月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2022年3月号 特集:大災害に備える

地方自治

2022.02.25

●特集:大災害に備える

今年も3月を迎える。東日本大震災から11年。原発事故被災地のみならず、多くの地域や人々の暮らしは復興途上にあり、課題も少なくない。一方、東日本大震災後も熊本地震や広域での豪雨災害などが頻発。震度5を超える地震も全国各地で毎年のように発生し、想定される南海トラフ地震や首都直下地震を含め、いつまた大災害が起きてもおかしくないように感じられる。今月は東日本大震災をはじめこれまでの経験を活かしながら、次の大災害にどう備えていくかを考えたい。

■大震災からの学びをどう生かすか/室﨑益輝

月日が経つのは早いもので、阪神・淡路大震災から27年が経過し、東日本大震災から11年が経過しようとしている。その時間の経過の中で、社会の状況が大きく変わり、震災の教訓も減災の課題も変化してきている。とりわけ、次の大震災の発生が切迫している今、学ぶ段階から生かす段階へということで、教訓の再整理をはかりつつ、その実現に向けて大きく歩を進めなければならない。

室﨑益輝 兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科長・教授

災害と防災に関わる教訓には、いかなる時代にもあてはまる普遍的なものがある。その教訓を現代の状況に照らして進化させ、伝えることや生かすことが求められる。阪神・淡路大震災や東日本大震災で改めて確認された、「最悪想定」「事前防備」「減災管理」「自律連携」「人間復興」は、とくに大切だと思っている。

■国難災害に備える/河田惠昭

国難災害研究は、筆者らが中心になって約20年以上にわたって進めてきた。そして、今や、いつ国難災害が発生してもおかしくなく、対策を甲論乙駁するような時間的余裕がなくなっている。2016年熊本地震では、警察、消防、自衛隊の初動対応すら失敗している。だから、国難災害が起こり、国家緊急事態になった時、シビリアン・コントロールもできないと考えなければならない。そこで、本稿ではいま早急に解決しなければならない諸問題を提示し、政府・自治体がそれらを率先して実行しなければならないことを示そう。

■災害対応力を高めるために──災害対応の標準化をどう進めるか/林 春男

国難級災害に対する災害対応は社会のあらゆるセクターが参画する総力戦とならざるをえない。国、都道府県、市町村が連携して災害対応においてその力を十分発揮し、災害を乗り越えることが求められる。その第一歩として、災害対応の世界標準に即した災害対応の実現を通して、どのような災害でも被災者とのインターフェイスとなる市町村が中心となる「6+1」の7業務を標準化することの重要性を紹介する。

■大規模災害の教訓をどう活かすか──災害エスノグラフィー調査から/重川希志依

災害エスノグラフィー調査で得られた成果は、防災対策に対して万能な力を持つわけではなく、また過去の経験が常に正しい答えを示しているわけでもない。しかしエスノグラフィーには人のモチベーションを上げ、我が事として防災に取り組むことを可能とする力がある。「前向きに最大限の努力を払って災害を乗り越えてきた人たち」の災害対応プロセスを知ることで、より大きな力を発揮することが可能となる。

■首都直下地震で何が起きる?どう備える?/中林一樹

M7級の首都直下地震とは、「都心南部直下地震」のことではない。都心南部直下地震は、同じM7の直下地震でも、建物や人口、経済活動などが最も高密度に展開している東京都区部を直撃するので被害規模が最大となり、また国家中枢である首都機能に最も影響を及ぼす地震である。首都圏のどこかの直下で発生する首都直下地震は、どこで起きるのかは神のみぞ知るであり、その確率が30年以内に70%ほどなのである。首都圏の全ての自治体にとって、その直下でM7級の地震が起きる確率は同等であり、備えの基本は被害軽減だ。

■大災害における自治体間連携を進めるために/岩田孝仁

これまでの大災害を経験し、自治体間連携による支援の枠組みが少しずつ充実してきたが、最大のネックは被災自治体がいざ災害時にこうした支援をスムーズに受け入れる準備の不足である。いつ、なんどき災害が発生しても対応できるよう、自組織の対応レベルの向上とともに、スムーズに他組織からの支援が受けられるよう、準備を怠らないことが肝要である。

■災害時にも誰一人取り残さない地域社会を目指して
 ──福祉とコミュニティと自治体の連携による防災体制/鍵屋 一

自治体に求められているのは計画やマニュアルといった紙づくりではない。「災害は弱い者いじめ」という社会に訣別し、「災害時にも誰一人取り残さない」という安心で安全な地域共生社会づくりである。高齢者や障がい者等の災害時の安全確保への取組みが、平時の地域社会で支え合える関係を作る機会にもなるはずだ。

