医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律

地方自治

2020.12.01

医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律―健康保険法 高齢者の医療の確保に関する法律 国民健康保険法 船員保険法 私立学校教職員共済法 国家公務員共済組合法 地方公務員等共済組合法 例規整備

○医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律(オンライン資格確認の導入に関する改正関係)〔例規整備〕

<はじめに>

 令和元年5月22日に公布された医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律(令和元年法律第9号。以下「改正法」といいます。)のうち「オンライン資格確認の導入」に関する部分が令和2年10月1日から施行されています。

 「オンライン資格確認」とは、個人番号カードのICチップ又は被保険者証(健康保険証)の記号・番号等によりオンラインで医療保険の被保険者資格を確認することをいいます。「オンライン資格確認の導入」の施行期日は、改正法附則第1条第4号に規定する公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日(=令和2年10月1日)とされていますが、個人番号カードによるオンライン資格確認の運用のスタートは、令和3年3月の予定とされており、現在運用開始に向けた準備が進められています。

<改正概要>

 「オンライン資格確認の導入」に関する法律改正の概要は、次のとおりです。

(1)オンライン資格確認の導入

①保険医療機関等で療養の給付等を受ける場合の被保険者資格の確認について、個人番号カードによるオンライン資格確認を導入する。

②国、保険者、保険医療機関等の関係者は、個人番号カードによるオンライン資格確認等の手続きの電子化により、医療保険事務が円滑に実施されるよう、協力するものとする。

③オンライン資格確認の導入に向けた医療機関・薬局の初期導入経費を補助するため医療情報化支援基金を創設する。

(2)被保険者記号・番号の個人単位化、告知要求制限の創設

①被保険者記号・番号について、世帯単位にかえて個人単位(被保険者又は被扶養者ごと)に定めることとする。
これにより、保険者を異動しても個々人として資格管理が可能となる。
※ 75才以上の方の被保険者番号は現在も個人単位なので変わらない。

②プライバシー保護の観点から、健康保険事業とこれに関連する事務以外に、被保険者記号・番号の告知を要求することを制限する。
※ 告知要求制限の内容(基礎年金番号、個人番号にも同様の措置あり)

①健康保険事業とこれに関連する事務以外に、被保険者記号・番号の告知を要求することを制限する。

②健康保険事業とこれに関連する事務以外で、業として、被保険者記号・番号の告知を要求する、又はデータベースを構成することを制限する。
これらに違反した場合の勧告・命令、立入検査、罰則を設ける。

出典:「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律の成立について」第118回社会保障審議会医療保険部会資料1-1
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000517324.pdf

 医療保険制度に関しては、医療保険の種類ごとに根拠法律が異なっていますので、オンライン資格確認の導入は、健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律、国民健康保険法、船員保険法、私立学校教職員共済法、国家公務員共済組合法及び地方公務員等共済組合法の7つの医療保険関係法律の一部改正により行われます。これにより、保険医療機関等で療養の給付等を受ける場合の被保険者資格の確認は、「個人番号カードによるオンライン資格確認(=電子資格確認)」により行うことができようになりますが、引き続き従来の「被保険者証の提出(保険薬局にあっては、被保険者証又は処方箋の提出)の方法(=その他厚生労働省令・主務省令で定める方法)」により行うことも認められます。

 また、オンライン資格確認の導入に伴い、被保険者番号が個人単位化されたことから、プライバシー保護のため、健康保険事業とこれに関連する事務以外に、被保険者等記号・番号及び保険者番号の告知を要求することを制限する「告知要求制限」の制度が設けられています。「告知要求制限」に関しては、厚生労働省から被保険者等記号・番号等の告知要求が可能なケースについて見解[1]が示されているほか、国の医療保険制度担当課の事務連絡[2]では、本人確認等を目的とした医療保険の被保険者証(被保険者証には被保険者等記号・番号等が記載されています。)の利用について、次の留意事項が示されています。自治体事務においては、住民から被保険者証の提示を受ける場面も少なくないと思われますので、これらの内容を踏まえ、適切な取扱いが行われるよう、各自治体で対応を御検討ください。

「被保険者記号・番号の告知要求制限について」第124回社会保障審議会医療保険部会資料3
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000590697.pdf

「医療保険の被保険者等記号・番号等の告知要求制限について」令和2年7月8日付け総務省自治行政局公務員部福利課、財務省主計局給与共済課、文部科学省高等教育局私学部私学行政課、厚生労働省保険局保険課、厚生労働省保険局国民健康保険課、厚生労働省保険局高齢者医療課事務連絡]

2 本人確認等のために被保険者証の提示等を求める際の留意事項について

  1に掲げる記号・番号等[3]については、各医療保険制度における被保険者証に記載がなされている。今後も、本人確認等のために被保険者証の提示を求めることは可能であるが、告知要求制限に抵触しないよう、以下の点に留意いただくようお願いする。

・被保険者証の提示を受ける場合には、当該被保険者証の被保険者等記号・番号等を書き写すことのないようにすること。また、当該被保険者証の写しをとる際には、当該写しの被保険者等記号・番号等を復元できない程度にマスキングを施すこと。

