読者の皆さんに聴く!地方財務、私の活用法(2)

地方自治

2021.05.13

800冊の歴史。いざというときもバックナンバーが頼りになります
兵庫県企画財政局長 法田 尚己

『地方財務』2021年2月号

 『地方財務』800号刊行おめでとうございます。昭和から平成、令和と永きにわたり地方財政の幅広い情報を毎月届けていただいていることに敬意と感謝申し上げます。

 地方財政対策をはじめ、地方交付税、地方債、決算分析、地方財政に関連する法務や判例、政策評価、全国各地の特色ある取り組みなど様々なテーマについて、国の第一線の担当者や幹部、学識者、各分野の専門家、地方公共団体の実務担当者等による、それぞれの視点からの記事はいつも勉強になります。また最近も「今月の視点」で県立芸術文化センターが、「小さな村の挑戦記」では養父市が紹介されるなど、兵庫県のPRにもつながっており大変ありがたく思っております。

当時の経緯や背景を語るタイムカプセル

 私にとって貴誌は、初めて地方財政を担当した頃は入門書であり、その後も参考書として活用させていただいています。『事業別 地方債実務ハンドブック』は今も大変重宝しています。しかし、とりわけ印象深いのは貴誌のバックナンバーです。

 26年前の阪神・淡路大震災が発生した直後、当時私がいた地方課財政係のタスクは、被害状況のとりまとめに加え、災害救助、災害復旧、復興事業等にかかる財政制度を大急ぎで分野横断的に一覧整理して被災市町へ伝え復旧復興を早急に進める支援をすること、また、被災地の実態と合わない制度の改善や制度創設について市町と連携して国等に要望することでした。インターネットで簡単に検索できる時代ではなく、誰かに聞くか過去の資料を探してくることが仕事の基本ツールだった時代。発生したのは都市直下型の大震災。第一に参考にすべきは関東大震災だが、話を聞ける前任者も、思うような資料も無い。地方財政業務2年目の私は、過去の同規模の災害時の対応や制度がわかる資料を探してこいと夜中に指示を受け、自家発電機による非常灯だけが頼りのなか議会図書室の書庫に行き着きました。

 そのとき助けてもらったのが貴誌のバックナンバーでした。昭和34年の伊勢湾台風や昭和36年の第2室戸台風と災害対策基本法制定から雲仙普賢岳の災害対応に至るまで、その時々にどのような制度が使われ、また制度がどのような経緯、議論を経て創設、改正されたのか、国庫負担金や補助、地方債、交付税制度等の対象と対象外経費の線引き、単価設定の考え方がわかりそうなものを片っ端から持ち帰り自席に山積みにして作業しました。貴誌の記事には、国や地方公共団体担当者の個人的見解やここだけの話的な情報もあり、またそういうのが特にありがたく、当時の議論の経緯や背景、推移を知るのに助かりました。

 今回の話をいただいて、久しぶりに議会図書室の書庫に行きました。当時の記憶がある辺りのバックナンバーを開くと伊勢湾台風の翌年、昭和35年4月号(№71)の自治庁財政局長奥野誠亮さんの「昭和35年度地方財政の問題点」が目に入りました。改めてみると新たな発見がある。800冊の歴史の重みを感じました。そして同時に思ったことがあります。無責任な提案になると承知のうえで申し上げると、これまで掲載された様々な珠玉の論文等から、これぞ名物論文といえるものを選び取りまとめて発刊してはどうでしょうか。実現すれば個人的にも大変ありがたいです。

 貴誌は本県議会図書室では永久保存。次は1000号を目指し、益々発展されることをこころから祈念申し上げます。

 

法田 尚己
兵庫県企画財政局長:800冊の歴史。いざというときもバックナンバーが頼りになります。

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