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ホンキの『カリマネ』実現戦略

村川雅弘

ホンキの『カリマネ』実現戦略[第4回]GIGAスクール構想実現のための研修のカリキュラム・マネジメント

NEWトピック教育課題

2021.01.28

ホンキの『カリマネ』実現戦略[第4回]
GIGAスクール構想実現のための研修のカリキュラム・マネジメント

村川雅弘
甲南女子大学教授 

『新教育ライブラリ Premier』Vol.4 2020年11月

コロナ禍によるGIGAスクール構想の推進

 本連載の2回目で紹介した「新型コロナウイルス対応のカリキュラム・マネジメントのZoom研究会」(略称「Z研」)は、コロナ対応の課題からいくぶんシフトしながらも月に1、2回のペースで続けている。第6回(9月6日)のメインテーマは「GIGAスクール構想をチャンスに!〜1人1台デバイスの不安や疑問を払拭し、教育のアップデートへわくわく感をもつ〜」である。コロナ禍において大きく前進したGIGAスクール構想を見据えてのテーマ設定となった。

 まず、徳島県徳島市高志小学校の中川斉史校長が、今後の課題として「管理場所」「充電の仕方」「データの管理」「教科書との併用」「ノートテーキングとの関連」「一斉授業との関連」「コンテンツとツールの区別」など、前任校(徳島県東みよし町立足代小学校)でのフューチャー・スクールの経験を踏まえて具体的な課題を提示した。

 次に、学校全体でICT教育を推進し、コロナ禍においても一定の成果を挙げた埼玉県私立さとえ学園小学校の山中昭岳研究主任は、学習のツールとして活用していくためには、「レベルアップ型ルール」(資料1)を子どもと教師で一緒に作成し活用することが重要であると指摘した。学校及び家庭においてデバイスを使用できる自由度が異なるレベル(デバイスの壁紙を「緑→青→ゴールド」=免許制度と同様に)を設定し、スキルやモラルの条件をクリアするとICTの活用の自由度が上がる仕掛けである。保護者にも提示し、家庭での使用においても子ども自身も含め、共通理解の上で進めている。詳細は同校に問い合わせすれば伝えてもらえる。

 第7回(9月26日)は、文部科学省教育課程課の石田有記学校教育官からカリキュラム・マネジメントの3側面の一つでありコロナ対応ともかかわりが強い「国全体の学習保障に必要な人的・物的支援」の主事業としての「ICT端末を活用した家庭学習のための環境整備」及び「各教科等の指導におけるICTの効果的な活用にかかわる事例」の話と、同課審議・調整係の堀田雄大氏が前任校でのICT導入・活用の経験を踏まえ作成した「1人1台の学習指導充実に向けた研修のカリキュラム・マネジメント」に関する提案を披露した。その後の協議では、ICT導入・活用にかかわる学校の状況(成熟度)に応じた研修開発の必要性が主たる関心事となった。

GIGAスクール構想の課題整理と研修開発ワークショップ

 古巣の鳴門教育大学教職大学院では、退職以降も「学校におけるカリキュラム・マネジメントの推進」「総合的な学習の時間のカリキュラム開発」「ワークショップ型研修の技法」の3科目を集中講義で担当している。

 「ワークショップ型研修の技法」では、例年は受講生の最近の授業を対象にワークショップ型授業研究を体験した後、その手法を援用して「幼小連携・小中連携・中高連携・家庭連携・地域連携」といった多様な学校種(学卒院生含む)の受講生を活かしたテーマのワークショップを行ってきた。

 今年度は、コロナ禍による高等学校のICT活用及び小中学校のGIGAスクール構想の推進にかかわる研修開発は必須と判断し、チームによる課題をして取り上げることにした。

 資料2が2日間(10月10日・11日)の日程である。初日午前は、ワークショップ型研修の技法について、テキスト1にも触れつつ、理論や実践をプレゼンテーションした。午後は、前述のZ研の中川斉史氏及び堀田雄大氏にZoomで登場いただき、1人1台端末の導入・活用に際してどのような問題が起こるかを経験に基づいて熱く語っていただき、受講生28名(現職21名、学卒7名)との質疑応答を行った(写真1)。

 

 その後、各自で想定した課題を付せんに書き、近くに座っているメンバーで整理・絞り込みを行った(写真2)上で、全体で整理した。その結果、7つの課題に整理された。取り組みたい課題の希望を尊重した上で、人数のバランス、学校種並びに学卒院生と現職院生のバランスを考慮し、3名から5名のチームを編成した。

 その後、チームごとに分かれて、初日午前中の学びやこれまでの教職経験等を活かして、研修開発に取り組んだ(写真3・4)。テキストを開き、先進事例を参考に開発に勤しむ姿が見られた。現職院生と学卒院生が混ざり合ったチームが多かったが、学卒のハンデを感じさせない協働的で温かい雰囲気が教室中に漂っていた。

