連載 コミットメント ── 他責から自責文化の自治体職員 第3回 組織のマネジメントが問われる時【緒方雅一(熊本県職員)】

地方自治

2021.09.28

 

本記事は、月刊『ガバナンス』2016年8月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
所属等は執筆(掲載)時点のものです。
※本コラムは主に早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会の修了生(マネ友)のメンバーがリレー形式で執筆します。

組織のマネジメントが問われる時

 ドーンと突き上げられた後、大きな横揺れが長く続いた。これまで経験したことのない揺れに「大変なことになった」と直感した。震度7、熊本地震である。真夜中の発災ということもあり、被害状況や避難情報が掴めない。不安と混乱、不透明で不確実な状況の中、震災対応が始まった。時間の経過と共に徐々に明らかになる状況。結果、町人口の3分の1にあたる人が避難し、避難箇所は自主的なものを含め80箇所を超えていた。待ったなしの状況、行政としてどう対応するのか、折り重なって生じる問題に即答が求められる。これまで正解、不正解を繰り返し、この3か月を乗り切ったというのが正直な感想だ。

 どこの自治体にも防災マニュアルがあるが、どんなに想定してもマニュアルにない事態は起きる。その際、目の前の状況が今後どんな事態を生み出すのかを想像し、その対処法を考え、その中から最善と思われる策を判断し実行していく能力が求められる。今回の対応を通して痛切に感じたのは、その想像力、判断力、実行力の組織と人の質の問題である。「100人いる避難所におにぎりが30個届いた」──あなたならどうするだろうか。

 このような答えが一つではないことに答えを出し、納得度の高い解決に導く総合能力とも言える力はどうやったら身に付き、向上するのか。答えは日常の中にあると思う。トップマネジメントにより組織としての判断軸が職員一人ひとりに浸透し、腹落ちしていること。その軸に基づき、個々人が現場の変化に応じて判断し、臨機応変な行動ができること。そんな組織と人の理想とも思えるマネジメントの姿を目指して、普段から取組みを進め、訓練を積んでいるかどうかである。

 「普段」できないことが、「いざ」という時にできるわけがない。「いざ」という時に問われるマネジメントの質。皆さんの組織ではその準備ができているだろうか。

(熊本県職員/緒方雅一)

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