【資料】新しい学習指導要領等が目指す姿ほか[中教審 平成27年8月]
各種答申・報告・調査
2019.03.22
[特集]新教育課程型授業を考える―アクティブラーニングの理論と実践 ●reference●
中央教育審議会教育課程企画特別部会 論点整理[平成27年8月26日](抜粋)
2.新しい学習指導要領等が目指す姿
(2)育成すべき資質・能力について
(資質・能力の要素)
○ (略)学習する子供の視点に立ち、育成すべき資質・能力を以下のような三つの柱(以下「三つの柱」という。)で整理することが考えられる。教育課程には、発達に応じて、これら三つをそれぞれバランスよくふくらませながら、子供たちが大きく成長していけるようにする役割が期待されており、各教科等の文脈の中で身に付けていく力と、教科横断的に身に付けていく力とを相互に関連付けながら育成していく必要がある。
ⅰ )「何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)」
各教科等に関する個別の知識や技能などであり、身体的技能や芸術表現のための技能等も含む。基礎的・基本的な知識・技能を着実に獲得しながら、既存の知識・技能と関連付けたり組み合わせたりしていくことにより、知識・技能の定着を図るとともに、社会の様々な場面で活用できる知識・技能として体系化しながら身に付けていくことが重要である。
ⅱ )「知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)」
問題を発見し、その問題を定義し解決の方向性を決定し、解決方法を探して計画を立て、結果を予測しながら実行し、プロセスを振り返って次の問題発見・解決につなげていくこと(問題発見・解決)や、情報を他者と共有しながら、対話や議論を通じて互いの多様な考え方の共通点や相違点を理解し、相手の考えに共感したり多様な考えを統合したりして、協力しながら問題を解決していくこと(協働的問題解決)のために必要な思考力・判断力・表現力等である。
特に、問題発見・解決のプロセスの中で、以下のような思考・判断・表現を行うことができることが重要
である。
・問題発見・解決に必要な情報を収集・蓄積するとともに、既存の知識に加え、必要となる新たな知識・技能を獲得し、知識・技能を適切に組み合わせて、それらを活用しながら問題を解決していくために必要となる思考。
・必要な情報を選択し、解決の方向性や方法を比較・選択し、結論を決定していくために必要な判断や意思決定。
・伝える相手や状況に応じた表現。
ⅲ )「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)」
上記のⅰ)及びⅱ)の資質・能力を、どのような方向性で働かせていくかを決定付ける重要な要素であり、以下のような情意や態度等に関わるものが含まれる。
・主体的に学習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や、自己の感情や行動を統制する能力、自らの思考のプロセス等を客観的に捉える力など、いわゆる「メタ認知」に関するもの。
・多様性を尊重する態度と互いのよさを生かして協働する力、持続可能な社会づくりに向けた態度、リーダーシップやチームワーク、感性、優しさや思いやりなど、人間性等に関するもの。
(3)育成すべき資質・能力と、学習指導要領等の構造化の方向性について
②学習活動の示し方や「アクティブ・ラーニング」の意義等
(指導方法の不断の見直し)
○ (略)次期改訂が学習・指導方法について目指すのは、特定の型を普及させることではなく、下記のような視点に立って学び全体を改善し、子供の学びへの積極的関与と深い理解を促すような指導や学習環境を設定することにより、子供たちがこうした学びを経験しながら、自信を育み必要な資質・能力を身に付けていくことができるようにすることである。そうした具体的な学習プロセスは限りなく存在し得るものであり、教員一人一人が、子供たちの発達の段階や発達の特性、子供の学習スタイルの多様性や教育的ニーズと教科等の学習内容、単元の構成や学習の場面等に応じた方法について研究を重ね、ふさわしい方法を選択しながら、工夫して実践できるようにすることが重要である。
ⅰ )習得・活用・探究という学習プロセスの中で、問題発見・解決を念頭に置いた深い学びの過程が実現できているかどうか。
新しい知識や技能を習得したり、それを実際に活用して、問題解決に向けた探究活動を行ったりする中で、資質・能力の三つの柱に示す力が総合的に活用・発揮される場面が設定されることが重要である。教員はこのプロセスの中で、教える場面と、子供たちに思考・判断・表現させる場面を効果的に設計し関連させながら指導していくことが求められる。
ⅱ )他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深める、対話的な学びの過程が実現できているかどうか。
身に付けた知識や技能を定着させるとともに、物事の多面的で深い理解に至るためには、多様な表現を通じて、教師と子供や、子供同士が対話し、それによって思考を広げ深めていくことが求められる。こうした観点から、前回改訂における各教科等を貫く改善の視点である言語活動の充実も、引き続き重要である。
ⅲ )子供たちが見通しを持って粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる、主体的な学びの過程が実現できているかどうか。
子供自身が興味を持って積極的に取り組むとともに、学習活動を自ら振り返り意味付けたり、獲得された知識・技能や育成された資質・能力を自覚したり、共有したりすることが重要である。子供の学びに向かう力を刺激するためには、実社会や実生活に関わる主題に関する学習を積極的に取り入れていくことや、前回改訂で重視された体験活動の充実を図り、その成果を振り返って次の学びにつなげていくことなども引き続き重要である。
3.学習評価の在り方について
(評価の三つの観点)
○ 現在、各教科について、学習状況を分析的に捉える観点別学習状況の評価と、総括的に捉える評定とを、学習指導要領に定める目標に準拠した評価として実施することが明確にされている。評価の観点については、従来の4観点の枠組みを踏まえつつ、学校教育法第30条第2項が定める学校教育において重視すべき三要素(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」)を踏まえて再整理され、現在、「知識・理解」「技能」「思考・判断・表現」「関心・意欲・態度」の四つの観点が設定されているところである。
○ 今後、小・中学校を中心に定着してきたこれまでの学習評価の成果を踏まえつつ、目標に準拠した評価を更に進めていくためには、学校教育法が規定する三要素との関係を更に明確にし、育成すべき資質・能力の三つの柱に沿って各教科の指導改善等が図られるよう、評価の観点については、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に沿った整理を検討していく必要があると考える。その中で、観点別学習状況の評価と、それらを総括した評定との関係についても、改めて整理していくことが求められる。
4.学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策
(1)「カリキュラム・マネジメント」の重要性
(三つの側面)
○ (略)「カリキュラム・マネジメント」については、これまで、教育課程の在り方を不断に見直すという下記②の側面から重視されてきているところであるが、「社会に開かれた教育課程」の実現を通じて子供たちに必要な資質・能力を育成するという新しい学習指導要領等の理念を踏まえ、これからの「カリキュラム・マネジメント」については、以下の三つの側面から捉えられる。
① 各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。
② 教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること。
③ 教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせること。
(教育課程全体を通しての取組)
○ これからの時代に求められる資質・能力を育むためには、各教科等の学習とともに、教科横断的な視点で学習を成り立たせていくことが課題となる。そのため、各教科等における学習の充実はもとより、教科等間のつながりを捉えた学習を進める観点から、教科等間の内容事項について、相互の関連付けや横断を図る手立てや体制を整える必要がある。