・被保険者証の写しの送付を受けることにより本人確認等を行う場合には、あらかじめ申請者や顧客等に対し被保険者等記号・番号等にマスキングを施すよう求め、マスキングを施された写しの送付を受けること。また、被保険者等記号・番号等にマスキングが施されていない写しを受けた場合には、当該写しの提供を受けた者においてマスキングを施すこと。

・被保険者等記号・番号等の告知を求めているかのような説明を行わないこと。例えば、ホームページ等において、「被保険者証の記号・番号が記載された面の写しを送付してください」といった記載を行わないよう留意すること。

出典:前掲事務連絡「医療保険の被保険者等記号・番号等の告知要求制限について」

 オンライン資格確認の導入関係の健康保険法の改正内容は、次のとおりです(他の6法律の改正内容については、健康保険法の改正と同様の内容のため本稿末尾に掲げます。)。

健康保険法第194条の2第1項に規定する「被保険者等記号・番号等」(保険者番号及び被保険者等記号・番号)などの告知要求制限の対象となる被保険者等記号・番号等が列記されています。

■健康保険法の改正内容(オンライン資格確認の導入関係)

赤字:改正前の字句 青字:改正後の字句

健康保険法

(定義)

第三条 略

2~10 略

11 この法律において「保険者番号」とは、厚生労働大臣が健康保険事業において保険者を識別するための番号として、保険者ごとに定めるものをいう。

12 この法律において「被保険者等記号・番号」とは、保険者が被保険者又は被扶養者の資格を管理するための記号、番号その他の符号として、被保険者又は被扶養者ごとに定めるものをいう。

13 この法律において「電子資格確認」とは、保険医療機関等(第六十三条第三項各号に掲げる病院若しくは診療所又は薬局をいう。以下同じ。)から療養を受けようとする者又は第八十八条第一項に規定する指定訪問看護事業者から同項に規定する指定訪問看護を受けようとする者が、保険者に対し、個人番号カード(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第七項に規定する個人番号カードをいう。)に記録された利用者証明用電子証明書(電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号)第二十二条第一項に規定する利用者証明用電子証明書をいう。)を送信する方法により、被保険者又は被扶養者の資格に係る情報(保険給付に係る費用の請求に必要な情報を含む。)の照会を行い、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により、保険者から回答を受けて当該情報を当該保険医療機関等又は指定訪問看護事業者に提供し、当該保険医療機関等又は指定訪問看護事業者から被保険者又は被扶養者であることの確認を受けることをいう。

(療養の給付)

第六十三条 被保険者の疾病又は負傷に関しては、次に掲げる療養の給付を行う。

 一 診察

 二 薬剤又は治療材料の支給

 三 処置、手術その他の治療

 四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護

 五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護

2 略

3 第一項の給付を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる病院若しくは診療所又は薬局のうち、自己の選定するものから、電子資格確認その他厚生労働省令で定める方法(以下「電子資格確認等」という。)により、被保険者であることの確認を受け、同項の給付を受けるものとする。

一 厚生労働大臣の指定を受けた病院若しくは診療所(第六十五条の規定により病床の全部又は一部を除いて指定を受けたときは、その除外された病床を除く。以下「保険医療機関」という。)又は薬局(以下「保険薬局」という。)

二 特定の保険者が管掌する被保険者に対して診療又は調剤を行う病院若しくは診療所又は薬局であって、当該保険者が指定したもの

三 健康保険組合である保険者が開設する病院若しくは診療所又は薬局

4~7 略

(入院時食事療養費)

第八十五条 被保険者(特定長期入院被保険者を除く。以下この条において同じ。)が、厚生労働省令で定めるところにより、第六十三条第三項各号に掲げる病院又は診療所のうち自己の選定するものから、電子資格確認等により、被保険者であることの確認を受け、同条第一項第五号に掲げる療養の給付と併せて受けた食事療養に要した費用について、入院時食事療養費を支給する。

2~4 略

5 被保険者が第六十三条第三項第一号(特定長期入院被保険者を除く。以下この条において同じ。)が第六十三条第三項第一号又は第二号に掲げる病院又は診療所から食事療養を受けたときは、保険者は、その被保険者が当該病院又は診療所に支払うべき食事療養に要した費用について、入院時食事療養費として被保険者に対し支給すべき額の限度において、被保険者に代わり、当該病院又は診療所に支払うことができる。

6~9 略

(入院時生活療養費)

第八十五条の二 特定長期入院被保険者が、厚生労働省令で定めるところにより、第六十三条第三項各号に掲げる病院又は診療所のうち自己の選定するものから、電子資格確認等により、被保険者であることの確認を受け、同条第一項第五号に掲げる療養の給付と併せて受けた生活療養に要した費用について、入院時生活療養費を支給する。

2~5 略

(保険外併用療養費)

第八十六条 被保険者が、厚生労働省令で定めるところにより、第六十三条第三項各号に掲げる病院若しくは診療所又は薬局(以下「保険医療機関等」と総称する。)保険医療機関等のうち自己の選定するものから、電子資格確認等により、被保険者であることの確認を受け、評価療養、患者申出療養又は選定療養を受けたときは、その療養に要した費用について、保険外併用療養費を支給する。