■危機・災害に強い社会システムをどう築くか
 ──わかりやすいプロジェクト(国会事故調編)の活動から/石橋 哲

災害は、自然現象が人の構成する社会と交錯するところに発生する。災害は社会現象である。災害につながる様々な現象を、どのような社会で受け止めるのか、被害の拡大と縮減の分岐点はここにある。

【キャリアサポート面】

●キャリサポ特集
 デジタル・ディバイドの対処法

デジタル化が急速に進む一方、自治体はデジタル・ディバイド(情報格差)対策も併せて進めなくてはいけません。当然ながら、高齢者をはじめICT機器を誰もが使いこなせるとは限らないためです。自治体DXを進めつつ、効果的なデジタル・ディバイド対策をいかに打っていけばよいのでしょうか。目指すは、誰一人取り残さないデジタル化。具体的な事例とともに、考えてみたいと思います。

■誰一人取り残さないデジタル・ディバイド/牧 壮

デジタル・ディバイドになる人というと、すぐ事例に挙げられるのが高齢者達である。高齢化社会とデジタル化社会が同時に急速に進もうとしており、このトレンドは、これからますます進むことが予想されている。この両立をどう図るかは今までに人類が体験したことのない、非常に大きな問題である。

〈取材リポート〉
◆時短で働くテレワーカーが自治体DXの推進を支援/長野県塩尻市

長野県塩尻市は2021年5月、「塩尻市デジタル・トランスフォーメーション(DX)戦略」を策定した。「誰からも喜ばれるスマート田園都市 しおじり」を理念に掲げ、行政DXと地域DXの両軸で自治体DXを目指そうとするもの。デジタル人材の育成などデジタル・ディバイド対策も盛り込まれている。その一環として、民間企業との連携による職員のデジタル人材育成にも乗り出している。また戦略の推進にあたっては、時短就労者を対象とする自営型テレワーク推進事業「KADO」(カドー)が重要な役割を果たしつつある。

◆高齢者にスマートフォンを無料で貸与し、生活の質を高める
 ──高齢者デジタルデバイド解消事業/東京都渋谷区

ICT利活用を推進している東京都渋谷区は、デジタル・ディバイド対策として「高齢者デジタルデバイド解消事業」を推進している。高齢者にスマートフォンを2年間無料で貸し出し、講習会等を開催して操作方法の習得や利活用を支援する取り組みだ。ウィズコロナ時代の「新しい生活様式」の中、デジタル機器の利用促進で高齢者の生活の質の向上をめざしている。

●連載

■管理職って面白い! ショットガン/定野 司
■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
 行政組織における効果と効率の関係性/後藤好邦
■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇
■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/柴崎記代子
■自治体DXとガバナンス/稲継裕昭
■働き方改革その先へ!人財を育てる“働きがい”改革/高嶋直人
■未来志向で考える自治体職員のキャリアデザイン/堤 直規
■そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室/関根健夫
■宇宙的公務員 円城寺の「先憂後楽」でいこう!/円城寺雄介
■次世代職員から見た自治の世界/菅 花穗
■“三方よし”の職場づくり/元吉由紀子
■誰もが「自分らしく生きる」ことができる街へ/阿部のり子
■新型コロナウイルス感染症と政策法務/澤 俊晴
■地方分権改革と自治体実務──政策法務型思考のススメ/分権型政策法務研究会

●巻頭グラビア

自治・地域のミライ
小林信保・山梨県大月市長
二拠点居住、グリーンワーケーションで人口減に歯止めを

2019年6月に行われた市長選で「賑わいと財政の健全化」などを掲げて初当選した山梨県大月市の小林信保市長。財政健全化に目途をつけ、地の利を活かした二拠点居住、グリーンワーケーションに積極的に取り組み、人口減に歯止めをかけようと奮闘している。

小林信保・山梨県大月市長(56)。旧教員住宅を改修したサテライトオフィスの前にて。大月市では自然の中で仕事を行い、余暇も楽しむ「グリーンワーケーション」を推進。「いろんな団体や企業にこのオフィスを活用してもらいたい」と話す。

●連載

□童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝
 隆景家から頼家への転生(八) 芋代官仕末記

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
 「桜の森」が再び始動する【11年目の課題・除染4】
 原発事故、続く模索

全長2.2㎞の桜並木が美しい福島県富岡町の「夜の森」地区。原発事故で一度は「帰れない土地」とされた。だが、特定復興再生拠点区域に指定され、来春の避難指示解除に向けた除染などが行われている。大正時代、木炭を運び出すために駅が開業し、ここを中心に閑静な住宅街として発展した街。除染に伴い家々は解体されてしまったが、桜をシンボルにして再起を目指す。

□現場発!自治体の「政策開発」
 データ活用・分析力を高め実効性のある政策をめざす
 ──ふじみ野市EBPM研究会(埼玉県ふじみ野市)

