の行政執行のため、又は行政執行に伴い必要な調停、審査、諮問、又は調査を行うことを職務とする機関」(注2)とされ、まだ最高裁判決はないものの近時の裁判例では「法138条の4第3項及び法202条の3第1項に定められる職務を行う組織は全て附属機関条例主義の適用対象」(注3)と解されているからだ。
注2 佐藤文俊『逐条 地方自治法』454頁(学陽書房)
注3 あいちトリエンナーレのあり方検証委員会の附属機関性(名古屋高裁・令和5年12月20日判決から抜粋)
研究会での後半の議論は、論点が百条委員会そのものの議論ではなかったが、興味深い事例であり今後の展開も注視していきたい。
第117回 議会BCPに根拠条例は不要なのか? は2026年7月23日(木)公開予定です。
著者プロフィール
早稲田大学デモクラシー創造研究所招聘研究員
議会事務局研究会 共同代表
元大津市議会局長
清水 克士 しみず・かつし
1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長、局長などを歴任し、2023年3月に定年退職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。
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