月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2021年10月号 特集:コロナ禍の自治体計画

NEW地方自治

2021.09.29

●特集:コロナ禍の自治体計画

第2期の地方創生総合戦略は2020年度、コロナ禍の中でスタートした。
折しも今年は2011年5月の地方自治法改正(同年8月施行)によって、市町村への基本構想(総合計画)の策定義務撤廃から10年。さらに国の地方分権改革有識者会議は、自治体に策定を義務付ける規定の増加を問題視(505条項、2020年12月末現在)、2021年の地方からの提案募集の重点募集テーマに「計画策定等」を設定した。コロナ禍という非常事態にあって、地方分権の観点から自治体計画のあるべき姿、今後の姿を考えたい。

■自治体の総合計画と新型コロナ禍対応/大森 彌(東京大学名誉教授)

打ち続く新型コロナ禍の中で、自治体は、既定事業の中断・延期・廃止、職員の臨時配置、予備費の支出、補正予算の編成と執行などの緊急の対応を迫られた。これらが既定の総合計画の実施にどのような影響を及ぼしたかを事務事業レベルから検証しなければならない。なによりも住民の命と安全を守るという観点から、改めて施策間の優先順位を再考してみなければならないだろう。自治体の総合計画が住民と役所の共通の導き手であり続けるために、再び、その必要性と内容の適否を問われることになる。

大森 彌 東京大学名誉教授

新型コロナ禍の中で、自治体は既定の総合計画の実施にどのような影響を及ぼしたかを事務事業レベルから検証しなければならない。なによりも住民の命と安全を守るという観点から、改めて施策間の優先順位を再考してみなければならないだろう。

■国法による自治体計画策定要請の現状と対処法/今井 照((公財)地方自治総合研究所主任研究員)

現在、地方分権改革有識者会議では自治体から提案募集方式で計画策定の義務付け等を見直そうと進めているが、地方自治の視点からメルクマールを法制化するなど、大きな枠組みを設定しない限り、過去の見直しの二の舞になるだけではないか。事態の改善に向けては、自治体の連合体などを通じて国に根本的な対応を求めていくことが不可欠であり、そのポイントは国の行政機関の自立性を高めることだ。そして最優先されるべきは、その自治体の中の地域社会や市民生活の切実性に応じた政策である。

■総合計画の実効性確保
 ──自治体経営の生産性向上を支援するシステム構築/玉村雅敏(慶應義塾大学総合政策学部教授)

2011年5月の地方自治法改正により「市町村基本構想の策定義務」が撤廃され、10年以上が経過した。その10年以上の間に、多くの自治体で総合計画の基本構想(ないしは基本計画)の改定期を迎え、総合計画の位置づけの確認や工夫がされてきている。自治体は、自ら行政経営や地域経営を行う経営体として、総合計画のあり方を設定することが求められたといえる。本稿では、自治体の様々な挑戦を踏まえて、総合計画をより実効性のあるものとして機能させるために求められる三つの論点を説明する。

■行政計画の実効性とエビデンス・評価
 /佐藤 徹(高崎経済大学地域政策学部・大学院地域政策研究科教授)

わが国自治体では、1990年代半ば以降、行政評価の制度化が急速に進展した。行政評価制度が普及して以降は、計画の目的と目標に焦点を当てた「有効性」が重視されるに至っている。こうした傾向は、昨今のEBPMの推進に伴い、より顕著になっている。それでは、どのように行政計画の実効性を確保していけばよいのだろうか、そのために必要なエビデンス、評価のあり方とはどのようなものだろうか。

■長期ビジョン策定の意義と冗長性(リダンダンシー)
 /牛山久仁彦(明治大学政治経済学部地域行政学科長・教授)

長期ビジョン策定の意義と行政の冗長性との関係はどのようなものになるのであろうか。まず、問われるのは、総合計画と他の分野別計画、あるいは並行して運用される行政経営や危機管理に関する計画との緊密な連携と補完である。評価のあり方についても、今回のような社会全体を揺るがすような事態が生じた時に、それまでの目標値を見直す、変更することについての手法を開発することも求められるし、施策そのものの見直しをどのように行うのかも検討しておくべきであろう。

■計画策定等の(実質的)義務付けと地方分権/嶋田暁文(九州大学大学院法学研究院教授)

「計画策定等の(実質的)義務付け」は、さまざまな意味で自治体にとっての大きな足枷となっている。この問題は根深く、その抜本的な改革は、短期では到底なし得ないように思われる。それゆえ、短期的・中期的・長期的対応という3段構えでじっくり取り組む必要がある。

■コロナ禍における未来志向による行政計画/杉岡秀紀(福知山公立大学地域経営学部准教授)

総合計画の策定義務がなくなったからこそ、今問われているのは、各々の自治体ならではの文化やルールを重視することである。加えて、常に最上位の計画であることを意識し、計画策定後も住民や議会との日常的な対話ツールとして活用し、かつ時代の変化に合わせ、必要があれば未来志向で修正していく視点が重要であろう。

