自治体の防災マネジメント

鍵屋 一

自治体の防災マネジメント[10]避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン検討会(2)

NEW地方自治

2020.05.13

自治体の防災マネジメント―地域の魅力増進と防災力向上の両立をめざして
[10]避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン検討会(2)

鍵屋 一(かぎや・はじめ)
月刊『ガバナンス』2017年1月号) 

 前回に続き、10月27日の内閣府「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドラインに関する検討会」(以下、「検討会」という)の検討内容について報告する。なお、私のコメントは《》で表記する。

第1回検討会の論点

【論点1】避難勧告等を受け取る立場にたった情報提供の在り方について

○災害切迫時の注意喚起の仕組み

・台風接近時等、大雨の予報等がなされた段階から、災害の危険が去るまでの間、その時点の状況、避難勧告等発令の今後の見通し、発令時にとるべき避難行動等について、住民や要配慮者利用施設の管理者に対して繰り返し伝達すべきではないか。
《危険情報は一度だけでは住民に十分には伝わらない。繰り返し、畳み込んで知らせることで効果が高まる。》

・避難勧告等を発令する際には、その対象者と、とるべき避難行動をあわせて伝達することを、必須とすべきではないか。
《課題と解決策をセットで伝えることで、住民が行動しやすくなる。》

・「避難準備情報」という名称では、「要配慮者が避難を開始すべき状況にある」ということがわかりにくいため、その観点を加えた名称に変更すべきではないか。例えば「避難準備・要配慮者避難開始情報」等が考えられるのではないか。
《人には「正常性バイアス」がある。これは、自分にとって不都合な情報は無視するか過小評価しようとする傾向だ。「避難準備」と言うと、この正常性バイアスにより、まだ避難しなくてもいいと思う可能性が高いのではないか。準備だけでいいんだと。そこで、避難準備という言葉を使わずに、例えば「高齢者等避難情報」のようなわかりやすい言葉で伝えたほうがいいと考える。》

・地域での声かけや、川の映像情報の提供等、避難しなければならないと住民が思うような、情報提供の工夫を検討すべきではないか。
《避難が困難な要配慮者が行動を起こすためには、近所、友人や福祉関係者からの声かけが有効である。東日本大震災では、要配慮者に避難の呼びかけや避難行動支援をしたのは家族、近所、福祉関係者の順である。》

(略)

【論点2】要配慮者の避難の実効性を高める方法について

○要配慮者利用施設の災害計画や避難計画を実効的にするための仕組み

・要配慮者利用施設の災害計画の実効性や、避難訓練の実施状況について、地方公共団体が具体的な内容を定期的に確認することにより、実効性を確保する仕組みが必要ではないか。

・浸水想定区域図等、より具体的な水害リスク情報が提供されている場合には、これを活用した実効性のある避難計画となるよう、要配慮者利用施設や地下街等の管理者に対して促すべきではないか。
《いくつかの被災施設が指定避難所ではなく自分たちで考えた場所に避難している。行政は、避難所と言えば小中学校を指定するが、実際に要配慮者はかなり個別性が強い。バリアフリー環境があったり、近いところを選ばなければいけない。避難方法についても、認知症患者、知的や精神の障がい者、視覚障がい者、車いすなど、それぞれ個別性がとても強い。

 そうであれば、福祉施設は施設の特性、各利用者の個別性に配慮して、計画、訓練、見直しを真剣に行い、実効性を高めなければいけない。そこを防災にあまり詳しくない福祉施設にぽんと丸投げして、本当にうまくできるだろうか。さらには、先に述べたように災害の激甚化にも対応するとなると、計画を超えた人の判断力を高めることまで必要だ。

 それを「地方公共団体が具体的な内容を定期的に確認することにより、実効性を確保する」ことでできるはずはないと考える。》

○在宅の要配慮者の避難行動支援を実効的にするための仕組み

・単なる安否確認にとどまらず、在宅の要配慮者の避難行動支援の実効性を高めるため、避難行動要支援者名簿の活用をはじめとする、地方公共団体における先進的な取組の紹介等をすべきではないか。

