月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2021年3月号 特集:東日本大震災10年──復興の到達点と課題

NEW地方自治

2021.02.26

●特集:東日本大震災10年──復興の到達点と課題

2011年3月11日に発生した東日本大震災。2万2000人以上の死者・行方不明者に加え、東京電力福島第1原発の事故が起きた福島では、いまだに多くの人が避難を続けている。さらに今年2月13日深夜には最大震度6強の地震が宮城県・福島県を襲った。未曽有の大災害から今年3月で丸10年。当初、国が掲げた復興・創生期間が経過し、津波で大きな被害を受けた沿岸部を中心に交通インフラの復旧や土地の造成、住宅の建設などハード面での整備は大きく進んだ。その一方、コミュニティや暮らしの再生、心のケア、さらに人口減少の先鋭化などの課題も指摘されている。また、熊本地震や度重なる豪雨災害、そして新型コロナパンデミックと災禍が続く中、記憶の風化も進む。21年度からは延長された第2期の復興・創生期間が始まるが、その前に10年間の復興の到達点と課題について考えてみたい。
(月刊「ガバナンス」2021年3月)

山﨑 敦(河北新報社報道部震災・遊軍班統括キャップ)

必ずや東北人の手で復興を成し遂げる──東日本大震災10年で問われるもの/山﨑 敦(河北新報社報道部震災・遊軍班統括キャップ)

東日本大震災の発生から10年。多くの遺族の心の時計は、「あの日で止まったまま」だ。「震災で失われた命」「震災で生かされた命」「これから生まれてくる未来の命」という三つの命と真摯に向き合い、「人間の復興」という究極のゴールに向けて考え、問い続けていく。必ずや東北人の手で復興を成し遂げなければならない。

■復興まちづくり事業の成果と課題──「ガバナンス」の観点から/姥浦道生(東北大学大学院教授)

東日本大震災の被災地が、復興空間計画とその実施によって共通して目指したのは、第一には、今回の災害の原因となった津波からの安全性を確保すること、第二には、これを機に地域が有していた従前の空間的課題を認識し解決することである。これら2点を達成することによって、被災地をサステナブルな地域に再生させる。これが復興において共通して目指された姿であり、空間計画が担ったのは、そのための空間づくりであった。

■減災へのまちづくりは進んだか/河田惠昭(関西大学社会安全学部特別任命教授・社会安全研究センター長)

東日本大震災の後、津波防災地域づくりに関する法律に基づく土地区画整理(以下、区画と略称)事業や防災集団移転促進事業などを進めるには、津波防災施設の高さと密接に関係するため両者を整合させなければならない。ところが、復興事業ではL1津波として1896年明治三陸津波を考慮したために過大になってしまい、背後地の区画事業や高台移転地の地盤高決定に採用されてしまった。このようになった理由は、事業費を国費で全額負担するという制度にある。自治体の一部負担が求められていれば、コスト削減だけでなく景観や土地利用、あるいは途中段階での土地利用計画の変更も可能だったはずである。しかも、まちづくりと津波防災施設の経費がまったく独立して算定されたために、“全体最適”な結果とはならなかった。ここでは、震災の復興まちづくりに関する膨大な資料解析と現地調査結果に基づく考察結果の要点を記述しよう。

■大震災の記録・記憶をどう伝承しているのか/佐藤翔輔(東北大学災害科学国際研究所准教授)

東日本大震災では、これまでの災害史上に類を見ないほど、「伝承」への関心が高まっている。ここでは東日本大震災の災害伝承に関する、行政としての動き、施設や活動団体の状況を紹介したい。

■災害ボランティア活動の拡大と再構築/室﨑益輝(兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科長・教授)

東日本大震災は、その被害の広域性、甚大性、深刻性ゆえに、わが国における災害対応や災害支援のあり方を変える大きな転機となった。災害ボランティア活動のあり方も、東日本大震災の支援活動の中で大きく変わった。その変化が、わが国の減災の取り組みや災害救援の取り組みに、どのような影響や課題をあたえたのかを振り返り、今後の災害支援ボランティアのあり方を考える一助にしたい。

