最新法律ウオッチング

月刊「地方財務」

最新法律ウオッチング ― 子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(一部を除き、2024年10月1日から施行)

NEW自治体法務

2024.10.02

※2024年8月時点の内容です
最新法律ウオッチング 第131回 子ども・子育て支援法等の改正
(『月刊 地方財務』2024年9月号)

 2024年の通常国会において、子ども・子育て支援法等の一部改正法が成立した。

 少子化は、我が国が直面する最大の危機であり、2030年代に入るまでが、この少子化傾向を反転させるラストチャンスといわれている。

 こうした問題認識の下、2023年末に閣議決定されたこども未来戦略では、全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援し、共働き・共育ての推進と併せて、社会全体の構造・意識を変え、子どもを持つことを希望する人が安心して子どもを生み、育てることができる社会の実現を目指していた。

 政府は、こども未来戦略の「加速化プラン」に盛り込まれた施策を着実に実施するため、給付面と財政面の改革を一体的に行うものとして、前記の改正法案を国会に提出し、成立した。

子ども・子育て支援法等の改正

●子育てに係る経済的支援の強化
 児童手当について、支給期間を中学生までから高校生年代までとする、支給要件の所得制限を撤廃する、第3子以降の児童に係る支給額を月額3万円とする、支払月を年3回から隔月(偶数月)の年6回とすることとした。

 また、妊娠期の負担の軽減のため、妊婦のための支援給付を創設し、この給付と妊婦等包括相談支援事業を効果的に組み合わせることで総合的な支援を行うこととした。

●こども・子育て世帯支援の拡充
 妊婦のための支援給付と併せて、妊婦等に対する相談支援事業(妊婦等包括相談支援事業)を創設するとともに、保育所等に通っていない満3歳未満の子どもの通園のための給付(こども誰でも通園制度)を創設することとした。

 また、産後ケア事業を地域子ども・子育て支援事業に位置付け、国、都道府県、市町村の役割を明確化して計画的な提供体制の整備を行うとともに、教育・保育を提供する施設・事業者に経営情報等の報告を義務付ける(経営情報の継続的な見える化)こととした。

 さらに、児童扶養手当の第3子以降の児童に係る加算額を第2子に係る加算額と同額に引き上げることとした。

 このほか、家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者(ヤングケアラー)を国・地方公共団体等による子ども・若者支援の対象として明記した。

●共働き・共育ての推進
 両親ともに育児休業を取得した場合に支給する出生後休業支援給付、育児期に時短勤務を行った場合に支給する育児時短就業給付や、自営業、フリーランス等の国民年金第一号被保険者の育児期間に係る保険料の免除措置を創設することとした。

●子ども・子育て支援特別会計
 子ども・子育て政策の全体像と費用負担の見える化を進めるため、年金特別会計の子ども・子育て支援勘定と労働保険特別会計の雇用勘定の育児休業給付関係部分を統合し、子ども・子育て支援特別会計(こども金庫)を創設することとした。

●子ども・子育て支援金制度
 安定財源の確保策として、既定予算の最大限の活用等や徹底した歳出改革を行った上で、児童手当等の費用に充てるため、企業を含め社会経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で広く拠出する仕組みとして、子ども・子育て支援金制度を創設することとした。

 具体的には、各医療保険者は、子ども・子育て支援納付金を国に納付することとし、その納付に要する費用について、被保険者等から子ども・子育て支援金を、医療給付に充てる保険料と併せて徴収することとした。

 また、支援金制度を段階的に構築していく間、支援金を充てるべき給付に必要な費用に充てるため、子ども・子育て支援特例公債の発行を可能とした。

●施行期日
 この法律は、一部を除き、2024年10月1日から施行される。

国会論議

 国会では、子ども・子育て支援金を医療保険料と併せて徴収する狙いについて質問があり、政府からは、社会保険制度は、社会連帯の理念を基盤としてともに支え合う仕組みであり、支援金制度も連帯の理念を基盤に保険料と整理されるところ、医療保険料と併せて徴収するのは、医療保険制度が他の社会保険制度に比べ賦課対象者が広いこと、幅広い給付体系となっており、世代を超えた支え合いの仕組みが組み込まれていること、急速な少子化、人口減少に歯止めをかけることが医療保険制度の持続可能性を高めること等を理由とするとの説明がされた。

 また、支援金制度の導入により国民の負担増になるとの指摘があり、政府からは、支援金は、歳出改革による保険料負担の軽減効果の範囲内で構築することを基本とすることで、実質的な負担が生じないものであり、社会保障負担率が上がらないようにするとの説明がされた。

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