月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2021年7月号 特集:コロナ後を見据えたまちづくりへの模索

地方自治

2021.06.29

●特集:コロナ後を見据えたまちづくりへの模索

変異株によって再び全国に感染が広がった新型コロナウイルス。今後の収束はワクチン接種次第だが、ここに来ての急速な進展から意外と早く出口が見えてくるかもしれない。その一方、コロナ禍で加速したデジタル化や社会構造の変化などもとらえながら、スーパーシティやスマートシティをはじめとする新たなまちづくりへの模索も進みつつある。今月はそうした動きを紹介しながら、コロナ後のまちづくりを展望してみたい。

■パンデミックとスマートシティ/中川雅之

今回のパンデミックが過去のショックと異なるのは、人々や機能を集積させて生産性をあげる「都市という技術」を用いなくても、生産活動を持続できるという選択肢が与えられているように見えることだろう。都市構造を長期的に規定するのは、新型コロナウイルスというショックよりも、自然実験を経たテレワークなどの本格的な導入だと考えることが適切だろう。

中川雅之 日本大学経済学部教授

スマートシティは基本的には正解がない世界で、アジャイルに進めていくしかない。そして成功事例を早急に普及させるような仕組みが必要だろう。地方自治体は主役だが、専門家を活用するとともに、何が地域の課題なのか市民の合意を得る努力が非常に重要である。

■供給者主語から住民主語のスマートシティへ
 ──何のための街づくりなのかを問い直す/松田智生

全国でスマートシティ、そしてスーパーシティ構想が動きだしている。だが、住民のなかで関心が高まっているようには見えない。スマートシティはITベンダーや自治体の供給者主語でなく、そこで暮らす住民主語にして再考すべきだ。コロナ禍収束後を見据えて、先手を打った街づくりを考えるのは今しかない。

■アフターコロナとSDGs未来都市/関 幸子

コロナ禍の中で、日本の地域社会も大きく変化してきた。一つがSDGsであり、もう一つがニューノーマルの新生活形態への移行である。実はSDGsとニューノーマルは非常に密接に関連しており、人口減少下で不可欠な日本の社会システムへの大規模な構造転換へと帰結することになる。国内での改革が進まず失われた20年と言われてきたが、コロナ禍で生まれたSDGsを基盤として、変革の芽をアフターコロナ社会で大きく咲かせることが重要である。

■コロナ禍を経験した都市とエリアマネジメント/保井美樹

新型コロナの感染拡大は、全世界で、都市の強みである「人が集まる」ことに疑問を投げかけた。今後の都市空間はどうあるべきか。どのような空間の使い手、地域の担い手が都市に求められるのか。新型コロナの収束後も見据え、日本の都市づくりの将来を展望し、特に地域運営の担い手としてのエリアマネジメントの役割がどのように転換するかを検討する。

■「命を守る」土地利用コントロールの実装を/野澤千絵

住宅や都市機能の開発は短期的には経済効果はある。しかし、今つくられる建物は少なくとも50年程度は、その街にあり続けることになる。災害ハザードエリアに新規立地を許容し続けることは、災害時の公的な対応・負担増だけでなく、将来世代に負動産への対応・負担増を強いることにも目を向けるべきであろう。「命を守る」土地利用コントロールの実装に取り組むことは、コロナ禍があろうがなかろうが、都市計画権限を有している市町村の責務である。

■これからのコンパクトシティと都市モビリティ/谷口 守

近年では人口減少や脱炭素化、財政的制約といった諸課題に対処するため、コンパクトシティ政策が多くの自治体で採用されるようになってきている。一方で、自動運転が普及すればどんな場所に住んでもよいのではないかという意見も近年散見される。また、COVID-19の感染拡大防止には「密」を避け、リモートワークを行うことが指向されている。本稿ではこのような議論を前に、コロナ後を見すえてどのようなまちづくりを進めるべきかを言及する。

■With&Afterコロナを見据えた健幸都市の方向性/久野譜也

歳代や90歳代でも毎日自分の足で、生きがいに通じるコミュニティに参加できる心身の健康づくり、及びそうしたくなる「まち」としてのハードとソフトをより具体化していくことが、Afterコロナへのまちづくり及び2040年問題の克服につながるものと考える。とくに、これから求められる視点は、弱者としてのケア一辺倒からの高齢者対策からの脱却であろう。90歳代後半でも海外や国内旅行を普通に楽しめる生きがいのある生活を楽しめる住民を増やすために、それを可能とする健幸都市づくりという発想が重要である。

■都市と農山漁村の関係をどう再構築するか
 ──時代の変化に応じた新たな関係の模索/坂本 誠

コロナ禍の中、都市から農山漁村への移住や多拠点居住がさかんになったとされる。背景として指摘されるのは、空間と社会的活動の関係に対する認識の変化である。定住志向の変化とそれによる流動性の高まりは、ゆくゆくは都市と農山漁村を対置的に捉える視角の見直しを迫るかもしれない。

