議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第61回 「地方が国を変える」とはどういうことか?

地方自治

2022.02.10

本記事は、月刊『ガバナンス』2021年4月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

 コロナ禍が未だに収束しないなかで、新年度が始まる。20年度は議会の世界でも、様々なイレギュラー対応を迫られたが、非常事態だからこそ、高いハードルを越えられた一面もあった。特に議会のオンライン化などは、平常時にはないスピード感で変革が実現した。

 だが逆説的に言えば、外圧なしには変わらない一面も否定できない。

■変革を阻害するものは何か

 筆者が社会人として駆け出しの頃、上司から言われた言葉が記憶に残っている。その主旨は「書いてあるとおりにこなすだけの仕事なら学生アルバイトでもできる。正職員としての真価は、できないと思えることを何とかするところにある」というものであった。

 それは決して無茶をやれという意味ではない。課題に直面して思考停止するのではなく、解決策を模索するところからが、担当職員のウデの見せ所であり、本命の仕事だとの教示だと理解している。

 だが、議会(事務)局では、やらない理由を並べ、放置することは執行機関よりも容易である。新たなことは議会の合意形成がされていないため、行動を起こさなければ多くの事は現状維持となる。

 そのうえ、議会運営における「先例主義」に代表される根強い前例踏襲意識や、未だに払拭されていない中央に対する従属意識が、新たな試みを阻害するからだ。

■地方議会は国会のアナロジーか

 今般の本会議等の欠席事由に産休を加える議論を例にとると、標準会議規則(以下「標準例」)を所管する3議長会(注)では、「産前6週、産後8週」と期間明示する標準例の改正を行った。

注 全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会。

 大津市議会では2015年に「産前8週、産後8週」と、会議規程を改正している。そのため標準例を上回る基準にした根拠等について、多くの質問を受けた。その根底には、内容の妥当性よりも、標準例と異なる定めをすること自体に対する畏れが感じられた。

 また議会の世界においては、国と地方の関係における主従意識が根強く残っており、これが地方議会を国会のアナロジーとして捉えることにつながっている。

 標準例改正過程では、「『国が対応していないのに地方がやるのか』という声があるのは事実」と議長会幹部が認めた話が報道されていた。その潜在意識には、国会よりも改革を先行させることを良く思わない主従意識がある。一方で「地方に広まれば、国の規定を変更することにつながる可能性はある」と、地方議会が国を変えることへの期待も表明している。

■地方が国を変えるために

 地方議会人に求められる意識を、北川正恭・早稲田大学名誉教授は「地方議会が地方を変え、地方が国を変える」と総括しているが、コロナ禍中では、国全体が中央集権体質に逆戻りしている感が否めない。

 だが、法的根拠がない国会への忖度を、できない理由として市民には説明できないだろう。

 同様の意識は、オンライン本会議の導入に関してもあるのではないか。導入に憲法改正が必要とされる国会に忖度して、地方議会で必要となる地方自治法改正が棚上げされているとの話も報道されている。

 もちろんそれが全てとは思わないが、オンライン本会議の実現が、「地方が国を変えた」先例として語られるよう、私的にも尽力したい。

 

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

第62回「続・「地方が国を変える」とはどういうことか?」は2022年2月24日(木)公開予定です。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士 しみず・かつし
 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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