【図書案内】『大学入試改革対応!ミスマッチをなくす進路指導』 倉部史記/著
新刊書のご案内
2019.04.11
『大学入試改革対応!ミスマッチをなくす進路指導』
本書は、以下のような方のために書かれた本です。
① 高校生の進路指導に関わっている教員の皆様
・高校1~3年生の担任教員
・進路指導部の教員、進路指導主事など
② 中高生のお子様をもつ保護者の皆様
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③ 大学および専門学校で、入試広報や高大連携、高大接続など
高校生向けの事業を担当されている教職員の皆様
「大学全入時代」だからこそ大切な進路指導
現在、日本の高校生の約半数が四年制大学に進学しています。かつてと比べて大学は身近な存在になりました。正解のない問いに向き合いながら、様々な学びを得られるのが大学という場所です。そんな大学教育に多くの人がアクセスできる今の時代は、非常に豊かで幸福だと私は思います。
一方で、中途退学も年々増加しています。現在、大学入学者の8人に1人は中退しています。中退率が20%を越える大学や学部も珍しくありません。中退が必ずしも悪いわけではありませんが、「なぜ高校生のときに調べておかなかったのか」という、単純な思い込みや勘違いでミスマッチを起こし、後悔している大学生が少なくないのも事実です。中退者本人のキャリアや家庭の経済状況に深刻な影響を残してしまうケースもしばしば報じられています。
そして現在、国を挙げた高大接続改革が進行中です。高校教育を変え、大学教育を変え、両者をつなぐ入試システムも変えるという大規模な変革ですが、進路指導のあり方を変えない限り、この高大接続改革が描く大学進学のあり方には対応できません。とりあえず主要教科の点数を上げ、3年生の時点の成績に従って出願先を決めれば良かったこれまでとは異なり、自分はどう成長したいのか、それが実現できる環境はどこなのか、などの理解を高校3年間でじっくり深めていく進路学習が求められています。
その理解が十分でなければ、今後は大学入学者選抜を通過できません。通過したとしても、望まぬ中退などのリスクが残ることになります。
大学や専門学校への進学を取り巻く状況は、かつてと比べて大きく変わりました。高校での進路指導のあり方も、少しずつ変えていく必要があります。しかし残念ながら、指導の現場に必要な情報が十分に届いているとは言えません。高校生向けに制作された情報媒体だけでは得にくい気づきもあります。模擬授業やオープンキャンパスは、ただ参加させれば良いのではなく、高校側での事前指導や事後指導が大事です。そうした指導上のノウハウが、教員間であまり継承、共有されていない現場もあるでしょう。
本書のねらいと構成
本書はそんな状況を踏まえ、大学入学者選抜でのミスマッチと、進学後に顕在化するミスマッチの両方を可能な限り「なくす」ことを目指して書きました。この2つは違う問題のように見えますが、根元は同じです。したがって、解決のために必要な指導の工夫も共通です。
それに教員や保護者の皆様が真に願っているのは、受験の合格でも就職内定でもなく、今の高校生が15年後、20年後に社会人として自立し、自分の人生を切り拓いていることだと思います。その前提に立った進路指導のあり方を考えれば、結果的には進学でのミスマッチをなくすようなものになるはずです。
予算も時間も、労力も十分ではない高校教育の現場で、どのようなことに留意すればより良い進路学習を実践できるのか。本書ではその参考になるような視点やヒントを提供できればと思っています。
そして実は、ミスマッチに悩んでいるのは大学や専門学校の側も同じです。高校生や保護者、あるいは地元の高校に対してどのような施策を提案すれば、生徒・学生にとって最善の学びを実現できるのか。その参考にもなれればと思います。
本書の内容は、私自身が高大接続の様々な取組で実践した内容や、全国の高校教員、大学教職員からいただいた経験や知見を元に構成されています。第1章では、2種類のミスマッチと、それをなくす「3つの理解」について解説しています。第2章では高校3年間全体を通じての、第3章以降は各学年での進路指導のポイントを具体的に案内しています。高校の進路指導を想定したワークシートや、進路指導で活用できるリソースも添付しました。まずは「自分のクラスで試してみようかな」と感じた部分から、気軽に採り入れていただけましたら幸いです。
基本的には大学進学に向けた指導を中心に記述していますが、専門学校進学を目指す方や、その両者の間で迷っている方にも役立つ内容になるよう努めています。
本書が、大学や専門学校への進学を考える高校生と、そんな彼らを支える指導者、保護者の皆様の参考になれれば幸いです。
2019年3月 倉部史記
著者プロフィール
倉部 史記(くらべ・しき)
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、早稲田塾総合研究所主任研究員などを経て独立。兼任としてNPO 法人NEWVERY 理事、追手門学院大学アサーティブ研究センター客員研究員、三重県立看護大学の高大接続事業外部評価委員など。高校等での講演多数(2018 年度は全国約70 校で講演)。