時事問題の税法学 第38回 高級外車

NEW地方自治

2019.09.02

時事問題の税法学 第38回

高級外車
『税』2018年12月号

ステイタスの表現

 中小企業の経営者の乗用車として、ドイツ車に代表される高級外車を社有車として購入することに躊躇した時代があった。税務調査で否認されたという具体的な話は聞いたことはなかったと思うが、調査官から皮肉のひとつも聞かされたという話はあった。こんな外車アレルギーもバブル経済の到来と共に霧散した。同時に外車という表現も、あまり使われなくなった気もする。

 その頃、保育園の送迎に外車を利用していたら園側から苦情が出たため、送迎専用の軽自動車を購入したという顧客がいた。他の保護者からの抗議があったらしい。最近では、市街地にある保育園には、高級車で送迎する保護者もいて、ママ友、パパ友の間で話題になると聞くが、夫婦共働きなら、当然、高級車を購入維持する所得はあるだろう。東海道の宿場町で城下町のふるさとにある菩提寺の、中学の先輩でもある住職が、併設する幼稚園から他の保育園に転園させる保護者がいると話す。理由を聞くと、高級車のローン支払いのために母親がパートに出るためだといっていたと住職は嘆く。若者の車離れがいわれるようになって久しいが、まだまだステイタスとしての車の存在は、時代を経ても変わっていない。

富裕層の納税意識

 ただ法人が、高級外車を社有車にすることは、世間体はさておき、決算対策に使われることは今も昔も変わらない。価格が高いため損金に算入できる減価償却費の額も大きくなる。さらに高級外車は中古車としての価値も下がらないから、買換えなどの際の下取価格も大きい。ただ、減価償却費が多額だった分だけ残存簿価も低くなるから、下取価格と簿価の差額は大きい。固定資産売却益が生じ、課税所得が膨らむことになる。節税効果をどの時点で捉えるかは難しいが、社有車であるなら、維持管理費用も損金となる。

 個人事業主の場合は、事業の用に供した高級外車及び維持管理費用の経費性判断は、論争に値するが、法人と同様に下取価格と簿価の差額利益が課税対象となる。この場合、事業所得又は不動産所得ではなく、譲渡所得とされる。

 つまり法人はもちろん個人であっても事業用資産としての車は、会計帳簿に計上している以上、その取得や売却・除却についての経緯は記録に残る。いうまでもなくナンバープレートにより所有者の名義は登録されている。

 ところが、「高級外車の売却益隠し続出、歯科医や社長ら多数」という記事が目についた(読売新聞10月22日)。「フェラーリなど高級外車の売却益を巡り、約20の法人と個人が東京国税局や関東信越国税局などから相次いで所得隠しや申告漏れを指摘されていた……。所得隠しは2017年までの数年間で計約8億円。申告漏れだけを指摘されたケースも含めると総額は25億円を超える。背景には、富裕層の納税意識の低さが浮かび上がる」。「関係者によると、所得隠しや申告漏れを指摘された法人は、社有車を転売した東京都武蔵野市の化粧品販売会社のほか、中野区や川崎市の自動車販売会社など約10社。個人は目黒区の自動車輸出入会社の元社長や港区の歯科医、茨城県の呉服店社長など十数人に上る」。「申告義務があると知らなかった」とか「現金取引を要求した」というような明らかに課税逃れを予期するような意図的な発言が続く。

 フェラーリのような超高級外車となると事業用資産というより投資である。法人であるなら、社有車といっても簿外資産として処理していたのかもしれない。ただ高額な購入資金が法人から支出されているはずであるから、帳簿上、その使途について記載内容が興味深い。個人の場合は、簿外であるなら事業所得等の計算には痕跡は残らないだろう。フェラーリを事業資産の車と考えると混乱するが、書画骨董や美術品の類いを購入する行為に置き換えれば理解しやすい。まさしく着実な投資といえる。

 利益と課税はセットであることを投資家は周知のことだが、それを誤魔化そうとするのは、やはり投資家としても素人ということになる。

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