■コロナ禍の議会政策サイクルと自治体・行政計画
 ──非常事態の日常化での住民自治/江藤俊昭(大正大学社会共生学部公共政策学科教授)

国も地方もまさに危機の時代にコロナ危機が襲った。住民に身近な「住民自治の根幹」である地方議会は、日常化した非常事態を冷静に分析し脱却の方途の議論を巻き起こす必要がある。今日議会は、実質的計画となった地域経営の軸である総合計画(行政計画を束ねる計画)、そしてその具体化である財政に積極的にかかわるようになっている。議決を重視するだけではなく、そこに至るプロセスこそ重要だという視点から「議会からの政策サイクル」を発見し実践している。非常事態にこのブラッシュアップを図っていきたい。

【キャリアサポート面】

●キャリサポ特集
 カギは“つながり”!
 「社会的処方」が秘める可能性

社会的処方──。まだまだ聞きなれないこの言葉ですが、薬ではなく、広く社会資源や地域資源との“つながり”によって病気や社会問題などを治癒・解決していくことを指します。英国発祥の概念で、日本も国がモデル事業の実施に動き出すなど、徐々に取り組みが始まっています。高齢化に加え、コロナ禍で孤独・孤立の問題が深刻化する昨今。社会的処方の可能性と自治体に求められる役割について、考えていきます。

■社会的処方の可能性と自治体の役割──縦割りを超えてつながろう/西岡大輔(大阪医科薬科大学研究支援センター医療統計室助教/南丹市国民健康保険美山林健センター診療所所長)

社会的処方では、住民の生活に関わるさまざまな専門職や部門との連携が重要だ。また、住民の困難を発見する場所は必ずしも保健医療などの現場とは限らない。住民に接する機会があるすべての自治体職員が、社会的処方の実践者である。

〈取材リポート〉
◆地域福祉教育総合支援ネットワークを構築し包括的支援を実現/三重県名張市

総合計画の基本理念に「福祉の理想郷」を掲げ、包括的な地域福祉の先進地として知られる三重県名張市。2016年度からは、「名張市地域福祉教育総合支援ネットワーク」を推進している。孤立や孤独を生む複雑な社会的リスクに対して、住民・行政双方の多機関連携で対応し、市民一人ひとりを守っていこうとするもの。ネットワーク全体を貫くのが、社会的処方という考え方だ。20年度からは、その推進役となるリンクワーカーの養成研修も始めている。

◆社会包摂型劇場経営から社会的処方箋の実践拠点へ/岐阜県可児市

もともと保健医療の分野で進められてきた社会的処方の視点を、文化社会政策として再構築しようとしているのが岐阜県可児市だ。同市文化創造センター(愛称・アーラ)では2008年度から、「アーラまち元気プロジェクト」という社会包摂型のコミュニティ・プログラムを実施。外国籍市民、障害者、子ども、高齢者などが直面する課題にアートの側面から斬りこみ、目覚ましい成果を挙げてきた。次に向かうのが、芸術文化の社会包摂機能を全面展開させて地域の教育・福祉・保健医療・多文化共生等の領域とつなげていく、社会的処方箋の実践活動だ。

●連載

■管理職って面白い! ホウレンソウのおひたし/定野 司
■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
 一人ひとりの考えが尊重される社会を創ることが多様性ある社会につながる/後藤好邦
■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇
■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/寺田理恵
■自治体DXとガバナンス/稲継裕昭
■働き方改革その先へ!人財を育てる“働きがい”改革/高嶋直人
■未来志向で考える自治体職員のキャリアデザイン/堤 直規
■そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室/関根健夫
■宇宙的公務員 円城寺の「先憂後楽」でいこう!/円城寺雄介
■次世代職員から見た自治の世界/中西咲貴
■“三方よし”の職場づくり/小山将彦
■誰もが「自分らしく生きる」ことができる街へ/阿部のり子
■新型コロナウイルス感染症と政策法務/澤 俊晴
■地方分権改革と自治体実務──政策法務型思考のススメ/分権型政策法務研究会

●巻頭グラビア

自治・地域のミライ
河村 孝・東京都三鷹市長
「子どもの森」から「百年の森」へ市民とともにまちづくりを進める

職員・副市長を経て19年に市長に就任し、「市民参加と協働のまち」に長年取り組んできた東京都三鷹市の舵取りを担う河村孝市長。コロナ禍の中でも「緑と水の公園都市」の実現に向けたまちづくりを進めるとともに、新たな市民参加の形も模索している。

河村孝・東京都三鷹市長(67)。就任時から力を入れて進める「子どもの森」づくりについて、「子どもには『未来』の意味も込めている。未来につながる希望がなければまちづくりはできない」と話す。

●連載

□童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝 隆景家から頼家への転生(三)
 甥の訓育をする兄と弟・頼兄弟(一)

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
 理念の「復興」はどう発信されたのか【11年目の課題・東京五輪】
 原発事故、続く模索

