神戸市 「危機管理システム」の導入─パブリッククラウドを利用した総合防災情報システム(特集:ニューノーマル時代の防災・減災とレジリエンス )

NEW地方自治

2021.09.29

この資料は、地方公共団体情報システム機構発行「月刊 J-LIS」2021年9月号に掲載された記事を使用しております。
なお、使用に当たっては、地方公共団体情報システム機構の承諾のもと使用しております。

神戸市「危機管理システム」の導入─パブリッククラウドを利用した総合防災情報システム
(特集:ニューノーマル時代の防災・減災とレジリエンス)

神戸市危機管理室システム運用係長 山田洋介

(月刊「J-LIS」2021年9月号)

はじめに

 神戸市は兵庫県の南部に位置する、人口約150万人、面積約560km²の政令指定都市です。三宮を中心とした異国情緒溢れる繁華街というイメージを持たれている方も多いと思いますが、海からわずか5km先には六甲山(標高931m)がそびえ立ち、その先には広大な田園風景が広がっているなど、コンパクトに多様な魅力が詰まった街になっています。1868年の開港以来、多様な外国文化を取り入れて独自のスタイルを築いてきました。

 しかし、その神戸市も1995年には、阪神・淡路大震災により壊滅的な被害を受けることとなりました。1月17日午前5時46分に発生した、マグニチュード7.3の直下型地震は、死者6,400余名、負傷者4万3,700余名に上る甚大な人的被害をもたらし、さらに、交通・港湾のインフラ施設、水道・通信・電気等ライフライン施設の機能が著しく損壊しました。

 その後、復興から現在に至るまで神戸市では、常に震災の教訓を生かした災害対応や防災対策を行ってきています。今回、その1つとして、神戸市が新たに導入した総合防災情報システムである危機管理システムを紹介します。


阪神・淡路大震災により壊滅的な被害を受ける

危機管理システムの導入経緯

(1)危機管理システム導入前の課題
 近年、ゲリラ豪雨や線状降水帯などの影響により、時間雨量50mmを超える雨が頻発するなど、短期間に局地的な自然災害が発生するケースが増えてきています。また、近いうちに必ず発生するといわれている南海トラフ地震への備えも必要とされています。

 最近の神戸市の主な災害としては、2018年に大阪府北部地震や台風21号、24号による高潮被害が発生しています。また、2016年には新名神高速道路の橋桁落下事故など、想像できないような都市型災害も発生しているところです。前述のとおり多様な街並みが神戸市の魅力ではありますが、その一方で多様な災害が発生するリスクを抱えています。

 危機対応部署はこうした事象に敏感に反応し、迅速に対応する必要がありますが、これまでの災害対応方法には以下のような課題がありました。

①アナログデータは比較検討が困難
 ホワイトボードに列記した情報を、別の情報(地図等)に移し替えて災害状況を比較検討するためには、元の情報から必要な情報を選択し、整理するなど別の作業が必要になります。すみやかな意思決定を行うためには、こうした情報の選択・整理・比較を容易に行える必要がありました。

②デジタルデータへの手書きができない
 デジタルデータの場合、整理された情報が出力されますが、その情報(地図等)への追記や線で囲うなどの強調表示を行うためには、機器を通した編集が必要となり、手書きのようにスピーディーな書き込みができません。一刻を争う災害時には時間を大きくロスすることになります。

③異なるフォーマットの情報を一元的に集約しにくい
 デジタルデータとアナログデータはフォーマットが異なり、一元的に集約することができません。それぞれを見比べる必要があり、情報の把握に遅れが生じてしまいます。

(2)危機管理システムの導入とその機能
 未曽有の大災害から市民の安全・安心を守るためには、危機対応部署は迅速な情報収集・状況判断・避難情報の発信を行う必要があります。そのオペレーションは複雑であり、多大な労力を必要とするため、これらをサポートする災害情報システムの果たす役割は非常に重要なものとなります。

 そこで、神戸市では新たな災害情報システムとして、クラウド型サービス「危機管理システム」()を導入し、2019年度より運用を開始しました。サーバー基盤を従来のオンプレミス型からパブリッククラウド型に変更することにより、災害時に庁舎などに大きな被害が発生していたとしても、システム運用を継続することが可能となります。また、以下のシステム機能の強化を図ることにより、災害時における職員のオペレーションを大きくサポートします。

