連載 vol.98「つながる」力 平和への願い──戦火の中でも途切れないウクライナとのつながり【澤永麻須美(熊本・八代市職員)】
地方自治
2024.03.18
目次
本記事は、月刊『ガバナンス』2022年5月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
所属等は執筆(掲載)時点のものです。
※本コラムは主に自治体職員によるネットワークのメンバーがリレー形式で執筆します。
今、一人の友のために募金活動を行っている。
友の名は、ダリア。仕事で知り合ったウクライナ人である。
今は、チェコの大学で教鞭を取る傍ら、チェコと熊本を往復し物理学の研究を続けている。
コロナ禍以前に、八代港への大型クルーズ船の増寄港やインバウンド政策を目的とし、外国人への「おもてなし」の検証に、モニターツアーの参加者を募集した。ダリアとは、その時、友人の紹介で知り合った。
モニターツアーでは、ダリアと一緒に石橋を見て回っていた際に、稲刈り後の小道を歩いた。小道の傍らの軒先に並ぶ吊るし柿を見て、日本ではお正月に鏡餅と一緒に、この吊るし柿をお供えし食べる習慣がある話をした。吊るし柿を見てツアー参加者の多くはその場で物珍しく写真を撮っていたが、中には、干し柿は漢方になるから売った方がいいと言う者がおり、その話を聞いてダリアと談笑に花を咲かせた記憶がある。ただその時、「日本人は島国だから大陸の恐怖を知らない」と耳にしたことも残っている。
2022年2月24日、ロシアがウクライナへの軍事侵攻に踏み切った。ダリア自身は、チェコにいて安全だが、ダリアの家族や友人はロシアとの国境近くに位置するスームィに今も住み、日々爆撃音に怯えている。
数日前も、ダリアの兄が結成している自警団の車が対戦車の地雷で負傷者がでた。止血用のバンテージで命は取り留めているが、医薬品が不足している状況は進んでいる。
ダリアは、ウクライナに残る家族や友人の支援を始めた。先日、募金から単眼熱探知望遠鏡を日本からチェコに送った。チェコからポーランド、そこからはリレー方式でスームィまで運ぶ。ダリアの兄へ届くことを願うばかりだ。しかし今必要なものは医薬品だとダリアの許にリストが届いている。
島国だとしても、ダリアとは今でも皆つながっている。また一日でも早くウクライナに平和が戻り、皆で談笑できる日が訪れますように。
(熊本・八代市職員/澤永麻須美)