【例規整備】公職選挙法の一部を改正する法律 令和2年6月12日法律第45号

地方自治

2020.11.06

<例規整備>

 今回の改正は、町村議会議員選挙及び町村長選挙に係るものですので、町村において例規整備の検討が必要となります。

 ここでは、「改正の主な内容」に記載した項目ごとに、町村の例規への影響について解説します。

1 町村議会議員選挙及び町村長選挙における選挙公営の拡大

 改正法による改正後の公職選挙法第141条第8項(選挙運動用自動車)、同法第142条第11項(選挙運動用ビラ)及び同法第143条第15項(選挙運動用ポスター)においては、それぞれ「条例で定めるところにより...無料とすることができる」とされています。したがって、町村議会議員選挙及び町村長選挙における(1)選挙運動用自動車の使用、(2)選挙運動用ビラの作成及び(3)選挙運動用ポスターの作成を選挙公営の対象とする場合には、条例でその旨を定める必要があります。

 これまで、町村においては、(1)から(3)までの選挙公営が認められていなかったため、既存の条例は存在しないことから、新規に条例を制定することとなるものと思われます。既に市において(1)から(3)までを選挙公営の対象とする条例が制定されていますので、新規に条例を制定する場合は、市の事例を参考にすることが考えられます。市においては、大別して、「〇〇市議会議員及び〇〇市長の選挙における選挙運動の公営に関する条例」という形で一つの条例で(1)から(3)までについて包括的に規定する事例と、「〇〇市議会議員及び〇〇市長の選挙における選挙運動用自動車の使用に関する条例」、「〇〇市議会議員及び〇〇市長の選挙における選挙運動用ビラの作成の公営に関する条例」、「〇〇市議会議員及び〇〇市長の選挙における選挙運動用ポスターの作成の公営に関する条例」等の形で複数の条例に(1)から(3)までの内容を分けて規定する事例があります。

 以下では、一つの条例で包括的に規定している市の事例を基に規定案を作成する場合の検討例を紹介いたします。なお、これと異なる内容とすることを否定するものではありません。規定内容につきましては、当該町村の御方針に沿うものとなるよう御検討ください。

検討例 摘要

 〇〇町・村議会議員及び〇〇町・村長の選挙における選挙運動の公営に関する条例

(趣旨)
第1条 この条例は、公職選挙法(昭和25年法律第100号。以下「法」という。)第141条第8項、第142条第11項及び第143条第15項の規定により、〇〇町・村議会議員及び〇〇町・村長の選挙における法第141条第1項の自動車(以下「選挙運動用自動車」という。)の使用、法第142条第1項第6号第142条第1項第7号のビラ(以下「選挙運動用ビラ」という。)の作成及び法第143条第1項第5号のポスター(以下「選挙運動用ポスター」という。)の作成の公営に関して必要な事項を定めるものとする。(選挙運動用自動車の使用の公営)

赤字部分は、引用法の条項を市に関する規定から町村に関する規定に変更した部分です。以下あります。

(選挙運動用自動車の使用の公営)
第2条 〇〇町・村議会議員及び〇〇町・村長の選挙における候補者(以下「候補者」という。)は、64,500円に、その者につき法第86条の4第1項、第2項、第5項、第6項又は第8項の規定による候補者の届出のあった日から当該選挙の期日の前日(法第100条第4項の規定により投票を行わないこととなった場合には、同条第5項の規定による告示の日。第4条第2号イにおいて同じ。)までの日数を乗じて得た金額の範囲内で、選挙運動用自動車を無料で使用することができる。ただし、当該候補者に係る供託物が法第93条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)の規定により町・村に帰属することとならない場合に限る。(選挙運動用自動車の使用の契約締結の届出)

令第109条の4第4項に規定する金額

(選挙運動用自動車の使用の契約締結の届出)
第3条 前条の規定の適用を受けようとする者は、道路運送法(昭和26年法律第183号)第3条第1号ハに規定する一般乗用旅客自動車運送事業を経営する者(以下「一般乗用旅客自動車運送事業者」という。)その他の者(次条第2号に規定する契約を締結する場合には、当該適用を受けようとする者と生計を一にする親族のうち、当該契約に係る業務を業として行う者以外の者を除く。)との間において選挙運動用自動車の使用に関し有償契約を締結し、〇〇町・村選挙管理委員会(以下「委員会」という。)が定めるところにより、その旨を委員会に届け出なければならない。

