行政大事典

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【最新行政大事典】用語集―地方財政とは

NEW地方自治

2020.08.08

【最新行政大事典】用語集―地方財政

はじめに

 『WEB LINK 最新行政大事典 全4巻セット』(ぎょうせい)は膨大な行政用語の中から、とくにマスコミ等で頻繁に使用されるものや、新たに登場したテーマ、法令などから選りすぐった約3,000の重要語句を収録。現場に精通した執筆陣がこれらの行政用語を簡潔にわかりやすく解説します。ここでは、「第1巻 第7章 財政・予算」から、「地方財政」を抜粋して、ご紹介したいと思います。

1 地方財政の意義

 地方財政とは、法律的に「地方公共団体の財政をいう。」と定義づけされている(地財1)。一般的には、国の財政に対比して用いられることが多い。

 地方財政は、国の財政のように単一団体の財政ではなく、複数の地方公共団体の総称である。地方公共団体には、都道府県、市町村の普通地方公共団体と特別区、地方公共団体の組合、財産区、地方開発事業団の特別地方公共団体とがあるが、国の財政と対比して、地方財政が議論される場合は、前者の普通地方公共団体にかかることが多い。平成30年3月31日現在における普通地方公共団体の数(特別区、財産区、地方開発事業団等を除く。)は、47都道府県、791市、927町村の合計1,765団体である。

2 国と地方の財政関係

 地方財政の沿革をたどると、戦後の新しい地方自治制度の下で、昭和23年に地方財政法が制定され、国と地方公共団体、あるいは地方公共団体相互間の経費負担区分の明確化などの努力が払われたが、地方財源の強化については成果があがっていない。

 地方財政制度は、地方交付税、地方譲与税、国庫支出金等の財源移転を通じて、その運用、制度において国の財政制度と密接な関係にある。地方財政法に地方財政運営の基本が定められており(地財2)、地方公共団体は、地方財政につき健全な運営に努め、国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行ってはならないこととされている。一方、国は地方財政の自主的・健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自主性を損ない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならないこととされている。

 平成29年度決算における国民の税負担の状況は、国税62.4兆円(全体の61.5%)、地方税39.1兆円(全体の38.5%)となっている。国税の一部は、地方交付税、地方譲与税、国庫支出金等として、地方へ財源移転する結果、国・地方を通じた財政の最終支出の状況は、国の歳出(純計ベース)71.0兆円(全体の42.2%)、地方の歳出(純計ベース)97.3兆円(全体の57.8%)となり、国対地方の比率はほぼ4対6となっている。このように財源移転を通じ、住民に身近な地方公共団体が最終的に行政サービスを担うとともに、地方分権改革の流れとともに地方財政の役割は、今後拡大する傾向にある。この点は、国と地方の国内総生産(GDP)に占める割合の観点からも、同様のことがいえる。ちなみに、国民経済計算上地方政府の国内総生産に占める割合は10.8%であるのに対し、中央政府は4.0%となっており、地方政府の占める割合は国の2.7倍になっている。

3 地方財政の現状

 近年の地方財政の現状をみると、慢性的な財源不足に陥っていることである。ちなみに、長引く経済不況を反映し地方税収等が低迷する中、平成6年度以降財源不足額は拡大し、平成15年度には17.4兆円まで増加した。この平成15年度以降年々減少し、平成19年度には4.7兆円まで縮小したものの、平成20年度には7.5兆円と再び増加し、平成22年度は18.2兆円にまで急増した。そのため財源不足額の地方財政計画に対する割合は、22.2%となり最高となった。地方債依存度も、平成22年度は16.4%と大幅に増加した。しかし、その後地方財源不足額は平成23年度以降年々減少し、平成28年度では5.6兆円と減少し、そのため地方財政計画に対する財源不足額の割合は6.5%、地方債依存度が10.3%となった。しかし、平成29年度では財源不足は7.0兆円と増加し、地方財政計画に占める割合も8.0%、地方債依存度も10.6%と、いずれも増加したものの、以降減少し平成31年度では財源不足額は4.4兆円と減少し、地方財政計画に占める割合は4.9%、地方債依存度は10.5%となる見込みである。

 一方、地方財政の借入金残高の状況をみると、地方税収の低迷はもとより、減税による減収補てん、総合景気対策等のために実施した地方債の増発、臨時財政対策債の増加などより、地方財政全体の借入金残高は累積してきたが、近年横ばいの状況が続いている。平成31年度末では194兆円となり、対GDP比34.2%になると見込まれている。平成3年度と比較すると2.8倍、124兆円の増となっている。こうした中、臨時財政対策債は、平成13年度末に発行されて以来年々増加し、平成31年度末には54兆円になると見込まれている。

4 地方財政の課題

 最近の地方財政をめぐる課題として、次の点があげられる。

 第一に、人づくり革命の実現に向けた取組である。具体的には幼児教育の無償化、待機児童の解消、高等教育の無償化、介護人材の処遇改善、保育士の処遇改善、高等教育の無償化などに向け、所要の安定財源を確保する必要がある。

 第二に、狩猟・農耕・工業・情報に続く「第5の社会」を意味するSociety5.0時代の地方の実現である。安心して暮せる持続可能な地域社会を構築していくための地域力強化プランを推進する必要がある。

 第三に、地方創生の推進である。地方公共団体の先駆的な取り組みを支援し、地域経済の好循環を確立することである。そのためにも地域の人材、組織の育成強化が重要である。また、地域と地域の連携を図り新たな圏域づくりも求められる。

 第四に、近年の気候変動が及ぼす気象の急激な変化や自然災害の頻発化・激甚化に対応するため地域の安全・安心を確保することである。緊急対策事業として、「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」を進め、所要の地方財政措置を講じる必要がある。

 第五に、高度経済成長期に大量に建設された、公共施設等が更新時期を迎えることによる対応である。そのため維持補修・更新財源を確保するほか、人口減少、少子高齢化等に伴う地域における、公共施設等の適正管理に取り組む必要がある。

 第六に、財政マネジメントの強化等である。地方公会計制度の整備と活用の促進を図るほか、地方財政の「見える化」を推進することにより、より分かりやすい財政情報の公開を目指すことである。地方公営企業等の経営改革に取組むため、取組み状況の「見える化」や、公営企業会計適用拡大に向けた新たなロードマップを推進することが肝要である。

 第七に、社会保障・税の一体改革である。急速に進展する高齢社会に対応するため、社会保障・税の一体改革が進められている。改革の財源として、消費税率の引き上げ分が全額社会保障の充実と安定化に充てられることとされた。

 第八に、地方分権改革の推進である。地方に対する事務・権限の移譲を進めるとともに、義務付け・枠付けの見直しなど、規制緩和に係る取組を推進する。地方税財源の充実確保策として、東京などの大都市から財源を国に吸い上げ地方に再配分するのではなく、地方独自の新たな財源を確保する必要がある。

 [関連項目]公共施設等の適正管理の推進

*『最新行政大事典』2019年10月より。(NPO法人 フォーラム自治研究 三島康雄)
(有償版は本文に加え、法令へのリンク機能があります)

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