東西南北デジデジ日記 vol.32 今週の担当:【南】今村寛

地方自治

2022.05.26

東西南北のそれぞれで奮闘する現役自治体職員と元自治体職員4名によるリレー日記。タイトルに冠しているとおり、テーマはデジタルなれど、小難しいこと抜きに、多彩な切り口で「自治体×デジタル」を考えてみよう、な日記です。さて、今村さんからはハワイのリアルをお届け。たんなるハワイの風吹く日記にとどまらず…!?(※本連載は毎週木曜日更新です)

―――――2022年5月26日 Thu.―――――――

 

海外旅行に行ってきました

私事ですが、このたび約3年ぶりの海外旅行でハワイに出かけてまいりました。

毎年1週間の休暇を取り、仕事はもちろん、年老いた家族の介護や日常の雑事から自らを解き放ち、夫婦水入らずで過ごすデトックスの日々。
もう10年くらい前から続けていた我が家のよきルーティンもこの2年間は企画することすら叶わず悶々とした日々を送っていましたが、諸条件が整いやっとこの機会を得ることができました。

仕事は周囲の協力のおかげでなんとか穴をあけずに済みましたが、この連載は穴をあける寸前で尻に火がついています(笑)。

 

常夏の島で見たものは

ハワイは日本人観光客が多く訪れ、言葉や治安の心配が要らず、観光客へのホスピタリティやサービスが充実していて、何の気がねもなく安心して過ごせる第二の故郷のような場所ですが、コロナ禍の災厄はこの世界屈指の観光地にも大きな影を落とし、前回訪れた3年前の2019年には想像もできなかった光景を見ることになりました。

観光客の激減による有名店、なじみの店の廃業、閉店はすさまじく、目抜き通りや大型商業施設には空き店舗が目立ちました。
また、継続している店でも営業時間やサービスの縮小、値上げなど私たち観光客にとっては悲しい現実を突きつけられました。

しかし、殿様商売だった人気店に閑古鳥が鳴く一方で相変わらず元気な店もありました。
横並び、画一的な大量消費の好きな日本、韓国、中国の旅行客が減り、欧米からの渡航が先行して解禁されたこともあって、欧米人の好む、個性と品質を重んじ顧客を大事にする店の再開が目立ち、ハワイの地元産品や地元のアーチストが手掛けたファッション、グッズを扱う店が増えていたことも印象的でした。

コロナ禍は、オーバーツーリズムが生んだ値段とサービスが釣り合わない殿様商売を淘汰し、まちを浄化する役割を果たしたのかもしれません。

 

話を本流に戻しましょう

私たち4人がこの交換日記で主たるテーマとして触れることを求められている「自治体DX」という言葉や概念は、コロナ禍以前の2019年にすでに生まれていたのでしょうか。
少なくとも私にはその記憶はありません。

2か月前、私はこの日記の中で「タイムマシンが欲しい」と書きました。

――少子高齢化や人口減少などの社会環境の変化、あるいはICT技術の進歩普及によるサービスの革新など、自治体の未来を左右するさまざまな環境変化の前提条件を知り、私たちを取り巻く未来の環境変化に合わせて自治体の未来を創造していけばよい。
未来を構成する諸条件のそれぞれについて一定の予測を立てることができる専門家は数多くいて、その未来予測はかなりの確度なのだからそれらを集めて重ね合わせ、未来の姿として眺めることは可能。

だから「みんなで未来を見に行こう」と結論付けたのですが、我々はこのコロナ禍という未曽有の災厄が世界にもたらした変化を予測できたのでしょうか。

 

コロナ禍がもたらした変化とは

自治体DXという言葉がもてはやされることさえ予測できず、「行政の電子化」「高度情報化」などという昭和の時代から使い古された仕事をしてきた私たちが未来を創造し、その未来に相応しい自治体サービスをデザインし、実現していくことなどできるのでしょうか。

その答えもまた、ハワイの今の姿から読み取ることができます。

私が見たハワイの変化は、あらかじめ予測していたことへの計画的な対応ということではなく、予測できない社会環境の急激な変化に合わせ、柔軟に自らの姿を変容させ、適応していったということに尽きます。

そして、その社会環境変化への適応の肝となるのが、顧客の声に耳を傾けそのニーズを的確にとらえるコミュニケーションだと私は思うのです。

 

数年先が予測できなくてもいい

ハワイの例を引くまでもなく、コロナ禍がもたらした社会の変化はいたるところにありますが、そのほとんどは予測不能な未来へのしなやかな対応です。

あらかじめ自分が売れると予測した商品を大量に仕入れて店先に並べ、客が店の前を通るのを待つという商売が通じない時代に、未曽有の災厄で劇的に変化した客層やニーズに応じて自らを変革していくには、数年先の未来の創造ではなく、今日、今現在よりも少しでも現実に適応した明日の自分を創ること。

そのために今そこにある顧客の声を聴き、顧客とのコミュニケーションのなかで少しずつ、確実に、変わっていくことが必要です。

時代の変化に臨機応変に対応する即応性、柔軟性は腰の重い私たち行政の苦手とするところですし、その意思決定を左右する顧客(住民)とのコミュニケーションもまた苦手なところですが、未来が予測不能であることを自覚し、柔軟性を持ってスモールスタート、トライ&エラーにより少しずつ確実に変化していくことで、数年先には想像もしていなかった未来にたどり着くことができます。

その際、常に顧客(住民)の求めるものを日ごろの緊密な意思疎通で確認しながら、しなやかにその姿を変容できていれば、数年先には必ず顧客ニーズに即した未来の自治体が実現されているはずだと思います。

それではまた来週。デジデジ!

 

★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885

★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/

★そのほか、自治体財政の話、対話の話など、日々の雑感をブログに書き留めています。
https://note.com/yumifumi69/

 

~次回の日記は6月2日(木)に更新します!~

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千葉大右・多田 功・山形巧哉・今村 寛

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