委員会が定めるところにより」としている事項については、下位例規や内規において別に定めることが想定されています。以下あります。

(選挙運動用自動車の使用の公費負担額及び支払手続)
第4条 町・村は、候補者(前条の規定による届出をした者に限る。)が同条の契約に基づき当該契約の相手方である一般乗用旅客自動車運送事業者その他の者(以下「一般乗用旅客自動車運送事業者等」という。)に支払うべき金額のうち、次の各号に掲げる区分に応じ当該各号に定める金額を、第2条ただし書に規定する要件に該当する場合に限り、当該一般乗用旅客自動車運送事業者等からの請求に基づき、当該一般乗用旅客自動車運送事業者等に対し支払う。

 

(1)当該契約が一般乗用旅客自動車運送事業者との運送契約(以下「一般運送契約」という。)である場合 当該選挙運動用自動車(同一の日において一般運送契約により2台以上の選挙運動用自動車が使用される場合には、当該候補者が指定するいずれか1台の選挙運動用自動車に限る。)のそれぞれにつき、選挙運動用自動車として使用された各日についてその使用に対し支払うべき金額(当該金額が64,500円を超える場合には、64,500円)の合計金額

令第109条の4第2項第1号に規定する金額

(2)当該契約が一般運送契約以外の契約である場合次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に定める金額

 

ア 当該契約が選挙運動用自動車の借入契約である場合当該選挙運動用自動車(同一の日において選挙運動用自動車の借入契約により2台以上の選挙運動用自動車が使用される場合には、当該候補者が指定するいずれか1台の選挙運動用自動車に限る。)のそれぞれにつき、選挙運動用自動車として使用された各日についてその使用に対し支払うべき金額(当該金額が15,800円を超える場合には、15,800円)の合計金額

令第109条の4第2項第2号イに規定する金額

イ 当該契約が選挙運動用自動車の燃料の供給に関する契約である場合当該契約に基づき当該選挙運動用自動車に供給した燃料の代金(当該選挙運動用自動車(これに代わり使用される他の選挙運動用自動車を含む。)が既に前条の規定による届出に係る契約に基づき供給を受けた燃料の代金と合算して、7,560円に当該候補者につき法第86条の4第1項、第2項、第5項、第6項又は第8項の規定による候補者の規定による届出のあった日から当該選挙の期日の前日までの日数を乗じて得た金額に達するまでの部分の金額であることにつき、委員会が定めるところにより、当該候補者からの申請に基づき、委員会が確認したものに限る。)

令第109条の4第2項第2号ロに規定する金額

ウ 当該契約が選挙運動用自動車の運転手の雇用に関する契約である場合当該選挙運動用自動車の運転手(同一の日において2人以上の選挙運動用自動車の運転手が雇用される場合には、当該候補者が指定するいずれか1人の運転手に限る。)のそれぞれにつき、選挙運動用自動車の運転業務に従事した各日についてその勤務に対し支払うべき報酬の額(当該報酬の額が12,500円を超える場合には、12,500円)の合計金額

令第109条の4第2項第2号ハに規定する金額

(契約の指定)
第5条 前条の場合において、選挙運動用自動車の使用に関し同一の日につき同条第1号に定める契約と同条第2号に定める契約とのいずれもが締結されているときは、当該日については、これらの号に定める契約のうち当該候補者が指定するいずれか一の号に定める契約のみが締結されているものとみなして、同条の規定を適用する。

 

(選挙運動用ビラの作成の公営)
第6条 候補者は、第8条に規定する1枚当たりの作成単価の限度額に選挙運動用ビラの作成枚数(当該作成枚数が選挙の区分に応じ法第142条第1項第6号法第142条第1項第7号に定める枚数を超える場合には、同号に定める枚数)を乗じて得た金額の範囲内で、選挙運動用ビラを無料で作成することができる。この場合においては、第2条ただし書の規定を準用する。

 

(選挙運動用ビラの作成の契約締結の届出)
第7条 前条の規定の適用を受けようとする者は、ビラの作成を業とする者との間において選挙運動用ビラの作成に関し有償契約を締結し、委員会が定めるところにより、その旨を委員会に届け出なければならない。

 