■地域防災計画の変遷と課題──命と尊厳を守る計画になるために/鍵屋 一(跡見学園女子大学教授)

地域防災計画の目的は「住民の生命、身体及び財産を災害から保護する」こととなっている。尊厳をキーワードに考えることで、誰一人取り残さない地域防災の実現に近づいていく。尊厳が守られなければ命も危ないのが高齢社会である。そこで、地域防災計画の目的を「住民の生命、尊厳、財産を災害から保護する」に変えることを提案したい。

■災害時における自治体の広域連携はどこまで進んだか/牛山久仁彦(明治大学政治経済学部地域行政学科長・教授)

今後は、災害時における自治体の広域連携の取り組みをより洗練したものとし、予想される今後の激甚災害に対応できるものにしていく必要があろう。それと同時に、こうした取り組みが参考となり、多くの自治体の連携施策として実現されねばなるまい。激甚災害は、人知を越えて深刻な被害をもたらすことが多いが、自治体間のネットワークと絆でこれを乗り越えていかなくてはならない。

■防災教育について考えるための二つの視点──「助ける/助かる」と「に関する/を通した」/矢守克也(京都大学防災研究所巨大災害研究センター教授)

防災教育にはわかりやすいメッセージが必要だとの考えに反対はない。しかし、単純素朴で場当たり的な手法論に終始していてよいのか。防災教育が独り立ちするためには、しっかりした基軸、大袈裟に言えば哲学と理念が必要である。本稿では、さしあたって注意を払うべきだと筆者が考えている二つの基軸、「助ける/助かる」と「に関する/を通した」について述べてみたい。

■厳しさ増す被災者の生活再建──在宅被災者と公営住宅入居者の今/岡田広行(東洋経済新報社記者)

東日本大震災では、防潮堤や高速道路建設など、ハード面での復興事業は大方が完了している。その反面、被災者の生活における復興の格差はむしろ拡大する一方だ。未曾有の大災害から10年が経過しようとする今こそ、被災者の生活実態を把握し、正面から向き合った取り組みが求められている。

【キャリアサポート面】

●キャリサポ特集
新型コロナのリスクアセスメント術

感染の広がりなどが地域ごとに異なる新型コロナウイルス感染症。いまだその勢いは衰えませんが、自治体は自らの地域が置かれた状況を適切に捉えて対策を講じていく必要があります。そこで前提になるのが、リスクアセスメント。コロナのリスクをどこまで的確に評価できるかで、その後の対応は大きく変わってきます。今号ではあらためて新型コロナのリスクアセスメント術について考えてみたいと思います。

■コロナ禍における自治体のリスクアセスメント/高鳥毛敏雄(関西大学社会安全学部・社会安全研究科教授)

感染症対策にリスクアセスメントが導入されたのは、現感染症法が制定されてからである。この感染症法では、リスクアセスメントを重視し、感染症がまん延する前に対処する、いわゆる事前対応型の体制をつくることを求めている。しかし、感染症のパンデミックが発生した折には通常のシステムでは対応が間に合わない。COVID-19にはリアルタイムで対応する体制がつくられている。これを機に感染症対策における自治体の役割の強化が必要である。

■自治体産業医の視点で見る新型コロナのリスクアセスメント/築島 健(札幌市総務局職員部職員健康管理担当部長)

労働衛生の見地から言うと、「リスク」とは、「ハザード」と「確率」の積であるとざっくりと考えられている。事象の「重大性」と「可能性」のマトリクスである。しかしながら今、我々自治体職員が直面している事案のハザード(危険性又は有害性)がどれほどのものになるのか、そしてそれに見舞われる確率がどれほどのものになるのかが分かっている人は、おそらくいないのではないだろうか。

