どう稼ぐ?どう使う?これからの地方財政戦略

松下 啓一

指定地域共同活動団体制度とは?導入が進まない理由・導入すべき自治体を解説|どう稼ぐ?どう使う?これからの地方財政戦略

NEW地方自治

2026.04.28

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指定地域共同活動団体制度―地域が公共を担う新しい仕組み①

松下啓一


 令和6年の地方自治法改正により指定地域共同活動団体制度が創設された。

 しかし、現時点での市町村での導入は極めて少なく、検討も十分に進んでいない。

 いくつかの理由があるが、1つには、指定地域共同活動団体の導入によって、どのような課題が解決され、地方自治の推進にどんなメリットがあるのか具体的にイメージしにくいことがある。

 もう1つは、制度運用に伴うリスクへの対案や実践的な工夫が乏しいことである。現状の議論は問題点の指摘や批判にとどまっている。

 本稿では、①制度の概要と相性がよい自治体、②先行事例の紹介、③条例試案、④制度活用に向けてのヒント・工夫の4回にわたって、本制度の全体像を紹介したい。

1 制度の概要

制度理念と市町村の役割

 指定地域共同活動団体制度は、地域に根ざした団体が行政と連携し、地域課題の解決や生活環境の維持・向上に取り組むことを通じて、住民福祉の増進を地域レベルで効果的かつ持続的に実現することを目的とする制度である(地方自治法第260条の49)。

 この制度においては、市町村は基礎的な地方公共団体として、その事務を処理するに当たり、地域の多様な主体の自主性を尊重しつつ、これらの主体と連携・協力して、住民福祉の増進を効率的かつ効果的に図るよう努めることが求められる。行政主導型行政から協働型行政への転換である。

指定地域共同活動団体として指定

 この理念のもと、市町村長は、住民が安心して暮らし続けることができる地域社会を維持・形成するため、生活環境の確保や地域課題の解決に取り組む団体のうち、一定の要件を満たす団体を「指定地域共同活動団体」として指定することができる。

 指定を受けた団体は、地域における公共的活動の担い手として位置づけられ、市町村はその活動に対して支援を行うとともに、関連する活動を行う他団体との連携や調整を図る役割を担うことになる。

活動を支援するための特例措置

 この指定地域共同活動団体の活動を支援するための特例措置が設けられている。

 市町村が関連する事務を随意契約によって委託することや行政財産を貸し付けることが可能とされており、団体が地域活動を継続的に行うための環境整備が図られている。さらに、団体間の連携が円滑に進むよう、市町村に対して調整を求める仕組みも設けられた。

運営の適正を図る仕組み

 指定地域共同活動団体は公的支援を受ける立場にあるから、その運営の適正を確保するための仕組みも用意されている。

 市町村長は、団体の活動状況や支援の状況を公表するとともに、必要に応じて報告を求めることができる。また、運営に問題がある場合には改善のための措置命令を行うことができ、改善が見られない場合には指定の取消しを行うことも可能である。

2 制度化の背景

「ハード整備」から「地域経営」への転換

 現行の地方自治法(昭和22年制定)は、戦後復興期のハード整備(道路・住宅等)を主眼に設計されている。これらの課題は「行政が決定し、行政が実施する」ことで解決可能であった。

 しかし、現代の課題である「まちづくり」や「コミュニティの維持」は、行政単独では解決できず、住民・地域の主体的な関与が不可欠である。約500条にも及ぶ地方自治法には、こうした規定はほとんどなく、法律と時代変化との間に深刻な齟齬をきたしている。

社会構造の変化と「私的問題」の公共化

 かつての大家族制や3世代同居のもとでは、福祉や介護は「家庭内」(私的世界)で完結できていた。しかし、単身高齢世帯の急増等により、孤立死、徘徊、買い物難民といった問題が生まれ、今日では地域全体の「公共課題」へと変化している。