(選挙運動用ビラの作成の公費負担額及び支払手続)
第8条 町・村は、候補者(前条の規定による届出をした者に限る。)が同条の契約に基づき当該契約の相手方であるビラの作成を業とする者に支払うべき金額のうち、当該契約に基づき作成された選挙運動用ビラの1枚当たりの作成単価(当該作成単価が7円51銭を超える場合には、7円51銭)に当該選挙運動用ビラの作成枚数(当該候補者を通じて、選挙の区分に応じ法第142条第1項第6号法第142条第1項第7号に定める枚数の範囲内のものであることにつき、委員会が定めるところにより、当該候補者からの申請に基づき、委員会が確認したものに限る。)を乗じて得た金額(1円未満の端数がある場合には、その端数は、1円とする。)を、第6条後段において準用する第2条ただし書に規定する要件に該当する場合に限り、当該ビラの作成を業とする者からの請求に基づき、当該ビラの作成を業とする者に対し支払う。

令第109条の8において読み替えて準用する令第109条の7第2項第1号に規定する金額(同号の「7円71銭」を令第109条の8により「7円51銭」と読替え)

(選挙運動用ポスターの作成の公営)
第9条 候補者は、第11条に規定する1枚当たりの作成単価の限度額に選挙運動用ポスターの作成枚数(当該作成枚数が当該選挙のポスター掲示場の数に相当する数を超える場合には、当該相当する数)を乗じて得た金額の範囲内で、選挙運動用ポスターを無料で作成することができる。この場合においては、第2条ただし書の規定を準用する。

 

(選挙運動用ポスターの作成の契約締結の届出)
第10条 前条の規定の適用を受けようとする者は、ポスターの作成を業とする者との間において選挙運動用ポスターの作成に関し有償契約を締結し、委員会が定めるところにより、その旨を委員会に届け出なければならない。

 

(選挙運動用ポスターの作成の公費負担額及び支払手続)
第11条 町・村は、候補者(前条の規定による届出をした者に限る。)が同条の契約に基づき当該契約の相手方であるポスターの作成を業とする者に支払うべき金額のうち、当該契約に基づき作成された選挙運動用ポスターの1枚当たりの作成単価(当該作成単価が525円6銭に当該選挙のポスター掲示場の数を乗じて得た金額に310,500円を加えた金額を当該選挙のポスター掲示場の数で除して得た金額(1円未満の端数がある場合には、その端数は、1円とする。)を超える場合には、当該除して得た金額)に当該選挙運動用ポスターの作成枚数(当該候補者を通じて、当該選挙のポスター掲示場の数に相当する数の範囲内のものであることにつき、委員会が定めるところにより、当該候補者からの申請に基づき、委員会が確認したものに限る。)を乗じて得た金額を、第9条後段において準用する第2条ただし書に規定する要件に該当する場合に限り、当該ポスターの作成を業とする者からの請求に基づき、当該ポスターの作成を業とする者に対し支払う。

令第110条の4第2項第1号イに規定する金額
令第110条の4第2項第1号に規定する金額

(委任)
第12条 この条例の施行に関し必要な事項は、委員会が別に定める。
附則

 附則は、条建てとすることも考えられます。

(施行期日)
1 この条例は、公布の日公職選挙法の一部を改正する法律(令和2年法律第45号)の施行の日から施行する。

(適用区分)
2 この条例は、この条例の施行の日以後その期日を告示される選挙について適用し、この条例の施行の日の前日までにその期日を告示された選挙については、なお従前の例による。

 改正法の施行前に条例を制定公布し、改正法の施行日に選挙公営を導入する場合の施行期日は、「公職選挙法の一部を改正する法律(令和2年法律第45号)の施行の日」又は「令和2年12月12日」(※改正法の施行期日の具体的な日付)とすることが考えられます。改正法の施行後に選挙公営を導入することとする場合は、政策に応じた施行期日を規定します。

 適用区分については、改正法附則を参考にしています。

 複数の条例で個別の事項に分けて規定する場合は、上記の事例から個別の事項に係る規定を抜き出して別々の条例で定めることとなります。

 また、条例の制定に伴い、届出や申請に関する様式など、選挙公営に係る手続等について定めることが考えられます。

 市においては、「〇〇市議会議員及び〇〇市長の選挙における選挙運動の公営に関する条例」の施行に関し必要な手続等について、「〇〇市議会議員及び〇〇市長の選挙における選挙運動の公営に関する規程」等を定めている事例が多数あります。条例の制定に伴い、必要に応じて規則等の下位例規を定めることを御検討ください。

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