 2日目朝イチは、チームごとの最終調整と発表準備を行った。実際に研修の際に行うワークショップの成果物を作成し、それを研修の導入に使うプレゼンに入れようとするチームが多かった(写真5)。初日の講義での「ワークショップ型研修の成功の秘訣の一つは、研修の冒頭でゴールイメージとプロセスイメージを具体的に示すこと」が早速生かされている。説明の練習を始めるチームも見られた。

Zoomによる合同授業・研究会の実現

 十分な準備の後、Z研との合同授業兼研究会を行った(写真6)。Z研のメンバー15名は各自、自宅や職場から参加したが、鳴門教育大学のネットワーク環境の問題から受講生は筆者のPCからの参加となった。何れのチームも筆者が指定した研修プランシート2に基づき作成するとともに、実際の校内研修での活用を想定してプレゼンテーションも準備していた。各チームのテーマや内容を踏まえ、端末の導入から活用の順に発表してもらった。各チームの持ち時間は15分、発表5分、質疑・助言8分、交代2分とした。

 午後は、Z研メンバーからの質疑・応答や助言を踏まえての加筆修正に充てた。全てのチームが14時過ぎには完成させていた。授業の翌日には受講生以外の他者(Z研のメンバー)に伝えるという目的意識が明確だったために初日における完成度が高かったこと、先進校の具体事例を基に課題自体を自分たちで整理するという過程を経ていたため、取り組む研修テーマが具体的かつ明確であったことが大きく影響していると考えられる。何れの成果物も小中高を問わず研修を実施する上で有効なものに仕上がっている。資料3は開発された研修テーマの一覧(筆者の判断で少し表現を変えたものもある)である。成果物の概略を紹介する。

 ①は「学習面」と「生活面」における端末の活用と手立てを出し合い、整理し共有化を図る研修である。手法として「マトリクス法」を用いている。

 ②は全教職員でGIGAスクール構想に取り組むための共通理解と実現のための組織化を図ろうとする研修である。「学習指導(授業づくり)」「学習指導(オンライン・宿題)」「生徒指導(情報リテラシーカリキュラム作成)」「生徒指導(情報モラル・学習規律・ルール)」「条件整備(管理・スキルアップ)」の5つが想定されている。初日の堀田氏の話が反映している。

 ③は「概念化シート」を用いてデジタルとアナログのメリット・デメリットを整理した上で、各種機能(カメラやGoogleフォト、Scratch、マップアプリなど)を使った遊びを体験するワークショップを提案している。④はZoomに絞って基本操作を習得する研修である。

 ⑤は各自で実際に授業で使ってみて、その成果を出し合い、整理し共有化を図る研修である。事前に配付するための「お願い」も作成してある。さすが現職だ。プレゼンではマトリクスシート例(写真7)も提示している。横軸を「導入」や「自力解決」等の授業の流れ、縦軸を「実践していること」「実践したいこと・できなかったこと」等としている。

 ⑥は、⑤の中高版。教科別チームに分かれ、PC端末を活用した授業の指導案を作成する研修である。

 ⑦は同じ中学校区内の小中学校の児童会・生徒会のリーダーを集めた研修である。PTA役員も参加する。PC端末導入により「困ること」と「よりよく活用するために気を付けること」を子どもたちに考えさせ、その後各校に持ち帰って、各種委員会で話し合い、全校的に取り組ませる計画である。資料4は子ども用のプレゼンの一つであるが、前半と後半のワークショップを連動させている。

 これらのチームによる研修プラン開発以外に、個人による「子どものワークショップ」案は課題レポートとして28本提出されている。「理科が楽しくなる魔法の時間」や「ICT端末を使った英語授業での活用を知ろう! 考えよう! 生み出そう新しいアイディア!」「自分たちで動き出す委員会プランをつくり出せ!」「心ひとつに! 奏でよう最高のハーモニー〜『合唱コンクール』中間振り返り〜」「運動会の応援合戦(異学年集団のリーダーとして)」「みんなで作る夏休みのしおり」「私たち・ぼくたちがリーダー! 最高の最高学年を目指そう!!」「自分で考え、自分の言動に責任をもて! めざせ、横浜スタジアム!」など、教科等の授業や学校行事、委員会活動、部活動等、実に多様なアイデアが出てきた。

 何れも手法である。学校種や教科等に関係なくアレンジが可能である。本授業では毎年、全ての成果物を共有している。教職大学院での学びが今回も各学校現場に還元されることを願っている。

[参考文献]
1 村川雅弘著『ワークショップ型教員研修 はじめの一歩』教育開発研究所、2016年
2 前褐書1、「研修プラン(書式)」、p.145

 

Profile
村川雅弘(むらかわ・まさひろ)
鳴門教育大学大学院教授を経て、2017年4月より甲南女子大学教授。中央教育審議会中学校部会及び生活総合部会委員。著書は、『「カリマネ」で学校はここまで変わる!』(ぎょうせい)、『ワークショップ型教員研修はじめの一歩』(教育開発研究所)など。

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