・支援する側・される側のバランスも考慮しつつ、地域全体で実現性のある支援体制を構築しておくべきではないか。
《要配慮者については日常の支援者が災害時も支援することが効果的であり、近隣のコミュニティによる支援に加えて、福祉関係者からの避難支援を積極的に進めなければならないと考えている。

 厚生労働省は高齢者標準社会を見据えて、地域包括ケアシステムを積極的に進めているが、この検討項目に災害時の対応が入っていない。高齢者は災害時こそ、人命が脅かされる事態であり、積極的な対応が望まれる。

 また、現状においても、高齢者の訪問介護計画や障がい者の個別支援計画に災害時の対応を記載することにより、避難誘導や安否確認の実効性を高めることにつながる。さらに、施設と地域が一緒になって、地区防災計画を作成し、相互に助けあう仕組みを作ることも効果的と考えている。》

【論点3】躊躇なく避難勧告等を発令するための体制の構築について

○発令基準に達した段階で避難勧告等を躊躇なく発令できるための防災体制

・災害応急対策に万全を期すため、各業務の優先順位を考慮した上で、全庁をあげて役割分担する防災体制を構築しておくべきではないか。

・特に、発令基準に達したという情報、及び河川管理者等からの情報提供(ホットライン等)については、首長に確実に伝達されるような防災体制を構築しておくべきではないか。例えば、「首長の意思決定を補佐する組織を専任で設置する」等が考えられるのではないか。

・避難勧告発令の訓練を定期的に実施すべきでないか。

○河川管理者等の助言を最大限に活用する仕組み

・いざという時の河川管理者や気象台からの連絡を活かすための体制づくり、必要に応じて河川管理者等へ助言を求める仕組みを構築しておくべきではないか。

・河川特性を考慮した、より的確な避難勧告等の発令基準とするため、河川管理者や気象台等の専門機関職員及び専門知識を有する経験者等に対して、平時から積極的に助言を求めることを徹底すべきではないか。
《自治体にとって大災害に遭遇することはまれであり、大被害を受けて災害対策本部を運営した経験のある自治体は少ない。かつ、10万人以下の自治体が日本の自治体の85%を占めており十分な防災担当職員を配置できないという状況からも、担当省庁が自治体の防災マネジメントを支援することが必要だ。
 しかし、災害時に急に自治体に乗り込んでも関係づくりが難しい。平常時から災害を減らすために活動することをリスクマネジメントというが、訓練や支援でつながりをもっておくことが大事だ。
 同時に、発災直前にはクライシスマネジメントを支援する。具体的には、災害が起ころうとしているときに河川管理者や気象台等の専門機関職員及び専門知識を有する経験者等がそばにいて、きちんと市町村をサポートすることだ。
 市町村がリスクマネジメントとクライシスマネジメントを両方できるように、専門機関職員が支援体制を構築しておく必要がある。》

○避難勧告等の発令判断のための情報収集システム

(略)

○住民等への防災情報の提供

(略)

・特に、市町村から社会福祉施設への情報伝達体制を定めておくべきではないか。

 

Profile
跡見学園女子大学教授
鍵屋 一(かぎや・はじめ)
1956年秋田県男鹿市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、東京・板橋区役所入区。法政大学大学院政治学専攻修士課程修了、京都大学博士(情報学)。防災課長、板橋福祉事務所長、福祉部長、危機管理担当部長、議会事務局長などを歴任し、2015年4月から現職。避難所役割検討委員会(座長)、(一社)福祉防災コミュニティ協会代表理事、(一社)防災教育普及協会理事 なども務める。 著書に『図解よくわかる自治体の地域防災・危機管理のしくみ』 (学陽書房、19年6月改訂)など。

 

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跡見学園女子大学教授

(かぎや・はじめ) 1956年秋田県男鹿市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、東京・板橋区役所入区。法政大学大学院政治学専攻修士課程修了、京都大学博士(情報学)。防災課長、板橋福祉事務所長、福祉部長、危機管理担当部長、議会事務局長などを歴任し、2015年4月から現職。避難所役割検討委員会(座長)、(一社)福祉防災コミュニティ協会代表理事、(一社)防災教育普及協会理事 なども務める。 著書に『図解よくわかる自治体の地域防災・危機管理のしくみ』 (学陽書房、19年6月改訂)など。

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