 こうした課題は、もともと私的自治の世界の話であり、行政が苦手とする分野である。地域住民自らが当事者となって再構築しなければ住民の暮らしや地域が維持できない状況が生まれており、これを法的に支える新たな枠組みが求められている。

地域運営組織の意義と課題

 こうした状況のなかで、推進されてきたのが地域運営組織(RMO)の支援である。地域運営組織とは、地域に暮らす人々が中心となって形成され、地域の暮らしを守るために課題解決の取り組みを継続的に実践する組織であり、地域課題を共有して解決策を協議する機能と、それを実行する機能を併せ持つ。活動内容は、地域交流、防災、健康づくり、生活支援、地域資源の活用など多岐にわたっている。

 総務省の調査によれば、地域運営組織は令和6年度時点で全国に8193団体が確認されており、平成28年度と比べて約2.7倍に増加している。地域運営組織が形成されている市区町村は893に達している。

 その一方で、地域運営組織はさまざまな課題を抱えている。運営上の課題だけでも、「活動の担い手となる人材の不足」(79.2%)が最も多く、「団体の役員・スタッフの高齢化」(62.1%)、次のリーダーとなる人材の不足(61.8%)といった課題を抱えている。

ギャップ埋める仕組み・指定地域共同活動団体

 こうした地方自治法の欠缺や既存組織の課題や限界、新たに生まれてきた課題に対応する仕組みが、指定地域共同活動団体である。この制度の特徴は、地域と行政が協働して公共課題に取り組む点にある。とりわけ近年では、行政の強い関与がなければ維持できない地域コミュニティが増加し、それを支える仕組みとして、この制度は創設された。


3 指定地域共同活動団体制度の取り組み状況調査

 指定地域共同活動団体の制度化の取り組み状況について、自治総研が調査を行っている。調査方法は、自治体議会の会議録に基づいて、このテーマが取り上げられているかの分析を行った(第38回自治総研セミナー資料)。


(1)調査結果から

 この調査では、東京都内の自治体と小規模多機能自治推進ネットワーク会員自治体(町村は除く)が取り上げられている。

東京都内自治体の動向

 その動向は次のとおりである。

 【導入不要・否定的】八王子市や三鷹市。独自の地域づくり枠組みが既にあるため、法による固定的な枠組みの導入にメリットを見出していない。
 【今後検討】多摩市。審議会や住民参画の手続き等があるので慎重に検討していく。
 【情報収集】清瀬市、東久留米市など。国や他団体の動向に注視し情報収集につとめる。
 【確認できず】その他大半の自治体では、議会における質疑を確認できなかった。

小規模多機能自治推進ネットワーク会員自治体(164市)の動向

 小規模多機能自治推進に先進的に取り組む自治体群であっても、議論は低調である。

 【導入の予定なし】神奈川県平塚市、兵庫県三田市など(5市)
 【今後検討を進めたい】新潟県村上市、兵庫県真庭市など(5市)
 【国や他自治体を注視】神奈川県茅ケ崎市、三重県伊賀市など(12市)
 【質疑確認できず】議会レベルでの質疑が確認されず(142市)

(2)調査結果の評価

全体の動向

 この調査は議会における質疑等を切り口にしているので、行政内部の関心とは必ずしも一致しない。ただ、全体の雰囲気は伝わってくる。

 全体としては、指定地域共同活動団体制度について、具体的な導入を検討している自治体は限定的で、質疑があった自治体の多くは「情報収集、動向注視」であった。そして何よりも「質疑そのものが確認されない」自治体が圧倒的に多い。

「質疑がない」意味

 質疑が確認されない自治体が多いが、主たる原因は、この制度の認知度不足だろう。実際、制定時の国会論議では、大規模災害時等の国の指示権等に関心が集まり、この制度は、ほとんど議論にならなかった。

