公務員のためのハラスメント“ゼロ”の教科書

高嶋直人

【新刊】公務員に特化した『公務員のためのハラスメント“ ゼロ” の教科書』(高嶋直人/著)―「環境型」セクハラとは?

地方自治

2020.08.07

「環境型」セクハラとは?
単行本公務員のためのハラスメント“ゼロ”の教科書

(株)ぎょうせいは令和2年7月、公務員に特化したパワーハラスメントの専門実務書『公務員のためのハラスメント“ ゼロ” の教科書』(高嶋直人/著)を刊行しました。パワーハラスメントの防止を企業に義務付けるパワハラ防止法(労働施策総合推進法)が令和2年6月、施行されたことを受けたものです。ここでは、『公務員のためのハラスメント“ ゼロ” の教科書』から内容の一部を抜粋してご紹介します。(編集部)

●「対価型」との違い

 「環境型」セクハラの定義は、次のとおりです。

 「職員の意に反する性的な言動により職員の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその職員が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」

 「対価型」セクハラとの違いは、「対価型」セクハラが行為者の性的言動と被害者の不利益が一対一の関係で直接結びつけられるのに対して、「環境型」セクハラは直接的な関連が無い場合も含まれる点です。「対価型」「環境型」という言葉は定着し、今もセクハラはこの二つで分類されています。

●今の時代に合わせて考える

 「環境型」セクハラの典型例は、「日常的に身体的な接触をとる(後ろから肩を揉むなど)」、「卑猥な冗談をいう(下ネタなど)」です。セクハラの法規制が始まった当初は、公務職場の中には、ヌードや際どい水着のポスターやカレンダーが壁に貼られているところも少なくありませんでした(今では信じられない話ですが、社会一般にそのようなものが広く流通していたのも事実です)。そのため、今も指針などの表現にはそのようなものが例示されています。例えば、カラオケでのデュエットやチークダンスの強要という例示です。しかし、セクハラとなる行為がそれらに限定されると理解してはいけません。そもそも、今の世代の人にはそもそもピンとこないと思いますが、今で言えばSNS上で繋がることを強要するとか、過激な画像を送信することなどが該当すると思われます。セクハラ指針に書かれているものは、あくまで例示であると捉え、性的な言動か否か、不快であるか否かで慎重に判断することが求められます(もっと言えば、テレワークが一般化してきた現在、「就業環境」を考える際にセクハラを物理的な職場や身体的な接触場面だけに限定すること自体に限界があり、正しくアップデートすべき時期にきていると考えられます)。

 

Point
・「環境型」セクハラは直接的な関連が無い場合も含まれる点において、「対価型」セクハラと異なる。
・指針に書かれている典型例はあくまで例示であると捉えて、時代の変化を踏まえて判断することが求められる。

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令和2年6月施行「パワハラ防止法」にいち早く対応!公務員向けハラスメント防止マニュアルの決定版

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2020/06 発売

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高嶋直人

高嶋直人

人事院 公務員研修所客員教授

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。人事院公務員研修所主任教授、財務省財務総合政策研究所研修部長などを経て現職。人事院、財務省、国土交通省、自治大学校、市町村アカデミー、マッセOSAKA、東北自治研修所、全国の自治体などにおいて「マネジメント」「リーダーシップ」「働き方改革」「ハラスメント防止」等の研修講師を務める。月刊『ガバナンス』に「人財を育てる“働きがい”改革」連載中。

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