東西南北デジデジ日記 vol.12 今週の担当:【南】今村寛

地方自治

2021.12.30

東西南北のそれぞれで奮闘する現役自治体職員と元自治体職員4名によるリレー日記。行政のデジタル化加速とはいうものの、「そもそもどこから始めたらいいの?」。テーマはデジタルなんぞを掲げていますが、まあまあ肩ひじ張らず、コーヒーでも飲みながらどうぞ、な雰囲気でお届けしています。2021年ラスト配信、【南】の今村寛さんに締めていただきます!

―――――2021年12月30日 Thu.―――――――

今週の担当:【西】多田功

 

伏線が回収された?

おじさん4人のゆるゆるな交換日記も3周目に入ったところで急にトーンが変わりましたね。

千葉さん、多田さんは今回のターンで大きく舵を切るかたちでそれぞれが本業で成果をあげたBPRの話題にがっつり入り込み、山形さんは前回、今回とつながる形で北海道の小さな町に住む人たちにとってのデジタル化、ICT利活用の話を掘り下げはじめました。

実はこの両方の流れ、私の張った伏線の回収かもしれないと思って、しめしめとほくそ笑んでいます(笑)。

私の張った伏線、それは「コミュ障」というキーワードです。
前回私は、役所がデジタルの力を借りて新しいことに挑戦できない理由を二つ挙げました。
一つは、業務の正確着実な履行への責任感が、縦割りの壁を超えることを躊躇させる、役所の中での「コミュ障」。
もう一つは、市民の期待する役所の無謬性への過剰な恐れから、市民の抱く改革への期待に気づけない、市民との「コミュ障」。
私たち公務員は、組織の中でも、組織の外側との関係でも、相手方とうまくコミュニケーションをとることができないので現状を変えることができないのだと書きました。
この二つの「コミュ障」を解決するのがBPRであり、市民との対話なのです。

 

はじめに言葉ありき

千葉さん多田さんが今回のターンで力説し始めたBPR(BCRではありませんって言っても40代以下には通用しないんだろうなあ。)はBuisiness Process Re-engineering(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の略。
平たく言えば「業務の見直し」です。

役所のデジタル化の多くはICT技術を魔法の杖であるかのように妄信し、現在書類のやり取りや目視による確認など、人が手作業で行っている非効率な方法をそのまま機械にやらせたり、生身の人間だからできるあいまいな判断や複雑高度な処理を機械で自動的にできるようにと巨大な負荷をかけたりということをしてしまいがちです。

詳しくは来週の千葉さん、再来週の多田さんがさらに専門的な解説を加えられることと思いますが、このBPRがちゃんとできていなければ、どんな技術を活用したとしてもただ無駄に資金と労力が投入されるだけ。
このBPRがうまくいくために必要なのが、当該業務にかかわる当事者たちの「目的の共有」「状況の共有」「立場の共有」であり、その共有に必要なのが「言語化」による当事者間のコミュニケーションだと私は考えています。

 

多様性を受け止める想像力

山形さんは北海道の小さな町(何度もこんな言い方をしてすいません)に暮らす住民がデジタル化とどのように向き合うのか、住民がICT活用によって受けられる恩恵と負担の受け止め方を考えながら行政サービスの改善を進めるべきという視点で書き進めておられ、とても共感するところです。

こちらはずばり、住民とのコミュニケーションが必要、ということなのですが、住民といっても年齢、職業、住んでいる地域や置かれている環境が違えば立場や考え方も千差万別です。
先週山形さんが世代間のデジタルデバイド(情報格差)の話題に触れていましたが、デジタル技術そのものが格差を生むのではなく、デジタル技術を前提とした仕組みを作るのは私たち生身の人間。
私たち行政組織が市民にとって必要なサービスを提供する際には、市民が多様な存在であることをありのまま受け止め、許容し、その多様性を前提にしたうえで行政の構築する仕組みが分断や格差を生まないことを念頭に置く必要があります。

そのためには、自治体組織が市民一人ひとりを知り、その気持ちや立場を推し量るための丁寧な対話による関係構築が求められますが、大勢の市民一人ひとりとリアルな接点を持つことが難しいなかで直接の対話機会を補う多チャンネルの情報収集力と平易で親しみやすい発信力、そして直接対面することのない市民の姿を思い描く豊かな想像力が、自治体組織と市民とのコミュニケーションにおいては不可欠です。

 

「対話」で変える公務員の仕事

組織内での関係者コミュニケーションはなるべく言葉で明確に。
多様な住民とのコミュニケーションは言葉だけでなく想像力でカバー。

どちらも私たち自治体職員にとっては耳の痛い話です。
わかっちゃいるけどなかなかできないのが行政組織、公務員の性(さが)ですが、別にこれはデジタル化、ICT活用に関する課題というわけではなく、そもそも私たち行政組織、公務員が抱える病理の根っこ。

市民の利便向上と行政運営の効率化。
みんなが喜ぶはずの改革がうまく進まないことの根本原因が私たちの「コミュ障」体質にあるとしたら、その改善にどうやって取り組むか。

この交換日記のなかで私の立ち位置はそこらへんかなーなどと思いながら、皆さんの投げるボールをうまく受け止め、パスをつなげることができるよう2022年の新たな展開を考えたいと思います。

それではまた来年。デジデジ!

 

★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885

★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/

★そのほか、自治体財政の話、対話の話など、日々の雑感をブログに書き留めています。
https://note.com/yumifumi69/

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千葉大右・多田 功・山形巧哉・今村 寛

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