〈インタビュー/東京都八王子市保健所長・渡邉洋子さんに聞く〉
■感染対策は“マスク・手洗い・換気”の基本が何より大切

新型コロナウイルス感染症の第3波に見舞われている日本列島。二度目の緊急事態宣言が一部都府県に出され、予断を許さない状況がなおも続いている。そんななか、コロナ禍にどう向き合っていけば良いのか。発生から1年以上が経った今、リスクアセスメントを視野に、あらためて感染対策の基本や具体的な対応などについて、東京都八王子市健康部長兼保健所長の渡邉洋子さんに聞いた。

●連載

■管理職って面白い! ネガティブ思考/定野 司
■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
 ワーク・ライフ・コミュニティ・バランスの融合とバランス/後藤好邦

■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇
■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/阿久澤由紀子
■AI時代の自治体人事戦略/稲継裕昭
■働き方改革その先へ!人財を育てる“働きがい”改革/高嶋直人
■未来志向で考える自治体職員のキャリアデザイン/堤 直規
■そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室/関根健夫
■独立機動遊軍 円城寺の「先憂後楽」でいこう!/円城寺雄介
■We are ASAGOiNG ! 地域公務員ライフ/馬袋真紀
■ファシリテーションdeコミュニケーション/加留部貴行
■“三方よし”の職場づくり/藤岡靖幸
■誰もが「自分らしく生きる」ことができる街へ/阿部のり子
■地方分権改革と自治体実務──政策法務型思考のススメ/分権型政策法務研究会
■もっと自治力を!広がる自主研修・ネットワーク
 /公務員Shiftプロジェクト(山形県)

●巻頭グラビア

□シリーズ・自治の貌
 渡部 尚・東京都東村山市長
 ベッドタウンから「たのしむらやま」の実現へ

コメディアン・故志村けんさん(名誉市民)の「東村山音頭」で知られる東京都東村山市。2019年4月、「バージョンアップ!東村山3.0」を掲げて4選を果たした渡部尚市長は「寝に帰るだけのベッドタウン」から「住んでよし・働いてよし・楽しんでよし」の三拍子そろった「たのしむらやま」「生活充実都市」の実現を目指す。

渡部尚・東京都東村山市長(59)。ハンセン病患者の療養所「多磨全生園」の敷地内にある石碑「いのちとこころの人権の森宣言」の前にて。特措法・感染症法の改正について「刑事罰ではなくなったことについては、ハンセン病の療養所がある自治体の長としては、より望ましい形に落ち着いたのではないかと思う」と話す。

●連載

□童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝 細川幽斎(十二) アナログ保全にデジタル活用

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
 10年ぶりに酒蔵が帰って来る【福島酒・番外編(下)】
 原発事故、続く模索

津波に呑まれて蔵が壊滅し、原発事故に追われて避難先の山形県長井市で酒造を再開した福島県浪江町の酒蔵が、10年ぶりに帰って来る。もとあった浪江町の請戸地区は、津波の災害危険区域に指定されて住めないが、町中心部の「道の駅なみえ」に併設される醸造施設で、3月から酒造りを始めるのだ。浪江の地酒が復活するだけでなく、酒で復興を後押しするような構想も温めている。

□現場発!自治体の「政策開発」
 福祉関係機関が連携し支援困難者の支援体制を強化
 ──福祉相談窓口連携会議(岐阜市)

地域福祉の重点施策として「困りごとを受け止める体制づくり」を掲げる岐阜市では、多問題を抱える住民への支援に向けて「福祉相談窓口連携会議」を開催している。福祉関係機関等が情報交換を行って密接に連携し、生活困窮やセルフネグレクト、精神疾患、ひきこもり、認知症など複数の問題を抱えた支援困難者の相談支援体制を強化するのがねらいだ。警察署と協定を結び、社会的弱者見守りの連携も図っている。

□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
 コロナ禍にあっても議会は役割を果たすべき
 ──オンラインによる議員フォーラム・研修会

