月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2022年2月号 特集:「対等・協力」──国・自治体関係の現状と展望

地方自治

2022.01.28

●特集:「対等・協力」──国・自治体関係の現状と展望

2000年4月施行の地方分権一括法は、国・自治体の関係を「上下・主従」から「対等・協力」に変えるとされた。それから間もなく22年。三位一体改革で一部の税財源が地方に移譲されたもののそれを上回る地方交付税等の削減で、その後、税財源充実を求める地方の声は小さくなった。そして度重なる大災害と新型コロナ禍は、地方の国依存傾向を強めているという指摘も出ている。「対等・協力」はもはや風前の灯火なのか。国・自治体関係の現状を探り、将来展望を描きたい。

■コロナへの対応から見えてくる国と自治体の課題/片山善博

この2年間の新型コロナウイルスへの国と自治体の対応からは、いくつもの問題点や課題が見えてきた。国の側では政府組織のあり方だったり、政治家や官僚の資質に関わることだったりする。もとより自治体の側にも点検や見直しを必要とすることは少なくない。それは国と自治体の関係のあり方だったり、自治体の法制執務の力量だったりする。本稿ではこれらの中から特に重要だと思われる問題点や課題を取り上げてみたい。

片山善博 早稲田大学大学院政治学研究科教授

この2年間の新型コロナウイルスへの国と自治体の対応からは、いくつもの問題点や課題が見えてきた。国の側では政府組織のあり方だったり、政治家や官僚の資質に関わることだったりする。自治体の側では国と自治体の関係のあり方だったり、法制執務の力量だったりする。

■メディアから見たコロナ禍の国・自治体関係/谷 隆徳

新型コロナウイルスを巡る対応は国と自治体の間に様々なあつれきを生んだ。浮き彫りになったのは、国と地方は「対等」とは言い難い現実だ。この2年余りの間、メディアは両者の関係についてどう報じてきたのか。各紙の主張を時間軸に沿って紹介すると同時に、国・地方関係の課題について考えたい。

■新型コロナ対策禍と忖度自治体の行方/金井利之

2000年の「第1次分権改革」は、国と自治体の「対等・協力」関係に基づく「分権型社会」を目指すものであった。それから四半世紀を経過して、分権型社会は実現したのかと言われれば、必ずしもそうとは言えない。むしろ、実態としては、官邸主導・一強体制を前提として、多くの自治体は、国の意向を忖度する。このような「集権型国制」の構造のもとに、新型コロナウイルス感染症が襲ってきた。それゆえ、自治体は忖度・寵愛を競争する。本論では、特にワクチン接種を素材に、この状況を素描してみよう。

■国と地方の「対等・協力」と立法分権/礒崎初仁

国と地方を「上下・主従」から「対等・協力」関係に改めるという目標は、第1次分権改革(2000年施行)を導き、機関委任事務制度の廃止をはじめとする大きな成果につながった。それから22年、「対等・協力」の理想が形骸化しているのは、分権改革が国と地方の行政権のあり方に注目し、立法権の拡充を軽視してきたためではないか。自治の本質は制度をつくる立法権にあるのではないか。本稿では、新型コロナウイルス対策を含めて「対等・協力」がいまなお実現できていない原因を探り、今後は自治体の立法権を拡充する「立法分権」に取り組むことを提案する。

■分権改革の究極目的は政策力の確保と向上/宮脇 淳

2020年年初に新型コロナウイルスが国内で本格的に感染拡大(以下、「コロナ感染拡大」)して以来、ワクチン接種や感染者・濃厚接触者への対応等様々な局面で国と地方、そして地方自治体間の政策力の違いを国民は目にする結果となっている。こうした見える化は、改めて基礎自治体の政策力の重要性、「政策は現場に宿る」という政策の原点を強く認識させている。投網とも呼ばれる縦横の財源・権限の糸で編み込まれた中央集権的構図を解きほぐしていくことが地方分権改革である。そこで目的とされる国と地方の「対等・協力関係」の究極目的は何か。それは地方自治体の積極的自由を支える政策力の確保と向上にある。

■通知行政の弊害と政策法務/山口道昭

自治体には、国からさまざまな通知が送られてくる。自治体の対応には、通知を発する府省において適切な仕分けがされているはずだという前提がある。しかし、スピード感を過度に重視する官邸サイドの意向に府省は振り回され、じっくり検討することなく、通知が発せられているようである。このような状況において、自治体自らが積極的に政策を立案し、それを適法に整序し執行するという正攻法の「政策法務」は、成立しにくい。成立のために、国の「政策法無」の是正を要求することになる。