①情報共有機能
 従来、災害対策(警戒)本部に集約された災害情報(防災指令、気象情報、河川水位情報、被害情報、避難情報発令状況、避難所開設状況、道路・公共交通状況など)は、ホワイトボードに列記し、その付近の職員で共有されていました。

 危機管理システムでは、これらの情報を自動連携もしくは入力することにより、整理された状態で表示されます。神戸市の各部局では、このシステムを通してすみやかに情報共有が図られます。また、所属間で直接業務の依頼や現場の引き継ぎが行えるため、迅速な災害対応に役立っています。

②意思決定・判断支援機能
 入力された情報は、GISの地図上に表示することができます。避難情報の発令状況や災害情報などを表示することにより、現在の災害状況を直感的に理解することができます。さらに、気象情報やハザードマップなどを重ねて俯瞰的に分析することにより、今後の活用方針や避難情報の発令などについて、意思決定が早期に図られるようにサポートを行います。

③一括情報発信機能
 災害の発生状況や避難情報などを市民に迅速・確実に伝えることは、市民の安全・安心を守るうえで最も重要なことです。神戸市では、これらの情報をホームページ、緊急速報メールはもとより、防災行政無線、防災アプリやメール配信など多様な手段を用いて発信していますが、危機管理システムの一括情報発信機能を活用することにより、最小限の人数で迅速かつ正確に情報発信を行うことができます。

図 危機管理システムの利用画面

映像システムの導入

 災害対策(警戒)本部には、映像システムとして大型ディスプレイ(55型マルチ4台)や卓上型ディスプレイ(65型)を設置し、危機管理システムやその他のシステムから集約された各種情報を任意に表示することができます。卓上型ディスプレイでは地図や災害現場の写真といったデジタルデータに直接書き込むことが可能であり、その情報は映像システムを通じて瞬時に共有することができます。

 また、大型ディスプレイは最大9分割で様々な情報を同時に表示することができ、これらの情報を俯瞰的に表示することにより本部の早期意思決定に大きく寄与することが可能となります。


大型ディスプレイと卓上型ディスプレイ

今後の課題点等

(1)システム運用の習熟
 危機管理システムを活用した災害対応は、これまでの運用とは大きく異なるものになります。神戸市には、2万人以上の職員が在籍していますが、これらの職員に対するシステム運用方法の周知および操作の習熟が大きな課題となります。毎年、全所属を対象とした操作研修を実施していますが、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、集合型研修は実施できませんでした。そこで、Web教材を作成し、職員に公開することによりオンライン型研修を実施し、時間・場所を問わず受講できる形に変更して実施しました。しかし、新しい災害対応の形を定着させるには、まだまだ時間を要すると思われます。

(2)システム間連携
 防災関係部署(消防局・建設局等)との連携を強化するため、それぞれが所有・運用しているシステムとのデータ連携を行い、現場の情報がスムーズに共有されるようにしました。例えば、消防局が出動した土砂災害現場の情報が自動的に危機管理システムに連携され、システムを通して建設局に情報共有されることにより、迅速な復旧対応に繋げていくことができます。これからも各種システムとの連携強化を図り、情報集約・発信の迅速化を図っていく必要があります。

(3)スマートフォン・タブレットの活用
 パブリッククラウドを利用した危機管理システムは、スマートフォンやタブレットを活用することにより、災害対策(警戒)本部からだけでなく、災害現場からの情報をリアルタイムに報告することが可能です。危機管理システムは、スマホ等のアプリも開発されており、簡単な操作で情報を送信することができます。また、アプリでは災害現場の状況だけなく、避難所の開設状況や避難人数なども入力ができます。まだ試行運用の段階ですが、いずれは早期の情報収集という面で大きな力となっていくことが期待されます。これから運用方法などを精査し、本運用に繋げていきたいと考えています。

おわりに

 2019年度のシステム運用開始以降、神戸市では幸いにして大規模な災害等は発生していませんが、風水害対応や訓練などを通して、危機管理システムの運用を実施しています。その都度、システムの新たな運用方法や課題も見つかっているところですが、成果や手応えは十分に感じられています。神戸市では、これからもソフト・ハード面の両方からバージョンアップに努め、危機管理システムを含めあらゆるICTツールを活用しながら、「安全・安心な街こうべ」を維持していきます。

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特集:ニューノーマル時代の防災・減災とレジリエンス

月刊 J-LIS2021年9月号

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