月刊「ガバナンス」2019年4月号 特集:新時代を担う職員を育む組織づくり
地方自治
2019.10.10
目次
- ◆特集◆ 新時代を担う職員を育む組織づくり
- 新時代の自治体職員に求められること
- 市民から信頼される職員と自治体組織
- 持続可能な地域を支える職員のあり方と人材育成
- 採用と人材の多様化と人材育成
- これからの時代の能力開発の必要性と求められる能力
- オープンガバナンス推進に求められる政府・自治体職員の能力
- 「女性職員が十分に力を発揮できる組織」は何をもたらすのか
- 働きがいを創出する組織づくり
- 取材リポート 滋賀県高島市
- ◆キャリサポ特集◆ 「学びの場」へ出かけよう!
- 「越境学習」のススメと「オフサイトミーティング」
- 2枚目の名刺をつくりに行こう!〜人生100年時代を生き抜く主体的な〝自分開発〞
- 取材リポート 市民/学生と自治体職員が連携し、地域課題の解決に取り組む場
いよいよ令和元年(2019年)も残すところあとわずかとなりました。これからの地方自治を創る実務情報誌 月刊「ガバナンス」(ぎょうせい)が現在の形式にリニューアルしたのは、2019年4月号(No.216)からのことでした。ここでは月刊「ガバナンス」2019年4月号の特集記事をプレイバックしながら振り返りたいと思います。(編集部)
◆特集◆ 新時代を担う職員を育む組織づくり
統一地方選が行われ、元号が変わる今春は、自治体、自治体職員にとって新しい一歩を踏み出す季節となる。近年、自治体では団塊世代職員の退職などに伴って若手職員が増えてきたが、今後はAI(人工知能)をはじめとする技術革新や人手不足など、取り巻く環境もさらに大きく変わってくる。この新しい時代に自治体はどう職員を育てていくべきか。土壌となる組織も含めて考えてみたい。
新時代の自治体職員に求められること
大杉 覚(首都大学東京大学院教授) 14(以下、本紙ページ数)
自治体職員を「人材」として論じる議論は、元来、自治体行政の担い手として、その自主・自律性を含めて、より積極的に捉える観点からなされてきたのではないか。この立ち位置に立てば、 「新時代」にあって自治体職員に「求められること」としては、マネジメントの単なる対象・客体 としての「人材」にとどまるだけではなく、自らを可変的な「人材」と自己定義して自覚的に振る舞える存在となるべきだ、ということになるだろう。
市民から信頼される職員と自治体組織
谷畑英吾(滋賀県湖南市長)17
これからの公務職場には、さまざまな課題に柔軟に対応できるよう、地域にカスタマイズされた政策を形成する能力のある人材が求められてくる。今後、職場に導入されてくるAIに駆逐されないのは、課題ごとにイノベーションを伴う新機軸の解決策を組み立てる力である。人材育成の地域間競争はすでに始まっているのだ。
持続可能な地域を支える職員のあり方と人材育成
田中 優(大阪国際大学経営経済学部教授) 20
本来、自治体は、複合的で連鎖したような問題状況を前提として、組織や仕事のあり方、取り組み方を考え、それらを担保するような計画を用意しないといけないのだが、ほとんどできていないのが現状である。自治体の組織や事務分掌、計画のデザインが市民生活・社会問題を規定するのではなく、複雑な地域問題を繋がりの中から把握し対応できるよう、〝新しいレンズ〞によって、それらの組み替えをしていくことが求められている。
採用と人材の多様化と人材育成
大谷基道(獨協大学法学部総合政策学科教授) 23
自治体の採用試験は、かつて「学力重視型」が主流であったが、その後「人物重視型」への転換が進んだ。2000年代には、民間企業と同様の選抜手法を導入することで、受験者の多様性を確保しようとする「受験者負担軽減型」が現れた。さらに10年代に入ると、人材の争奪戦が激しくなり、民間企業に流れた優秀な人材を取り戻そうと、教養試験や専門試験を廃止し、公務員試験対策が不要であることを強くアピールするようになる。これは、「受験者負担軽減型」と同じく受験者の負担を軽減するものだが、目的が多様な人材の確保(=質的拡大)から多数の受験者の確保(=量的拡大)に変化したものと考えられる。
これからの時代の能力開発の必要性と求められる能力
牧瀬 稔(関東学院大学法学部地域創生学科准教授) 26
近年は自治体に影響を与える様々な概念(事象)が登場している。自治体は多様化する行政課題に的確に対応しなくてはいけない。そのためには自治体を成立させる職員一人ひとりの能力開発が求められる。
オープンガバナンス推進に求められる政府・自治体職員の能力
川島宏一(筑波大学システム情報系社会工学域教授) 29
オープンガバナンスを指向する多様な活動が全国で起こっている。様々な社会問題について、政府・自治体に解決を丸投げするのではなく、個人、専門家、市民社会組織、企業、大学・研究機関などが、データをもとに議論し合い、持てる資源を持ち寄って解決してゆこうとする考え方あるいはそうした取り組みを後押しする仕組みである。本稿では、オープンガバナンスを指向する政府・自治体の活動が今どこまで到達しているのか、また、さらにこの動きを推し進めるために求められる政府・自治体職員の能力は何かについて考察したい。
「女性職員が十分に力を発揮できる組織」は何をもたらすのか
柴田朋子〔(国資)キャリアコンサルタント(フリーランス)研修講師〕 32
「女性職員が十分に力を発揮できる組織」は「すべての職員が力を発揮できる職場」をもたらす。私は、女性の視点を取り入れて現状の組織や人材育成、あるいは働き方を変えていくことが、すべての職員の能力を活かしきることにつながると考えている。それはすなわち多様な地域課題に応え、まちの未来を創り出す行政サービスの提供にもつながる。そのための喫緊の課題は上司の「人材育成力」である。
働きがいを創出する組織づくり
前川孝雄〔(株)FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師〕 35
現場のコミュニケーションを鍵に「人が育つ現場」づくりに注力してきたため、働く人たちの意識が様変わりしてきたことを実感している。特に40〜50代の管理職層・ベテラン職員と20〜30代の若手職員の就労観には大きなギャップが生まれている。今後増え続ける若手の就労観に合わせて、組織の方が変化しなければ、持続発展する組織は作れなくなっていくのではないだろうか。
取材リポート 滋賀県高島市
若手職員による政策形成研修で実践的な政策を市長等に提案 38
滋賀県高島市は14年から、福井正明市長の発案による「実践型政策形成研修」を実施している。14〜16年の3年間は、庁内公募の若手職員らによるチームがテーマを絞って研究し、その成果を市長ら幹部職員に政策提案の形で発表。提案の中には、実現に向けてすでに動き出しているものもある。17年度からは政策研究チームTMT(タカシマ・マネジメント・チーム)に再編する一方、18年度には参事級以上の管理職員を対象とした「高島Σ(シグマ)塾」を立ち上げている。いずれも単なる研修ではなく、仕事を変える動きを作り出すことが最大の目的だ。