埼玉県ふじみ野市は、市の政策形成における政策効果の調査研究とエビデンス(証拠)に基づく政策立案へ向け、中堅職員による「ふじみ野市EBPM研究会」を設置。市の重要な政策の一つである「子育て政策」をテーマに第1期2年間の研究活動を進めて政策提案を行い、事業に結びつけた。その成果を踏まえ、若手職員による第2期研究会で研究活動を進めている。EBPM手法の定着と拡充、職員の育成がねらいだ。

□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
 コロナ禍でも「議会活動は止めない」
 ──オンラインによる議会改革をテーマにしたフォーラム、研修会

新型コロナの第6波が全国に拡大していた1月下旬。オンラインによる議会改革をテーマにしたフォーラム、研修会が相次いで開催された。共通していたのは、コロナ禍にあってもオンラインを駆使するなどして「議会活動を止めない」という強い意思だった。

●Governance Focus

□大規模水害に見舞われた時、首都圏低地帯はどうする(下)
 浸水しても被害少ない街を目指す 実行急ぐべき対策も/河野博子

強固な堤防、調整池を築けばよい。いや、広域避難の準備を進め、公的な受け入れ先確保が先だ--。ハード対策、ソフト対策のどちらが先かではなく、その両方ともに進める第三の方向性が見えてきた。50年、100年かかる街づくりを見据えつつ、もっと短期にできることも多々ある。行政の縦割りや関係機関の多さという難しさを越え、実行が急がれる。

●Governance Topics

□都市東京の100年を振り返り、未来を展望
 /(公財)後藤・安田記念東京都市研究所創立100周年記念シンポジウム

東京をはじめとする都市と自治の調査研究等を行っている(公財)後藤・安田記念東京都市研究所は1月28日、都内でシンポジウム「都市東京の100年」を開催した。1922(大正11)年に東京市政調査会として発足した同研究所の創立100周年を記念するもので、それにふさわしく東京の一世紀にわたる都市づくりを振り返り、未来の姿を展望した。

□「結果を出す自治体の経営」とは?
 /(公財)日本生産性本部が日米国際カンファレンスを開催

(公財)日本生産性本部は2月4日、「結果を出す自治体の経営~コロナ危機と米国のベスト・プラクティス~」をテーマにオンラインで日米国際カンファレンスを開催した。国際カンファレンスでは、卓越した組織として「マルコム・ボルドリッジ国家品質賞」(MB賞)を受賞している米国自治体の関係者がそのマネジメント手法を報告。新型コロナ禍という〝厄介な問題.をいかに解決していくかなどを議論した。

□ひきこもり、発達障害、女性、若者などの生きづらさを理解し、寄り添う
 /第7回ふじのくにニッポンの縁側フォーラム

社会福祉の現場にかかわる人などが集まり、語り合う「ふじのくにニッポンの縁側フォーラム」が1月15日に開催された。昨年に引き続き今年も現地とオンラインによるハイブリッド方式。7回目となる今回のタイトルは「ひとはひとをたよるんだよ.こもりながら語る、障害や貧困」。ひきこもりや発達障害の人、女性、若者などの生きづらさを考え、社会はどうあるべきかを語り合った。

●連載

□ザ・キーノート/清水真人
□新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之
□市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照
□地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚
□“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘
□自治体の防災マネジメント/鍵屋 一
□市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹
□公務職場の人・間・模・様/金子雅臣
□今からはじめる!自治体マーケティング/岩永洋平
□生きづらさの中で/玉木達也
□議会局「軍師」論のススメ/清水克士
□「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭
□From the Cinema その映画から世界が見える
 『香川1区』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
 [著者に訊く!/『憲法政治――「護憲か改憲か」を超えて』清水真人]

●カラーグラビア

□技・匠/大西暢夫
 物を大切にする心がこの仕事にはある
 ──簀編み職人・小畑文子さん(鳥取市鹿野町)
□わがまちの魅どころ・魅せどころ
 荘厳な自然の中に息づく漁村の風景/岩手県田野畑村
□山・海・暮・人/芥川 仁
 「瀬戸内海の小漁師」に見る漁師の魅力──香川県三豊市詫間町箱室浜
□生業が育む情景~先人の知恵が息づく農業遺産
 時代を超えて受け継がれてきた豪快な伝統漁
 ──造船材を産出した飫肥林業と結びつく「日南かつお一本釣り漁業」(宮崎県日南市)
□人と地域をつなぐ─ご当地愛キャラ/よコジロー(高知県越知町)
□クローズ・アップ/「足」のために「足」を作る──3セク「山形鉄道」が高校生デザインのスニーカーを
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[特別企画]

◇DXによって自治体改革をどう進めるか?③
 「デジタル市役所」を推進し、介護認定審査業務を効率化
 ──福島県郡山市

※「もっと自治力を!~広がる自主研修・ネットワーク」は休みます。

 

 

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株式会社ぎょうせい

「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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