最新法律ウオッチング

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最新法律ウオッチング―政治分野男女共同参画推進法(2018年5月23日公布・施行)

自治体法務

2019.08.30

最新法律ウオッチング 第94回 政治分野男女共同参画推進法
(『月刊 地方財務』2018年7月号)

政治分野における男女共同参画の推進に関する法律(概要)

 2018年の通常国会において、政治分野における男女共同参画の推進に関する法律が成立した。
 国会議員に占める女性の割合は、衆議院では約1割(465人中47人)、参議院では約2割(242人中50人)となっている。また、地方議議員に占める女性の割合は約1割、都道府県知事については約6%(47人中3人)、市町村長については約1.6%(1733人中27人)となっている(17年末)。
 このように政治分野への女性の参画が進まない中、社会の対等な構成員である男女が公選による公職等にある者として国や地方公共団体における政策の立案・決定に共同して参画する機会が確保されること(政治分野における男女共同参画)が、その立案・決定において多様な国民の意見が的確に反映されるために一層重要となるとして、16年には、議員立法で2種類の「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律案」が衆議院に提出された。これらの案は、男女の候補者ができる限り「同数」となることを目指すとするか、男女の候補者の数ができる限り「均等」となることを目指すとするかの違いがあった。
 両案についての調整を経て、本年の通常国会で、一本化された法案が議員立法で衆議院に提出され、成立した。

政治分野男女共同参画推進法(詳細)

基本原則
 政治分野における男女共同参画の推進は、衆議院議員、参議院議員、地方公共団体の議会の議員の選挙において、政党その他の政治団体の候補者の選定の自由、候補者の立候補の自由その他の政治活動の自由を確保しつつ、男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指して行われるものとした。
 また、政治分野における男女共同参画の推進は、自らの意思によって公選による公職等としての活動に参画する者、参画しようとする者に対するこれらの者の間における交流の機会の積極的な提供やその活用を通じ、かつ、性別による固定的な役割分担等を反映した社会における制度や慣行が政治分野における男女共同参画の推進に対して及ぼす影響に配慮して、男女が、その性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮できるようにすることを旨として、行われなければならないこととした。
 さらに、政治分野における男女共同参画の推進は、男女が、その性別にかかわりなく、相互の協力と社会の支援の下に、公選による公職等としての活動と家庭生活との円滑かつ継続的な両立が可能となることを旨として、行われなければならないこととした。

○国等の責務

 国や地方公共団体は、前述の基本原則にのっとり、政党その他の政治団体の政治活動の自由や選挙の公正を確保しつつ、政治分野における男女共同参画の推進に関して必要な施策を策定し、これを実施するよう努めるものとした。
 また、政党その他の政治団体は、この基本原則にのっとり、政治分野における男女共同参画の推進に関し、当該政党その他の政治団体に所属する男女のそれぞれの公職の候補者の数について目標を定める等、自主的に取り組むよう努めるものとした。

○実態の調査等

 国や地方公共団体は、政治分野における男女共同参画の推進に関し、その取組に関する実態の調査や情報の収集、啓発活動、環境整備、人材の育成・活用等を行い、あるいは努めるものとした。
 そして、国は、この実態の調査や情報の収集等の結果を踏まえ、必要があると認めるときは、政治分野における男女共同参画の推進のために必要な法制上、財政上の措置その他の措置を講ずるものとした。

○施行期日等

 この法律は、公布の日(2018年5月23日)に施行された。

国会論議等

 国会では、法案についての質疑は行われなかったが、一部の議員からは、政治分野における女性の参画を拡大するには、選挙制度全体の見直しが必要であり、内閣府男女共同参画会議が2011年に取りまとめた報告は、小選挙区より中選挙区、大選挙区制や比例代表制の下での方が多様な民意が反映されやすく、女性議員の割合が高くなると指摘されており、国民の多様な意思が正確に反映される選挙制度への抜本的な改革が必要との意見が表明された。
 また、参議院内閣委員会では、内閣府は、首長、閣僚、国会議員、政党における女性の割合、議会の両立支援体制の状況、政党の女性候補者の状況、女性の政治参画への障壁等に関する実態調査等を行い、総務省は、地方公共団体の議会の議員、長の男女別人数、国政選挙における立候補届出時の男女別人数の調査結果を提供するとともに、地方公共団体に対する当該調査等への協力の依頼を行うこと等とする4項目の附帯決議が行われた。

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