【キャリアサポート面】

●キャリサポ特集
夏を乗り切る!熱中症対策

暑い夏の心配事に、熱中症があります。自分の体はもちろん、自治体としては、特に注意が必要な高齢者や子どもへの対策も必須。さらに、今夏もまだ新型コロナウイルス感染予防のため、マスクの着用や換気を徹底することも求められます。
熱中症のリスクにどう対処すればよいのか。暑い夏を乗り切るべく、一緒に考えてみませんか。

■熱中症のメカニズムと予防法/上野 哲

熱中症は誰にでも起こりえる死に至る可能性がある傷害である。しかし、しっかりとした対策をとっていれば100%防ぐことができる。熱中症がどうして発症するかをよく理解し、熱中症が起きないように対策を立てて予防し、万が一熱中症が起きても早急に対処できる準備が必要である。

〈インタビュー〉高瀬義昌・たかせクリニック理事長に聞く
◆熱中症対策に効果的な経口補水療法

熱中症の対処法には、どんなものがあるだろうか。知っているようで、具体的なことまではあまり知らない人も少なくないだろう。中長期的に気温が上昇傾向にある中、今夏はまだマスクの着用が求められる新型コロナ禍も重なる。熱中症の効果的な対処法について、高齢者などの在宅医療が中心のたかせクリニック・理事長の髙瀬義昌さんに聞いた。

〈取材リポート〉
◆熱中症による救急搬送ゼロへ全庁・地域一丸で取り組む/群馬県館林市

暑い夏に要注意なのが、熱中症。近年は地球温暖化などの影響から各地で最高気温が更新され、40℃を超す地域も珍しくなくなってきた。そんな中、暑い地域としても知られる群馬県館林市は、ここ10年以上、庁内のみならず、地域一丸で暑さ対策に取り組んでいる。大きな目標は、熱中症による救急搬送ゼロ。市民目線で実効性のある取り組みなどを取材した。

●連載

■管理職って面白い! フローに入ろう/定野 司
■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
 新たなシステムを導入する際に気を付けるべきポイント/後藤好邦

■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇
■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/吉川貴代
■自治体DXとガバナンス/稲継裕昭
■働き方改革その先へ!人財を育てる“働きがい”改革/高嶋直人
■未来志向で考える自治体職員のキャリアデザイン/堤 直規
■そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室/関根健夫
■宇宙的公務員 円城寺の「先憂後楽」でいこう!/円城寺雄介
■次世代職員から見た自治の世界/中西咲貴
■“三方よし”の職場づくり/梅村 淳
■誰もが「自分らしく生きる」ことができる街へ/阿部のり子
■新型コロナウイルス感染症と政策法務/澤 俊晴
■地方分権改革と自治体実務──政策法務型思考のススメ/分権型政策法務研究会

●巻頭グラビア

自治・地域のミライ
福田紀彦・川崎市長
「ともにつくる『最幸のまち』かわさき」の実現を

この5月に人口154万人を突破した川崎市。「ともにつくる『最幸のまち』かわさき」を掲げる福田紀彦市長は、市の発展を支えてきた「多様性のあるまち」が人々を惹きつけており、その価値を再認識すべきと語る。

福田紀彦・川崎市長(49)。市では2024年の市制100周年に向けて、ブランドメッセージ「Colors,Future! いろいろって、未来。」を掲げた。福田市長は、「川崎は『元祖・多様性のまち』」と話す。

●連載

□童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝 小早川隆景(三) 常識人への回帰

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
 それでも可能性は切り開ける【11年目の課題・川俣町山木屋(下)】
 原発事故、続く模索

小学生が消え、帰還者も400人を超えることはないと役場が断言した福島県川俣町の山木屋地区。地域を引っ張っているのは70歳代なので、あと5年もすれば行き詰まるのではないかと不安視されている。若手がいないわけではない。ごく少数ではあるが、全国に注目される取り組みを行っている。避難による倒産の危機から、逆に事業を拡大させた企業もある。「できること」を探せば道はある。

□現場発!自治体の「政策開発」
 流す・貯める・備える取り組みで浸水被害から市民を守る
 ──総合的な治水・雨水対策(宇都宮市)

令和元年東日本台風(台風19号)で甚大な浸水被害を受けた宇都宮市は、総合的な治水・雨水対策に取り組んでいる。基本方針を打ち出して中期と長期の目標を定め、先行事業を進めながら「宇都宮市総合治水・雨水対策推進計画」を策定。国・県や農業者・企業・市民との連携によって「流す」「貯める」「備える」を柱に事業を進めているのが特徴だ。床上浸水ゼロと最大規模降雨時での人的被害の防止を目指している。

