3ステップで学ぶ 自治体SDGs

笹谷秀光

3ステップで学ぶ 自治体SDGs STEP③ 事例で見るまちづくり 第7章 「スーパーシティ」構想でSDGsスーパー未来都市

NEWぎょうせいの本

2020.12.01

3ステップで学ぶ 自治体SDGs STEP③ 事例で見るまちづくり
第7章 「スーパーシティ」構想でSDGsスーパー未来都市

笹谷 秀光(ささや・ひでみつ)
『3ステップで学ぶ 自治体SDGs STEP③ 事例で見るまちづくり』2020年11月

スーパーシティとは何か

 未来まちづくり関連での最新の政策として、いわゆる「スーパーシティ構想」と呼ばれる、国家戦略特別区域法の一部を改正する法律が成立しました(2020年6月3日に法律第34号として公布)。

 これまでスマートシティや近未来技術実証特区など様々なシティ政策がありましたが、また新たに屋上屋を重ねるのかといった見方もあろうかと思います。しかしながら、これらはエネルギー・交通などの個別分野での取り組み、個別の最先端技術の実証などにとどまっていました。

 政府によれば、「スーパーシティ」は、これらとは「次元」が異なります。異次元の政策ということで、「まるごと未来都市をつくる」ことを目指すものです。いわば、部分最適ではなく「全体最適」をねらっています。

 また、この構想は、SDGsの実現にも貢献するので、ロゴマークにはSDGsのロゴも入っています。「J-Techchallenges SDGs」がキャッチフレーズです。

 この構想は、今後の進み方によっては、これまでの様々な政策の集大成になり、SDGs未来都市の成果を踏まえ一気に世界に冠たるスーパーシティが生まれる可能性があります。

 今回のこの政策は「特区」制度を使う事により規制緩和と絡めているところが最大の特色です。これまでいろいろな政策を打っても、様々な規制により、対応できなかった部分に対処するものです。

 この構想の特性を理解した、感度の良い自治体等はすでに手を上げており、現在56団体からアイデアが出ています。すでに先陣争いが始まっているわけです。思い返せば2年がかりでこの法案がようやく成立したのが今年でした。

 通信分野では5Gが今年から実装が始まるということですので、様々な要素がシンクロするこの政策は極めて重要です。

スーパーシティと地方創生SDGs

 このスーパーシティ構想は、今後の日本のSociety5.0や地方創生SDGsに大きな影響を与えます。

 「スーパーシティ」は、「まるごと未来都市をつくる」ことを目指し、次のような総合的なメニューを用意。スーパーシティの基本的なコンセプトは以下の通りです。

① これまでのような自動走行や再生可能エネルギーなど個別分野限定の実証実験的な取り組みではなく、例えば決済の完全キャッシュレス化、行政手続のワンスオンリー化、遠隔教育や遠隔医療、自動走行の域内フル活用など、幅広く生活全般をカバーする取り組みであること

② 一時的な実証実験ではなくて、2030年頃に実現され得る「ありたき未来」の生活の先行実現に向けて、暮らしと社会に実装する取り組みであること

③ さらに、供給者や技術者目線ではなくて、住民の目線でより良い暮らしの実現を図るものであること

という、この3要素を合わせ持ったものであると定義しており、これを「まるごと未来都市」と呼んでいます。

 この「まるごと未来都市」の実現を支えるのが、大胆な規制改革です。遠隔教育、遠隔医療、電子通貨システムなど、AIやビッグデータを効果的に活用した先進的サービスを実現しようとすると、どうしても、各分野の規制改革を、同時一体的に進めなければなりません。そういう意味では、スーパーシティは、「まるごと規制改革都市」とも言えるかもしれません。

 ここで2030年を目標にしているところがSDGsを意識しており、かつ、未来の「あるべき姿」を描き、そこから今やるべきことを考えるというバックキャスティング手法が応用されています。予算措置としては各省庁の予算活用や地方交付税交付金の活用に加え、データ連携基盤整備として3億円が計上されています(令和2年度予算)。

 世界各国でも、未来都市の設計に向けて、取り組みが進んでいます。政府では2つに分けて説明しています。

・白地から未来都市を作り上げるグリーンフィールド型の取り組み(例:雄安、トロントなど)

・既存の都市を造り変えようとするブラウンフィールド型の取り組み(例:ドバイ、シンガポールなど)

 しかし、中国やドバイなどで革新的な取り組みが先行しつつある一方、トロントでは、住民の不安による混乱も生じているとのことです。現時点では、未来都市はまだ実現していないので、日本で、世界に先駆けて「スーパーシティ」を実現し、世界にモデルを示すことを目指しています。

