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文化庁国語課監修 「コミュニケーション」を円滑にするためのことば辞典 「手をこまねいて待つ」は、 準備万端?何もしていない?

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2021.05.20

文化庁国語課監修 「コミュニケーション」を円滑にするためのことば辞典
「手をこまねいて待つ」は、準備万端?何もしていない?

『新教育ライブラリ Premier』Vol.5 2021年2月

 「手をこまねく」本来の意味

 傍観していることを意味する「手をこまねく」という語。「国語に関する世論調査」によれば、この言葉を本来の意味とされてきたのとは異なった意味で使っている人の方が多いことが分かりました。

Q.「手をこまねく」とは、本来どのような意味とされてきたのでしょうか。

A.「手を胸の前で組んでいること」、転じて、「何もせずに傍観している」という意味とされてきました。

 「手をこまねく」を辞書で調べてみましょう。

「広辞苑 第7版」(平成30年・岩波書店)

こまねく【拱く】〔他五〕 コマヌクの訛(か)。

こまぬく【拱く】〔他五〕 左右の手を胸の前で組み合わせる。腕を組む。転じて、何もしないで見ている。傍観する。宇治拾遺五「─・きて、少しうつぶしたるやうにて」。「腕を─・く」「手を─・く」 ▽近年、音変化した「こまねく」が多く使われる。

「明鏡国語辞典 第3版」(令和2年・大修館書店)

こまねく【拱く】(他五)腕組みをする。こまぬく。「手を─(=何もしないで傍観する)」▽「こまぬく」の転。現在は「こまねく」が一般的。

 辞書が示すように、「こまねく」は元々「こまぬく」という語でしたが、近年になって、「こまねく」という形で使われることが多くなっています。「こまねく」は、腕や手を胸の前で組み合わせるという意味を持っており、「手をこまねく」という慣用句の形でよく用いられます。「手をこまねく」は、本来、手を組んだままでいて何も手出ししないこと、つまり、「何もせずに傍観する」という意味だとされてきた言葉です。

国語に関する世論調査

Q.「手をこまねく」について尋ねた「国語に関する世論調査」の結果を教えてください。

A.辞書で本来の意味とされてきたのではない「準備して待ち構える」という意味だと回答した人の割合が、本来の意味とされてきた「何もせずに傍観している」と回答した人を上回りました。

 令和元年度の「国語に関する世論調査」で、「手をこまねいて待っていた。」という例文を挙げて、「手をこまねく」の意味を尋ねました。結果は次のとおりです(下線を付したのが本来の意味とされてきたもの)。

〔全体〕
手をこまねく
例文:手をこまねいて待っていた。
(ア)何もせずに傍観している……37.2%
(イ)準備して待ち構える……47.4%
(ア)と(イ)の両方……4.6%
(ア)、(イ)とは全く別の意味……3.3%
分からない……7.5%

〔年代別グラフ〕

 全体では、本来の使い方とされてきたのではない(イ)「準備して待ち構える」と回答した人の割合が47.4% となっており、本来の使い方とされてきた(ア)「何もせずに傍観している」と回答した人の割合(37.2%)を上回っています。

 年代別に見ると、50代から上の年代では、(ア)と(イ)の割合が接近していますが、40代以下の年代では、本来の意味とされてきたのではない(イ)の割合が高く、(ア)との間
に10ポイント以上の差がついています。特に16~19歳では、50ポイント以上の開きがあります。

 「準備して待ち構える」という意味で使われることが多くなっている理由としては、「こまぬく」が音変化によって「こまねく」と使われるようになり、「まねく」の部分が「招く」と同じ音になることから、「手招きする」というようなイメージで捉えられてしまうためといったことが考えられます。「手をこまねいて待っていた」という文を「(早く来いと)手招きするような気持ちで待ち構えていた」などと読む人が増えているのかもしれません。

 

[参考]
『文化庁月報』平成24年10月号(529号)
連載「言葉のQ&A」

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