新型コロナの感染拡大防止のため、議員対象の研修会等もオンラインでの開催が相次いでいる。2度目の緊急事態宣言が発出される中で開かれたフォーラム・研修会では、地方議会のニューノーマルやオンラインの活用性などを議論。コロナ禍にあっても議会は役割を果たすことなどが強調された。

●Governance Focus

□漁師はなぜ防潮堤の建設を拒んだのか
 ──東日本大震災から10年。岩手県釜石市唐丹町「花露辺」の団結と覚悟/葉上太郎

東日本大震災から10年が経ち、津波被災地の光景は、巨大な防潮堤の整備で一変した。だが、中には建設を拒んだ地区もある。岩手県釡石市唐丹(とうに)町の花露辺(けろべ)だ。9割の世帯が漁師なので、集落から海が見えず、作業場がなくなるのを嫌った。それだけではない。「コンクリート構造物では自然に勝てない。むしろ逃げよう」という、海に生きる人間の選択だった。集落全体が一隻の船に乗る運命共同体のような存在だからこそ、このような決断ができた。

●Governance Topics

□コロナ禍の中で「フレイル」予防をどう進めるか/「フレイルの日」記念講演会2021

スマートウエルネスコミュニティ(SWC)協議会、日本老年学会、日本老年医学会、日本サルコペニア・フレイル学会、大阪府高石市は2月1日、高石市内で「コロナに負けるな!フレイルの日記念講演会2021」を開催した。昨年1月に同日が「フレイルの日」に登録されたことを受けたもので、コロナ禍による健康二次被害も危惧されるなか、フレイル予防をどう進めていくか議論した。

□圏域制度めぐり実態やあり方などを議論/日本弁護士連合会・シンポジウム

日本弁護士連合会(日弁連)は1月26日、シンポジウム「人口減少時代の地方公共団体のあり方を考える。多様性と自主性を尊重した広域連携を目指して~」をオンラインで開催した。昨年6月の地方制度調査会(地制調)の答申や、定住自立圏や連携中枢都市圏の取り組みなどを手掛かりに、自治体の広域連携の実態やあり方などについて、学識者、基礎自治体の首長、弁護士が多岐にわたって議論を交わした。

□コミュニケーションの多様性と合理的配慮を考える/第6回ふじのくにニッポンの縁側フォーラム

社会福祉の現場にかかわる人たちが集まり、語り合う恒例の「ふじのくにニッポンの縁側フォーラム」が1月23日に開催された。今回は会場の人数を限定したうえで、オンラインでも配信。静岡県外からのゲストもリモートで参加し、テーマとなったコミュニケーションを考えるのにふさわしい新たなスタイルで行われた。

●連載

□ザ・キーノート/清水真人
□自治・分権改革を追う/青山彰久
□新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之
□自治体のダウンスケーリング戦略/大杉 覚
□市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照
□“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘
□自治体の防災マネジメント/鍵屋 一
□市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹
□公務職場の人・間・模・様/金子雅臣
□生きづらさの中で/玉木達也
□議会局「軍師」論のススメ/清水克士
□「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭
□リーダーズ・ライブラリ
 [著者に訊く!/『ネットワーク活動でひろがる公務員ライフ』後藤好邦]

●カラーグラビア

□技・匠/大西暢夫
 自然界の営みを最大限生かした組み合わせ
 ──名塩和紙職人・谷野雅信さん(兵庫県西宮市)
□わがまちの魅どころ・魅せどころ/宮城県東松島市
 あの日を忘れず持続的で未来志向のまちへ
□山・海・暮・人/芥川 仁
 家は離れとっても、気持ちはすぐ隣──徳島県名東郡佐那河内村
□土木写真部が行く~暮らしを支える土木構造物
 災害により運命が変わった石橋~諫早眼鏡橋
□人と地域をつなぐ─ご当地愛キャラ/たかたのゆめちゃん(岩手県陸前高田市)
□クローズ・アップ
 それでも、灯はともる──岩手県釜石市、「呑ん兵衛横丁」のその後

■DATA・BANK2021

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株式会社ぎょうせい

「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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