 また、多くの自治体では自治会や地域協議会など既存の地域組織が存在していることから、新制度の必要性が直ちに問題として顕在化していないことも考えられる。

様子見の自治体

 次に多いのは、制度自体は認識されているが、導入判断に慎重な姿勢の自治体である。いくつかの理由が考えられる。

①既存組織との二重構造化
 新たな制度を導入すると自治会・町内会、地域協議会、まちづくり協議会などの既存組織との二重構造や制度の硬直化を招くのではないかという懸念である。

②事務負担に見合うメリットがあるか
 制度導入には条例制定や指定基準の整備、団体の位置付けの整理など一定の事務負担が伴うため、その行政コストに見合う効果を慎重に見極めようとする姿勢が見られる。

③先行モデルの不存在
 制度自体が比較的新しく、先行事例や成功モデルが十分に蓄積されていないことも躊躇要因だろう。

④財政支援への不透明感
 制度導入が国からの交付金や補助金の加算措置などに直結するかどうかが、導入動機に大きく影響している。

4 この制度と相性がよい自治体


コミュニティ弱体化の段階モデル

 地域コミュニティは、住民主体性の程度に着目すると、おおむね3つの段階に整理することができる(コミュニティ弱体化の段階モデル)。

 フェーズ① 自律的コミュニティ(機能充実段階)……住民相互の協力体制が確立しており、自治会や地域団体が主体となって地域運営が自律的に行われている状態である。行政は主として補助的役割にとどまる。

 フェーズ② 揺らぎのあるコミュニティ(行政補強段階)……少子高齢化や担い手不足等により地域活動の持続性が低下しつつあるものの、行政の支援や制度的枠組みによって活動が維持されている状態である。この段階にに位置する地域が最も多いと考えられる。

 フェーズ③ 消失したコミュニティ(行政依存段階)……住民主体の活動がほぼ消失し、地域生活の維持が行政サービスに大きく依存している状態である。

図 コミュニティ弱体化の段階モデルと制度介入の位置
コミュニティ弱体化の段階モデルと制度介入の位置


コミュニティ弱体化の段階モデルと指定地域共同活動団体

 指定地域共同活動団体制度は、フェーズ②に該当する地域を主な対象領域とする。すなわち、住民主体の活動が完全に失われる前の段階において制度的支援を行うことで、コミュニティ機能の弱体化を防ぎ、地域運営の主体性を維持・回復させることを目的とする法的枠組みとなる。

5 指定地域共同活動団体制度の今後の展開


危機意識・地域コミュニティは大丈夫なのか

 地域コミュニティは「緩やかな衰退」が続き、このままでは、多くの地域で機能不全に陥ってしまうというのが私の問題意識である。多くの自治体で、本制度に関する質疑が行われていない事実は、この地域の危機が見過ごされてしまっているのではないかと懸念している。

 また、現時点では、既存組織があるから大丈夫という自治体も、今後も持続できると本当に自信を持っていえるのだろうか。


フェーズ転落の「防波堤」機能

 コミュニティ機能は、フェーズ①から②、②から③へと弱体化の方向に進んでいる。この制度によって、指定団体に対する一部委託や公共施設の管理権限の付与、行政の調整責務など、より一層踏み込んだ関与は、フェーズ転落の「防波堤」機能であるが、私も危機は迫っていると感じている。

 むろん地域コミュニティの「自律性の回復」手法は、1つではないので、この制度以外でも、実効性ある防波堤機能を果たせる仕組みを示せればそれでもよい。大いに知恵を絞ってほしい。


新たな財政支援・起爆剤になる可能性

 多くの自治体は、「国からの交付金等の支援メリットが見込めないのであれば、急いで取り組む必要はない」という極めて現実的な判断を行っている。

 まさにここがポイントで、指定地域共同活動団体になれば、手厚い交付税措置があるとなれば、フェーズ②(揺らぎ始めている自治体)を中心に、本制度の導入が一気に進むものと思われる。

 令和8年度の地方財政計画で、どのような運用がされるか注目したい。

 

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