【ホットな話題】あなたは災害時にどこに逃げるか知っていますか?――災害から命を守る「逃げ地図」づくり出版記念「逃げ地図」シンポジウム

地方自治

2019.12.13

災害から命を守る「逃げ地図」づくり出版記念シンポジウム開催

『災害から命を守る「逃げ地図」づくり』(ぎょうせい)の編著者グループ(逃げ地図づくりプロジェクトチーム*)は12月2日、明治大学駿河台キャンパスで出版記念「逃げ地図」シンポジウムを開催した。現在注目を集めている防災対策「逃げ地図」が生まれた背景や同書制作にまつわるエピソードの紹介、建築家や危機管理の専門家などによる「逃げ地図」の取り組み事例が共有され、今後の課題や展望について積極的な議論を交わした。

・第1部 逃げ地図づくりのススメ 
編集著者らが語る「逃げ地図」の内容と「逃げ地図」づくりのススメ(18:35〜19:15) 
・第2部 逃げ地図づくりの全国展開
今年1年間の全国の「逃げ地図」づくりの主な取り組みをトークリレー(19:30〜20:20)

(出版記念シンポジウムの詳細は下記URLのとおり)
https://shop.gyosei.jp/online/archives/cat07/0000009407

シンポジウムの中で「逃げ地図」の取り組みを解説する山本俊哉氏(右から2番目)

身近なリスクを見える化できる「逃げ地図」とは

 逃げ地図とは、ハザードマップを下敷きにして避難目標地点までの避難経路を3分間ごとに色塗りした地図を作成することで、避難者の視点に立ったその地域の災害リスクを「見える化」するワークショップ形式のプログラムである。
 「白地図」と「色鉛筆」と「革ひも」があれば、お年寄りから子どもまで、誰でも楽しみながら作成することができる。参加者同士が身近なリスクについて話し合うことで、お互いの信頼関係を築き、日頃からの防災意識を高めるリスク・コミュニケーションの取り組みとして注目を集めている。

気仙沼における「逃げ地図」の作成例(本書カラーページより)

出版記念「逃げ地図」シンポジウム

 出版記念シンポジウムは上記のとおり、2部構成で行われた。第1部では編集著者が自ら「逃げ地図」の内容を紹介し、第2部は直近1年間の「逃げ地図」づくりの全国各地の取り組みをトークリレー形式で報告するもの。
 シンポジウム冒頭では、主催者を代表して山本俊哉氏(明治大学教授)が、これまでの「逃げ地図」の取り組みと『災害から命を守る「逃げ地図」づくり』(ぎょうせい)の刊行にいたるまでの経緯を紹介し、第1部でモデレーターを務めた浦谷收氏(株式会社ぎょうせい出版企画部・編集担当)へつないだ。
 「逃げ地図」は大手設計事務所の(株)日建設計ボランティア部が東日本震災の教訓を踏まえ、大規模施設の避難計画のノウハウを応用して開発されたもの。羽鳥達也氏(株式会社日建設計)は「被災地になにかできないかと考えた私たちが、まずその地域を理解するために、その地域のリスクを表現しようとしたところから生まれました」と説明した。木下勇氏(千葉大学大学院教授)は逃げ地図の意義を総括し、ワークショップの実践を振り返りつつ、「避難という重い課題を子どもたちに伝えていくことが大切」だと説いた。
 また、森脇環帆氏(小田原短大助教)は、津波からの逃げ地図を活用したアートプロジェクト「キツネを探せ!」を紹介したのち、老人と子どものコミュニケーションの難しさをわかりやすく伝える4コマ漫画(本書冒頭)を紹介。山本俊哉氏が4コママンガの下書きを披露すると、会場は一気に和やかな雰囲気に包まれた。

「逃げ地図」の全国展開と今後の展望

 第2部では、静岡県下田市立朝日小学校の事例、マヌ都市建築研究所の取り組み、(公社)日本青年会議所国土強靭化委員会が全国各地で実施したワークショップの様子が数多くの写真とともにリレー形式で紹介された。
 第2部後半では、北川正巳氏(株式会社パスコ)は地図作成支援サービスのMappin'Drop(本書14-15ページ)を利用した白地図づくりの具体的なやり方を紹介。井上雅子氏(セコム株式会社IS研究所研究員)は「逃げ地図をみんなが回せるようになることや、振り返りをして自分の力で回せるようになることが大切」と説き、さらに「みんなが書いた逃げ地図をアーカイブ化する逃げ地図2.0」への展望を語るなど、今後に関わる問題提起がなされた。
 シンポジウムの最後に行われた質疑応答では、「日本の防災ノウハウを世界に広めるために英訳しては」といった声も挙がった。また、シンポジウムは18時35分と遅い開始時間だったこともあり、「逃げ地図」関係者や研究者、学生だけでなく、広く防災に関心を持つ一般聴講者の姿も多かった。

(出版記念シンポジウムの詳細は下記URLのとおり)
https://shop.gyosei.jp/online/archives/cat07/0000009407


*逃げ地図づくりプロジェクトチーム
 「逃げ地図」の作成手法とそれを伝え防災を考えるためのワークショップのプロセスを開発した日建設計ボランティア部と、明治大学山本俊哉研究室及び千葉大学木下勇研究室がその効果の検証や防災教育やまちづくりへの展開について2012年5月に共同研究を開始。その後、研究成果を社会実装するため(一社)子ども安全まちづくりパートナーズが加わり、「逃げ地図」づくりを全国展開している。

アンケート

この記事をシェアする

  • Facebook
  • LINE

誰でも、どの地域でもできる「逃げ地図」のつくり方、その効果を紹介

お役立ち

災害から命を守る「逃げ地図」づくり

2019年11月 発売

本書のご購入はコチラ

すぐに役立つコンテンツ満載!

地方自治、行政、教育など、
分野ごとに厳選情報を配信。

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツ満載!

地方自治、行政、教育など、
分野ごとに厳選情報を配信。

無料のメルマガ会員募集中