怒りを笑顔に! 教師のアンガーマネジメント
怒りを笑顔に! 教師のアンガーマネジメント 第2回 自尊感情に訴える「叱る言葉」◆叱られているのに、心の底が温かくなる叱り方◆
生徒指導
2021.08.06
怒りを笑顔に! 教師のアンガーマネジメント
大阪市の小学校で現在6年生の担任と生活指導主任を務める松下隼司氏は教員18年目。怒りの感情のコントロールが苦手で、これまで子どもを必要以上に怒って苦しめてしまい、自分自身も後悔してしまうことがあったといいます。そんな松下氏はその後一念発起して「アンガーマネジメント」の資格を取得。同じ失敗を繰り返さないよう工夫している事例を6回に分けて紹介していただきます。
自尊感情に訴える「叱る言葉」
◆叱られているのに、心の底が温かくなる叱り方◆
1.「君らしくない」と叱る
次の2つの叱り方を読み比べてみてください。
- ① また、友達に悪口を言ったのか。さっきの休み時間も言ったよね。 自分がしたことを反省していないから、同じことを繰り返すんだ。今回やったことをしっかり反省しなさい。
- ② 今回は君らしくない発言で驚いているよ。君の普段の優しさはよく分かっているから心配していないけど、念のために聞かせてね。 いつも通り、友達に優しく接してください。
叱り方として良いのは②だと、気づかれたと思います。
①と②の大きな違いは子どもに対する「前提」です。
①は否定的な評価が前提にあります。
一方、②は「君らしくない」 「普段の優しさはよく分かっている」と 好意的な評価を前提にしています。
①の叱られ方をした子どもは、「自分は先生に良く思われていない」と受け止めます。無気力になったり、反発を感じたりします。
②は、叱られても「先生は、自分を良く思ってくれている」という 安心感が子どもにあります。「先生の期待に応えたい」と思います。
「自分は先生に認められているから叱られている」
と、子どもに感じ取ってもらうために好意的な評価を叱る前にします。
「君でさえ〇〇できなかったんだね、よほど大変なことだったんだね」 「どうしたの? いつもは〇〇なのに」という枕詞もあります。
また、叱られた子どもの自尊心が傷つかないように、大勢の人前で叱らないようにも配慮します。
*大勢の前で叱るのは公開処刑のようなものです。
2.「君ならできるはずだ」と叱る
次の2つの叱り方を読み比べてみてください。
- ①どうして、こんなこともできないの!?
- ②君ならできるはずだよ。
叱る目的は「相手の成長」のためです。
あるべき姿と現在のギャップを埋めるためです。
「どうして、こんなこともできないの!?」は、子どもの能力を否定しています。子どもは、自信を失い、「嫌味な教師だ」と思います。
教師自身が、管理職に言われて「嫌だな」と思わない叱り方をします。
『かりてきたネコ』という標語は、嫌味な叱り方にならないポイントを楽しく覚えられます。
- 【か】感情的にならない
- 【り】理由を話す
- 【て】手短に
- 【き】キャラクター(性格や人格)は責めない
- 【た】他人と比較しない
- 【ね】根に持たない
- 【こ】個別に叱る
一方、②は、教師への安心感や期待感を子どもに与えます。
他にも、「教師の期待に応えたい」という子どもの気持ちを呼び起こす叱り方があります。
- 「せっかく〇〇なのに、もったいない」
- 「君の力はそんなものじゃない」
- 「期待しているからこそ、言うんだよ」
「君ならできるはずだよ」と言ったときに、「できない」と言う子どももいます。その時も、感情的にならず、また、前のページの「君らしくない」と「君ならできるはずだ」を合わせて使うこともできます。例えば次のようにです。
- 教師「友達に悪口を言うなんて、君らしくないね。」(事情を聞く。)
- 教師「君ならきっと悪口を言うのを我慢できるよ。」