□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
 気づきの連鎖で、「改革」から「変革」へ
 ──マニフェスト大賞2021キックオフ研修会

ローカル・マニフェスト推進連盟とマニフェスト大賞実行委員会は5月24日、「改革から変革へ~地域から日本を変える」をテーマにマニフェスト大賞2021キックオフ研修会をオンラインで開催した。前年の同大賞受賞者などが事例を発表。参加者で先進事例を共有化し、「善政競争」を誓い合った。

●Governance Topics

□総合計画の「ありたいまち」実現に向け、施策間連携サミットを開催──兵庫県尼崎市

兵庫県尼崎市は6月1日、「施策間連携サミット(施策間連携の推進に向けた審議会等代表者による懇談会)」を開催した。総合計画が掲げる将来像(「ありたいまち」)の実現に向けて推進している施策間の連携を図るため、分野別マスタープランの審議会等の代表者が集まり、情報共有・意見交換を行う場だ。総合計画の実効性を高める取り組みとして注目される。

□自治体はコロナ禍をどう乗り越えていくのか──第13回日本自治創造学会研究大会

地方議会議員や首長、自治体職員、市民、研究者などが参加する日本自治創造学会(穂坂邦夫理事長)は5月20日・21日の2日間、研究大会をオンラインで開催した。13回目となる今年のテーマは「変革は地方から.コロナを超える地方の知恵」。コロナ禍が地方自治や地方分権にどのような影響を及ぼし、自治体はそれをどう乗り越えていくべきか議論した。

□現場職員などが新型コロナ対策の最前線について報告し議論
 ──自治体学会川崎大会・プレ大会

第35回自治体学会川崎大会のプレ大会「『神奈川・川崎から問う自治の未来』新型コロナウイルス感染症対策の最前線」が5月29日、Zoomによるオンライン形式で行われた。自治体出身の有識者に加え、コロナ対策の第一線で業務を担っている神奈川県と川崎市の職員も報告。自治体コロナ対策の実態と課題について、現場起点で熱い議論が交わされた。

□自治体におけるドローン利活用の可能性を展望──全国自治体ドローン首長サミット

経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は6月4日、「全国自治体ドローン首長サミット」をオンラインで開催した。近年、自治体でもさまざまな分野で導入が進むドローン(無人航空機)の可能性を探ろうというもの。当日は利活用に積極的に取り組む首長が登壇し、事例を紹介しながら今後を展望した。

●Governance Focus

□「田んぼダム」導入で何が得られるのか──熊本県・球磨川洪水から1年/葉上太郎

前線が7月いっぱい本州付近に停滞し続けた昨年の梅雨。各地で豪雨災害が相次ぎ、「7月豪雨」と名付けられた。特に7月3~4日、九州南部で発生した線状降水帯は、熊本県・球磨川で戦後最大の洪水を引き起こし、今もまだ深刻な爪痕を残している。発災から1年。対策の検討が進む。その中で川辺川ダムの建設再開と共に注目されているのが、田んぼダムだ。流域の田んぼに水を貯め、ダムとして活用しようという試みである。

●連載

□ザ・キーノート/清水真人
□自治・分権改革を追う/青山彰久
□新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之
□市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照
□地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚
□“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘
□自治体の防災マネジメント/鍵屋 一
□市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹
□公務職場の人・間・模・様/金子雅臣
□今からはじめる!自治体マーケティング/岩永洋平
□生きづらさの中で/玉木達也
□議会局「軍師」論のススメ/清水克士
□「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭
□From the Cinema その映画から世界が見える
 『東京自転車節』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『自治体内分権と協議会』三浦哲司]

●カラーグラビア

□技・匠/大西暢夫
 養蚕の技を祖父から孫へ
 ──養蚕農家/瀧本亀六さん、慎吾さん(愛媛県大洲市多田)
□わがまちの魅どころ・魅せどころ
 本州最南端からロケット最先端のまちへ
 ~美しい自然と語り継がれる絆を守り、宇宙を目指す──和歌山県串本町
□山・海・暮・人/芥川 仁
 自然の入江を利用した古来の漁師集落──長崎県平戸市野子町
□生業が育む情景~先人の知恵が息づく農業遺産
 紅花生産と染色用加工の伝統技法──山形県最上川流域(山形市、米沢市、酒田市、天童市、山辺町、中山町、河北町、白鷹町)
□人と地域をつなぐ─ご当地愛キャラ/こんぴーくん(香川県琴平町)
□クローズ・アップ
 震災に負けず、コロナにも負けず
 ──福島県川俣町、特産「川俣シャモ」のブランド価値が急上昇

■DATA・BANK2021 自治体の最新動向をコンパクトに紹介!

*「もっと自治力を!広がる自主研修・ネットワーク」は休みます。

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株式会社ぎょうせい

「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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