「復興五輪」。このほど閉幕した東京五輪・パラリンピックの理念はそう掲げられていたはずだ。しかし、菅義偉首相が「人類がウイルスに打ち勝った証として開催する」と国会で述べるなど、何のための大会かは最後まで揺らいだ。福島県内では「『復興』は招致に利用されたにすぎない。私達に関係ない大会だった」とする批判が根強い。本当に復興に寄与したのか。福島会場の現場から問う。

□現場発!自治体の「政策開発」
 日本一「本とふれあえるまち」を官民連携・協働でめざす
 ──日本一の読書のまち(埼玉県三郷市)

埼玉県三郷市は、「日本一の読書のまち」を宣言し、読書のまちづくりを推進している。市民誰もが、いつでも読書に親しみ、文化のかおり高いまちを実現するのが目標だ。全世代が読書や本にふれあえる環境や場づくりに向け、施策を体系化した推進計画の下、「全国家読ゆうびんコンクール」をはじめ、様々な独自のイベントや事業を活発に展開。「読書密度」というオリジナルの指標を設定し、宣言の実現を図っている。

□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
 町民との意見交換会を踏まえ、町長に「通学路の危険箇所への早急な対応を求める緊急提言書」を提出
 ──茨城県阿見町議会

茨城県阿見町議会は8月1日、町民とともに「通学路の安全に関する意見交換会」を開催。そこで出された意見も加えて8月10日、「通学路の危険箇所への早急な対応を求める緊急提言書」を町長に提出し、国への意見書も採択した(8月17日)。取手市議会の現役事務局職員を議会改革アドバイザーに委嘱して半年。改革機運が急速に高まっている同町議会を取材した。

●Governance Focus

□空前の雨量でも被害が抑えられた理由──広島土砂災害から7年の豪雨/葉上太郎

広島市で74人が犠牲となった2014年8月20日の広島土砂災害。あれから7年が過ぎた今年8月、またもや前線が停滞して、同市など西日本を中心に空前の豪雨となった。ただし、犠牲者は全国で13人。広島県内でも3人と、雨量の割には被害が抑えられた感がある。7年間で進められた砂防堰堤の整備や、防災意識の高まりが要因だろう。だが、間一髪で危機を逃れた地区や、不幸中の幸いと言っていい事例もあり、多くの教訓が残された。

●Governance Topics

□オンラインによる「実践型インターンシップ」を実施/神奈川県小田原市

近年、自治体でも導入されている学生などのインターンシップ(就業体験)。だが、昨年からのコロナ禍による接触制限で見直しを迫られているところも少なくない。神奈川県小田原市では今年度、オンラインによる「実践型インターンシップ」を実施。オンラインならではの成果も含め手応えを感じている。

□「浸水対応型市街地」「流域防災」など新発想で事前復興を
 ──日本危機管理防災学会主催シンポジウム

日本危機管理防災学会主催のシンポジウム「『複合災害(水災害×地震災害)に対する事前復興の取組み』について」が9月2日、オンライン上で開催された。関東大震災のあった9月1日を中心に毎年実施されている「首都防災ウィーク」(第9回)の一環。東京都葛飾区、国土交通省荒川下流河川事務所、防災の専門家が登場し、事前に復興まちづくりを実現して災害に強いまちにしておく「事前復興」のあり方に関し、複合災害を前提にしつつ、活発な議論が交わされた。視聴者数は、300人超。

●連載

□ザ・キーノート/清水真人
□新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之
□市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照
□地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚
□“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘
□自治体の防災マネジメント/鍵屋 一
□市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹
□公務職場の人・間・模・様/金子雅臣
□今からはじめる!自治体マーケティング/岩永洋平
□生きづらさの中で/玉木達也
□議会局「軍師」論のススメ/清水克士
□「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭
□From the Cinema その映画から世界が見える
 『アイダよ、何処へ?』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
 [著者に訊く!/『都市を終わらせる』村澤真保呂]

●カラーグラビア

□技・匠/大西暢夫
 木に思いを馳せ、ろくろを回す
 ──木地師・小椋昭二さん(滋賀県東近江市君ヶ畑地区)
□わがまちの魅どころ・魅せどころ
 鳥海山麓に広がる風景を満喫するローカル線の旅/秋田県由利本荘市
□山・海・暮・人/芥川 仁
 天空の里「毎日が楽しい」農業──岐阜県飛騨市神岡町山之村
□生業が育む情景~先人の知恵が息づく農業遺産
 農林水産循環の起点にあるクヌギ林の価値
 ──国東半島・宇佐の農林水産循環(大分県国東半島宇佐地域)
□人と地域をつなぐ─ご当地愛キャラ/サカエル&みそさかい(堺市堺区)
□クローズ・アップ
 「解体」方針が一転、全棟を耐震化へ──最大級の被爆建物、旧「広島陸軍被服支廠」


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株式会社ぎょうせい

「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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