【リレー連載】「自治体×デジタル」を考える 東西南北デジデジ日記

千葉大右・多田 功・山形巧哉・今村 寛

東西南北デジデジ日記 vol.16 今週の担当:【南】今村寛

地方自治

2022.01.27

東西南北のそれぞれで奮闘する現役自治体職員と元自治体職員4名によるリレー日記。タイトルに冠しているとおり、テーマはデジタルなれど、小難しいこと抜きに、多彩な切り口で「自治体×デジタル」を考えてみよう、な日記です。【南】の今村さん、自治体DXの本質に迫る!?

―――――2022年1月27日 Thu.―――――――

 

ついにDXの本質に迫る

本年もよろしくお願いいたします。

この交換日記への話題提供もどんどんドライブがかかり、その回転の速さとツッコミの角度に毎週驚きと感動を禁じ得ないのですが、第4クールはいよいよ自治体DXの本質に迫ってきましたね。
4人組のしんがりということで毎回話題、伏線の回収に努めているところですが、今回は3人の蒔いたお題をうまく回収できるのでしょうか?

 

DXの費用対効果を何で測る?

地方自治体はこれまでも、住民基本台帳の電子化やその情報基盤に連携した税や福祉等の行政サービス提供・管理のためのシステムを開発・運用することで手作業、紙媒体でやっていたデータ連携を効率化、省力化する、といった取り組みを進めてきました。

昨今話題の「自治体DX」とはこの流れを推し進め、さらに作業が省力化、効率化され、事務コストを低減させることなのでしょうか。
もしそうだとしたら、財政状況の厳しい折、デジタル化のための新たな投資に見合う費用対効果が得られるのでしょうか。

確かに効率化、省力化はDXの成果の一つですが、DXの真の目的は「生産性の向上」、つまりコストを抑えるだけではなく、生み出される商品、サービスの付加価値の向上をも実現しなければならないというのが定説です。
例えば、オンライン申請やデータ連携などにより事務が効率化され、市民サービスの向上が図られるのは「即時性」「簡便性」といった「利便性」が市民にとってわかりやすい付加価値の向上として挙げられます。

しかしその費用対効果を議論するなかでよくある過ちが、事務の効率化、省力化と同様に職員の手間がかからなくなった分を人件費で換算するという手法。
「自治体DX」が市民に提供する付加価値の向上を目的とする以上、その効果測定は利便を享受する市民の満足度で測定するのが常道。
例えばオンライン申請の場合、市民が窓口に行かなくて済むことによって省くことができる手続き時間が実際に生み出される付加価値となるわけで、この恩恵を金銭換算しそれをコストと比較すべきではないでしょうか。

 

自治体DXは市民幸福の夢を見るか

先ほどの話はあくまでも一例であって、「自治体DX」によって生み出される付加価値、すなわち市民満足の向上は、費用対効果を金銭換算できる「利便性」だけに目を奪われてはいけません。

自治体運営の究極の目的は市民福祉の向上です。

財政状況が厳しくすべての市民のニーズに応えきれない今だからこそ、人口減少や少子高齢化が進展する未来の自治体において市民福祉の向上のために求められる自治体サービスは何か、市民に満足を与える、不満を抱かせない業務遂行はどうあるべきかをまず考え、それを実現するために市民と接する業務フローや体制、サービス水準、提供方法などについてあらゆる改革を同時に行う。

たとえ業務の効率化を行う場合であっても、単なるコストダウンが目的となるのではなく、そこで生みだされる人的資源を、機械に任せることのできない業務、人のぬくもりが必要な分野に再配置することを目的とすれば、市民の満足や信頼を得るために、という旗印が立ちます。

そういった自治体改革全体のなかでデジタルの力を最大限に活用し、自治体そのものの付加価値を高めていくことが「自治体DX」の真の狙いだと私は思うのです。

 

縮小する未来に見る夢は

山形さんの「みどりの窓口」はまさに縮小する未来のなかで我々が想像できたはずの光景です(vol.15)。
こうなることを前提に我々はどんな未来の自治体の姿を描くことができるのか、そのために何が必要で、デジタルの力はどう活用できるのかが問われています

千葉さんが構想した「書かない窓口」は、一度とん挫したBPRが場所と形を変えて復活しました(vol.9vol.13)。
自治体システムの標準化とオンライン申請の推進が国策として進められる時代転換の背景には、私たちがその利便性のない時代を生きていくことができないという未来が現実に到来したことを意味します。

まさに多田さんの言う「予測不可能な未来」のなかで微力を尽くすのが我々公務員の務め(vol.14)。

「ドラえもんがつくる未来はありません。
我々がドラえもんをつくり、未来を作り出すのです。」

この言葉、かっこいいな~(笑)。
ドラえもんのいる未来の夢を描かない限りはドラえもんを創る科学者は現れません。

今、我々公務員に必要なのは、世知辛く窮屈な、縮小する未来でも、その未来に暮らす住民の視点で夢を描き、その実現に向けて描いたイメージみんなの夢として共有することなのでしょうね。

おあとがよろしいようで。デジデジ!

★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885

★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/

★そのほか、自治体財政の話、対話の話など、日々の雑感をブログに書き留めています。
https://note.com/yumifumi69/

 

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