2~5 略

(訪問看護療養費)

第八十八条 略

2 略

3 指定訪問看護を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、自己の選定する指定訪問看護事業者から、電子資格確認等により、被保険者であることの確認を受け、当該指定訪問看護を受けるものとする。

4~13 略

(被保険者等記号・番号等の利用制限等)

第百九十四条の二 厚生労働大臣、保険者、保険医療機関等、指定訪問看護事業者その他の健康保険事業又は当該事業に関連する事務の遂行のため保険者番号及び被保険者等記号・番号(以下この条において「被保険者等記号・番号等」という。)を利用する者として厚生労働省令で定める者(以下この条において「厚生労働大臣等」という。)は、当該事業又は事務の遂行のため必要がある場合を除き、何人に対しても、その者又はその者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を告知することを求めてはならない。

2 厚生労働大臣等以外の者は、健康保険事業又は当該事業に関連する事務の遂行のため被保険者等記号・番号等の利用が特に必要な場合として厚生労働省令で定める場合を除き、何人に対しても、その者又はその者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を告知することを求めてはならない。

3 何人も、次に掲げる場合を除き、その者が業として行う行為に関し、その者に対し売買、貸借、雇用その他の契約(以下この項において「契約」という。)の申込みをしようとする者若しくは申込みをする者又はその者と契約の締結をした者に対し、当該者又は当該者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を告知することを求めてはならない。

一 厚生労働大臣等が、第一項に規定する場合に、被保険者等記号・番号等を告知することを求めるとき。

二 厚生労働大臣等以外の者が、前項に規定する厚生労働省令で定める場合に、被保険者等記号・番号等を告知することを求めるとき。

4 何人も、次に掲げる場合を除き、業として、被保険者等記号・番号等の記録されたデータベース(その者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を含む情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。)であって、当該データベースに記録された情報が他に提供されることが予定されているもの(以下この項において「提供データベース」という。)を構成してはならない。

一 厚生労働大臣等が、第一項に規定する場合に、提供データベースを構成するとき。

二 厚生労働大臣等以外の者が、第二項に規定する厚生労働省令で定める場合に、提供データベースを構成するとき。

5 厚生労働大臣は、前二項の規定に違反する行為が行われた場合において、当該行為をした者が更に反復してこれらの規定に違反する行為をするおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、当該行為を中止することを勧告し、又は当該行為が中止されることを確保するために必要な措置を講ずることを勧告することができる。

6 厚生労働大臣は、前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その者に対し、期限を定めて、当該勧告に従うべきことを命ずることができる。

(報告及び検査)

第百九十四条の三 厚生労働大臣は、前条第五項及び第六項の規定による措置に関し必要があると認めるときは、その必要と認められる範囲内において、同条第三項若しくは第四項の規定に違反していると認めるに足りる相当の理由がある者に対し、必要な事項に関し報告を求め、又は当該職員に当該者の事務所若しくは事業所に立ち入って質問させ、若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 第七条の三十八第二項の規定は前項の規定による質問又は検査について、同条第三項の規定は前項の規定による権限について、それぞれ準用する。

(基金等への事務の委託)

第二百五条の四 保険者は、第七十六条第五項(第八十五条第九項、第八十五条の二第五項、第八十六条第四項、第百十条第七項及び第百四十九条において準用する場合を含む。第一号において同じ。)及び第八十八条第十一項(第百十一条第三項及び第百四十九条において準用する場合を含む。同号において同じ。)に規定する事務のほか、次に掲げる事務を基金又は国保連合会に委託することができる。

一・二 略

三 第四章の規定による保険給付及び第五章第三節の規定による日雇特例被保険者に係る保険給付の支給、第六章の規定による保健事業及び福祉事業の実施、第百五十五条の規定による保険料の徴収その他の厚生労働省令で定める事務に係る被保険者等に係る情報の利用又は提供に関する事務

2 略

(関係者の連携及び協力)

第二百五条の五 国、協会及び健康保険組合並びに保険医療機関等その他の関係者は、電子資格確認の仕組みの導入その他手続における情報通信の技術の利用の推進により、医療保険各法等(高齢者の医療の確保に関する法律第七条第一項に規定する医療保険各法及び高齢者の医療の確保に関する法律をいう。)の規定により行われる事務が円滑に実施されるよう、相互に連携を図りながら協力するものとする。

第二百七条の四 第百九十四条の二第六項の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第二百十三条の三 正当な理由がなくて第百九十四条の三第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による当該職員の質問に対して、正当な理由がなくて答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは正当な理由がなくて同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三十万円以下の罰金に処する。

第二百十三条の四第二百十三条の三 第二百七条の三の罪は、日本国外において同条の罪を犯した者にも適用する。

第二百十四条 法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの(以下この条において「人格のない社団等」という。)を含む。以下この項において同じ。)の代表者(人格のない社団等の管理人を含む。)又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、第二百七条の三、第二百八条又はから第二百八条まで、第二百十三条の二又は第二百十三条の三の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

2 略

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