 前述のとおり、政府がアイデアを公募したところ、56の団体から提出され、すでに先陣争いが始まっています。一部を以下に挙げます(令和2年6月1日現在。傍線の自治体はSDGs未来都市)。

 この政策もSDGsを理解できなければ置いていかれる代表例となるでしょう。

1 新規開発型
 【完全新規】     鎌倉市、牧之原市、東郷町、和歌山市 他

 【既存の計画の拡充】 多気町、大阪府・大阪市

2 既在都市型
 【自治体の一部】   愛知県、㈱南紀白浜エアポート 他
茨城県・つくば市、京都府、東広島市恩納村、㈱JSDハイセル池田市、池田市、河内長野市、仙北市、千葉市、木更津市、市原市、藤沢市、掛川市岡崎市、犬山市、幸田町、神戸市、福山市、下関市、北九州市、㈱ラック

 【自治体の全域】   鎌倉市加賀市、茅野市、豊田市、福知山市、矢巾町、境町、前橋市、新城市 他
更別村、会津若松市、富山市浜松市、西条市、大刀洗町 他

 【中山間地域等】   更別村、豊根村、養父市、美郷町、神石高原町、伊方町、美波町、多良木町、大崎町

「困った」を解決する│ニュー・ノーマル時代のまちづくり

 内閣府では、スーパーシティについて連携強化するためのオープンラボを設けています。「地域の困った」を最先端のJ─TECで解決する、というのがスーパーシティの考え方です。

 「地域の困った」というところが素晴らしいですね。まさに社会課題解決型のSDGs的思考は「社会の困った」からスタートします。漠然と何かSDGsで生んでいこうというのは無理です。困ったを解決するところから、つまり技術力と創造性とイノベーションの企業の力を使うのです(詳しくは、2019年2月14日国家戦略特別区域諮問会議「「スーパーシティ」構想の実現に向けた今後の取組について」資料を参照)。

 いま社会は新型コロナウイルスのパンデミックにより「困って」います。日本社会もニュー・ノーマルの模索中にあります。「三密」防止のための対策も今のところかなりアナログですが、これからは徹底したICT技術の活用とDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要になると思います。

 ニュー・ノーマルの模索の最中に成立したこの法律がポストコロナのニュー・ノーマル時代のまちづくりに役立つ、起爆剤になってほしいと思います。

●執筆者Profile
笹谷 秀光(ささや・ひでみつ)
1976年東京大学法学部卒業。 77年農林省(現農林水産省)入省。 中山間地域活性化推進室長等を歴任、2005年環境省大臣官房審議官、06年農林水産省大臣官房審議官、07年関東森林管理局長を経て08年退官。同年(株)伊藤園入社。取締役、常務執行役員を経て19年4月退職。2020年4月より千葉商科大学基盤教育機構・教授。現在、社会情報大学院大学客員教授、(株)日経BPコンサルティング・シニアコンサルタント、PwC Japanグループ顧問、グレートワークス(株)顧問。日本経営倫理学会理事、グローバルビジネス学会理事、NPO法人サステナビリティ日本フォーラム理事、宮崎県小林市「こばやしPR大使」、未来まちづくりフォーラム2019・2020・2021実行委員長。著書に、『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版)ほか。企業や自治体等でSDGsに関するコンサルタント、アドバイザー、講演・研修講師として幅広く活躍中。

■著者公式サイト─発信型三方良し─
 https://csrsdg.com/

■「SDGs」レポート(Facebookページ)
 https://www.facebook.com/sasaya.machiten/

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千葉商科大学基盤教育機構・教授

1976年東京大学法学部卒業。 77年農林省(現農林水産省)入省。 中山間地域活性化推進室長等を歴任、2005年環境省大臣官房審議官、06年農林水産省大臣官房審議官、07年関東森林管理局長を経て08年退官。同年(株)伊藤園入社。取締役、常務執行役員を経て19年4月退職。2020年4月より千葉商科大学基盤教育機構・教授。現在、社会情報大学院大学客員教授、(株)日経BPコンサルティング・シニアコンサルタント、PwC Japanグループ顧問、グレートワークス(株)顧問。日本経営倫理学会理事、グローバルビジネス学会理事、NPO法人サステナビリティ日本フォーラム理事、宮崎県小林市「こばやしPR大使」、未来まちづくりフォーラム2019・2020・2021実行委員長。著書に、『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版)ほか。企業や自治体等でSDGsに関するコンサルタント、アドバイザー、講演・研修講師として幅広く活躍中。

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