■地方税財源確保・拡充の道/稲沢克祐

この22年間の地方分権改革における幾多の成果を踏まえて、今後の地方税財源確保・拡充の道を二つ提示する。第1に、安定性が高く偏在性が小さい地方税源である地方消費税源をより拡充するするために、地方法人二税と消費税との税源交換をすること、第2に、地方財政計画策定において、歳出総額と個人住民税の標準税率を引き上げることである。こうした議論のために必要な体制づくりとして、まず地方の総意を結集すること、その上で、現行の「国と地方の協議の場」の他に財政問題のみを国と協議し意思決定に参画する「場」を設けること、加えて、「財政の独立監視機関」を国と協力して設置することが求められよう。

■「対等」と「協力」関係の将来展望
 ──求められる「国と地方の協議の場」の機能化/嶋田暁文

『対等』と『協力』関係の将来展望」を拓くには、「国と地方の協議の場」の機能化が不可欠である。そのためには、たとえ困難であったとしても、「Win-Win関係の構築の場」としての協議の場の再フレーミング、分科会の設置、地方六団体間、各地方六団体内部での意見集約など克服方途を追求することこそが地方側に求められる。

【キャリアサポート面】

●キャリサポ特集
 公共インフラの点検術

道路の陥没、水道橋の崩落など、公共インフラの事故が相次いでいます。もちろん、この問題は今に始まったことではありません。以前から叫ばれ、自治体も対応を進めていますが、それでもなお、公共インフラの維持管理をめぐる課題は山積みの状況と言えます。自治体はどう対処していけばよいのでしょうか。デジタル化の動向も視野に、その点検術について考えてみたいと思います。

■インフラ維持管理の要点と効果的な点検方法/植野芳彦

公共インフラの維持管理を巡っては、これまでの“造る時代”と違った時代に突入している。では、今後どう対処していかなければならないのか。自治体は管理者として市民の安全・安心を限られた資源「ヒト・モノ・カネ」で対応しなければならず、批判も数多く受けることになる。そして、これまでとは違った「責任」と「覚悟」が必要になってくる。それに耐えられる人材で、新たなイノベーションを起こしていくしかない。

〈取材リポート〉
◆3次元点群データを蓄積しインフラ維持管理等に活用/静岡県

静岡県では2016年度から、工事が終了した公共施設の様子を高精度の3次元点群データで保存する取り組みが始まっている。完成した時点がメンテナンスのスタートであり、そのタイミングでの詳細なデータがあれば、変状があったときにどう直せばいいかが一目瞭然だ。また、県内全域の面データも3次元点群データとして取得しつつあり、これをオープンデータとして無料で公開している。防災、観光、そして地域のまちづくりなど、多様な側面での活用が期待される。

◆大学と連携し住民主導で橋の予防保全活動を展開/福島県平田村

老朽化が進む公共インフラをどう維持管理・予防保全するか。都市、地方を問わず、共通の行政課題だ。そんな中、福島県平田村は、住民が主導して橋梁の予防保全を進めるユニークな取り組みを展開している。発端は、県内にある日本大学工学部からの提案。自治体、大学、住民の3者が有機的につながり、公共インフラの維持管理に実効性も備えた新発想をもたらしている。

●連載

■管理職って面白い! SMARTに行こう/定野 司
■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
 モデルに倣う時代からサンプルをアレンジする時代へ/後藤好邦
■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇
■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/小泉真衣
■自治体DXとガバナンス/稲継裕昭
■働き方改革その先へ!人財を育てる“働きがい”改革/高嶋直人
■未来志向で考える自治体職員のキャリアデザイン/堤 直規
■そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室/関根健夫
■宇宙的公務員 円城寺の「先憂後楽」でいこう!/円城寺雄介
■次世代職員から見た自治の世界/吉村彼武人
■“三方よし”の職場づくり/鈴木一博
■誰もが「自分らしく生きる」ことができる街へ/阿部のり子
■新型コロナウイルス感染症と政策法務/澤 俊晴
■地方分権改革と自治体実務──政策法務型思考のススメ/分権型政策法務研究会

●巻頭グラビア

自治・地域のミライ
亀井利克・三重県名張市長
地域共生社会を進化・発展させ、人口減少社会に向き合う

「まちの保健室」や「名張版ネウボラ」など、先駆的な取り組みを進めてきた三重県名張市。20年にわたり、地域共生社会づくりを進化・発展させてきた、亀井利克市長は「私でも、市役所でもなく、市民がこんなまちをつくってきた」と言い切る。

亀井利克・三重県名張市長(69)。20年にわたる地域共生社会づくりを振り返って、「市民がこんなまちをつくってきた」と話し、「名張は本当に人材が豊富なまち。そこがすごい」と胸を張る。

●連載

□童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝
 隆景家から頼家への転生(七) 流れる箱が示すもの・頼杏平と山陽

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
 居住者ゼロの町で、ようやく帰還が始まる【11年目の課題・除染3】
 原発事故、続く模索

