議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第17回 議会改革の「定番アイテム」は必要不可欠なのか?

NEW地方自治

2020.07.23

議会局「軍師」論のススメ
第17回 議会改革の「定番アイテム」は必要不可欠なのか? 清水 克士
月刊「ガバナンス」2017年8月号

*写真は琵琶湖南湖地域の遠景。

 他議会で意見交換すると「議会基本条例がないから議会改革が進まない」との嘆きを聞くことがよくある。それは意識の根底に「議会基本条例制定=議会改革」との方程式が刷り込まれているからではないだろうか。

 大津市議会基本条例は、人が替わっても改革を後退させないために、主に実現した改革事項を定めた「改革先行型」である。もちろん、議会基本条例の制定意義はそれだけではないが、制定前までにほとんどの改革を実現した事実からは、決して条例がなければ進まないというものではないと断言できる。

 したがって、何のために議会基本条例を制定しようとするのか、あえて作らないことも含めて議論すべきと思うが、議会基本条例制定が常識化すると、もう一歩手前に立ち返るという発想ができなくなる。何が課題かの起点を見誤ると、ときとして手段が目的化し、対応の方向性も大きくズレることになる。

■住民参加の本質は何か?

 同様に議会報告会についても、参加者の減少化対策についての見解を求められることがよくある。

 そこでは、議会報告会をしなければならない、との発想が起点となっている。たしかに議会への住民参加手法としては、わかりやすく実現しやすいが、法的根拠があるわけではなく、実施義務があるものでもない。

 一方で地方自治法には、住民参加による広聴制度として公聴会・参考人制度が規定されている。だが、本会議での公聴会に関しては、2012年の法改正後もほとんど開催例はない。

 しかしながら、議事機関の広聴活動は本来、会期日程中に公式会議録を残し、議会での議論に直接参加できるものであるべきではなかろうか。もちろん、法定制度に限定する理由はないが、その活用には関心を示さず、独自制度にばかり注力する姿は歪に見える。例えれば、学生が本分である学業をおろそかにして、課外活動にばかり熱中しているようなものだとは言えないだろうか。

 執行機関と比しても、法定制度の活用を最初から考えず、独自制度に偏重して課題解決を図ろうとするのは特異である。そう考えると、議会報告会の場の盛り上げ方、参加者を増やす方法などの技術向上を課題と捉える前に、それが本当に最適手法なのか、原点に立ち返って検証することが必要ではないか。

■普遍的な最適解などあるのか?

 我が国の地方議会制度は単一制度であるが、その運用実態は地域性や人口規模などの諸条件によって大きく異なる。住民参加の最適解も、全ての議会で通用するものがあると考える方が不自然であろう。

 そして、私は特に中核市以上の規模の議会への住民参加のあり方としては、公聴会こそ最適解ではないかと考えている。重要事項であるからこそ議案や請願として議論されているのであり、その議論に直接加わる機会を創造することこそが、議事機関の本質に最も適うと考えるからだ。

 確かに既存の会期日程に公聴会を導入することには、実務上の課題も多い。だが、既に大津市議会局では、議会版実行計画「大津市議会ミッションロードマップ」を追加改正したうえで正式に議会としての導入議論が始められるよう、事務的研究を始めている。そして公聴会がごく普通に議事日程に組み込まれたときには、議会への住民参加の常識は変わるだろう、と私は予感している。

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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