日本にはこの11年間、誰も住んでいなかった自治体がある。福島県双葉町だ。あの日、政府の避難指示で散り散りになり、帰還困難区域に指定されるなどしたため戻れなかった。しかし、同区域でも除染が始まり、早ければ今年6月にも帰還が始まる。ただ、避難が長すぎた。住民は若手ほど避難先への定着が進み、どれだけの人が帰るのか。「帰還」後の町の姿は不透明だ。

□現場発!自治体の「政策開発」
 ICTを活用して市民参加で地域課題を解決
 ──加古川市スマートシティ構想(兵庫県加古川市)

兵庫県加古川市は、ICTの活用によって、誰もが豊かさを享受でき、幸せを実感できるまちの実現に向けて「加古川市スマートシティ構想」を策定した。策定に当たっては、パブリックコメントに加え、市民参加型合意形成プラットフォーム「加古川市版Decidim」を公開し、市民等からアイデアや意見を収集したのが特徴だ。そのプロセスを経た構想の具現化を図り、市民中心の課題解決型スマートシティをめざしている。

□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
 「政策推進会議」で調査・研究、合意形成を図り政策提言──福岡県古賀市議会

福岡県古賀市議会は2021年11月25日に「気候変動への対応について」の政策提言を、12月15日には「第5次古賀市基本構想」についての提言を市長に提出した。特に前者は市議会の「政策推進会議」が2年余りにわたって調査・研究してきた成果。議員間討議を重ね、合意形成を図り政策提言を行うサイクルが定着してきた同市議会を取材した。

●Governance Focus

□高齢化した街で記憶は語り継げるか──新潟県「糸魚川大火」から5年/葉上太郎

駅前の繁華街が150軒近く燃えた新潟県糸魚川市の大火。2016年12月22日の発生から5年が過ぎ、道路の拡幅や復興公営住宅の建設などハード整備はほぼ終了した。だが、被災地内で自宅を再建できた世帯は6割強しかない。町屋建築が軒を並べた街は一変し、空き地や駐車場が目立つようになった。それだけではない。「記憶を語り継ごうにも、高齢化で余力が残っていない」と話す人もいる。「糸魚川の顔」はこれからどうなるのか。

□大規模水害に見舞われた時、首都圏低地帯はどうする(上)
 カスリーン台風の記憶残る地 動き出した住民/河野博子

極端な降雨による堤防の決壊、台風による高潮--まさかの大規模水害への備えを自治体は求められている。戦後、堤防や護岸などのインフラが整備され、大水害の危険は遠のいた。だが世界中で風水害が激化する気候危機の時代が到来。高度成長期に沈下した地盤、過度な人口の集中を抱える3大都市圏、なかでも首都圏の低地帯での対策の動向を追った。

●Governance Topics

□コロナ対策における国と地方の役割や課題などを議論/地方行政実務学会第2回全国大会

自治体職員経験のある研究者と現役自治体職員による「地方行政実務学会」(理事長/稲継裕昭・早稲田大学教授)は21年12月11日と12日、第2回全国大会を開催した。大会テーマは「コロナ対策からみた国と地方の役割」。コロナ禍の中でさまざまな問題が提起された国と自治体を巡る課題などについて実務的な視点も踏まえて議論した。

●連載

□ザ・キーノート/清水真人
□新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之
□市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照
□地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚
□“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘
□自治体の防災マネジメント/鍵屋 一
□市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹
□公務職場の人・間・模・様/金子雅臣
□今からはじめる!自治体マーケティング/岩永洋平
□生きづらさの中で/玉木達也
□議会局「軍師」論のススメ/清水克士
□「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭
□From the Cinema その映画から世界が見える
 『国境の夜想曲』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
 [著者に訊く!/『保健所の「コロナ戦記」』関なおみ]

●カラーグラビア

□技・匠/大西暢夫
 手間と時間を惜しまない徳島の甘味づくり
 ──和三盆職人(岡田製糖所)(徳島県上板町)
□わがまちの魅どころ・魅せどころ
 “熱気”あふれる壮大な風景と伝統・文化を満喫/新潟県小千谷市
□山・海・暮・人/芥川 仁
 自らと向き合い支える心──群馬県甘楽郡甘楽町秋畑峰
□生業が育む情景~先人の知恵が息づく農業遺産
 みなべ・田辺の梅システム
 ──人やミツバチと共生する山の斜面の梅林(和歌山県みなべ・田辺地域)


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[特別企画]

〈鼎談〉シングルマザーの明日を拓く
「ひとり親TECHエンパワメントプログラム」/中野孝浩・吉岡マコ・大島葉子

※「もっと自治力を!~広がる自主研修・ネットワーク」「人と地域をつなぐ─ご当地愛キャラ」「クローズ・アップ」は休みます。

 

 

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株式会社ぎょうせい

「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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