●特集1 2024年問題と地域
長時間労働の是正や多様で柔軟な働き方の実現をめざして2018年に制定された働き方改革関連法。19 年から順次適用されていたが、5年の猶予期間が設けられていた自動車運転業務、建設業、医師について、24 年4月から時間外労働の上限規制が適用される。生産年齢人口が減少し、社会全体の人手不足が深刻な中で、労働環境の厳しさが指摘されてきたこれらの分野では、この規制強化によってさまざまな問題=いわゆる「2024 年問題」が起きることが予想され、業界のみならず、社会としてどう向き合うかが問われている。特にトラック輸送などの物流はもはや日本社会に不可欠なインフラであり、サービスの質や量の低下や価格の上昇は、他産業や人々の暮らしにも大きな影響を及ぼす。すでにそこまで迫っている2024 年問題に地域や自治体はどう対応していくのか。今月は考えてみたい。
■2024年問題と働き方改革/首藤若菜
首藤若菜
立教大学経済学部教授
2024年問題に対応していくためには生産性を高めることが重要。その際、競争だけで解決するのではなく、協働してより効率的な運送のあり方を考えていかなければいけないし、自治体などが地域の物流のあり方を全体で考え、全体最適をつくっていくことが、生産性を上げるためには必要なのではないか。
■物流危機で地域に何が起きるか/大島弘明
■持続可能な物流と地方自治体/矢野裕児
■建設業の2024年問題をどう乗り越えていくか/蟹澤宏剛
■医療の働き方改革と自治体病院/伊関友伸
〈取材リポート〉
■ITを活用した共同輸配送サービスの実現で2024年問題に対応/岐阜県
●特集2 都市型水害にどう備えるか
今年も記録的な大雨による災害が相次いでいる。7月上旬から中旬にかけて九州北部や北陸地方を中心に梅雨前線や線状降水帯などにより、浸水や土砂災害が発生。さらに、7月中旬には、秋田県を中心に東北地方で大雨が続き、多いところで総雨量400㎜を超え、河川の氾濫などが相次いだ。特に、秋田市では氾濫した川から離れた中心市街地でも、内水氾濫による大規模な浸水が起き、甚大な被害が出ている。気候変動が進む中で豪雨災害は全国各地で発生しており、リスクは全国どこの地域にもある。特に河口部や低地に大都市が集中する日本では「都市型水害」はどこで起きてもおかしくはない。こうした都市型水害にどう備えるか考えてみたい。
■2023年7月秋田豪雨で何が起きていたか/渡邉一也
■「都市型水害」への自治体の備え~トップの役割とタイムライン/鍵屋 一
キャリアサポート連載
■管理職って面白い! コンフリクト(葛藤)/定野 司
■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
若いうちからの「貯縁」は将来必ず役に立つ/後藤好邦
■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇
■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/瀬田恵子
■自治体DXとガバナンス/稲継裕昭
■自治体職員なら知っておきたい!公務員の基礎知識/高嶋直人
■そうだったのか!!目からウロコのクレーム対応のワンヒント/関根健夫
■自治体法務と地域創生──政策法務型思考のススメ
/釼持麻衣(関東学院大学地域創生実践研究所)
■キャリアを拓く!公務員人生七転び八起き/堤 直規
■〈リレー連載〉Z世代ズム~つれづれに想うこと/中西咲貴■ただいま開庁中!「オンライン市役所」まるわかりガイド/佐藤麻紀
■地域の“逸材”を探して/寺本英仁
●巻頭グラビア
自治・地域のミライ
斉藤 猛・東京都江戸川区長 人口減少社会を見据え、「ともに生きる」地域をつくる
斉藤猛・東京都江戸川区長(60)。職員として福祉に携わってきた経験から「本当に大変な人は声を上げることができない」と考え、ひきこもりの全数調査など積極的にアウトリーチする行政を展開する。
取材リポート
□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
「美味しいのに安い」という不当な扱い【汚染処理水放流(8)福島米】
原発事故、続く模索42
福島県の農産品で今も風評被害が深刻なのは桃、牛肉、そして米だ。米は全国有数の産地として知られているのに、原発事故後は価格が低迷。市場では「美味しくて安い米」という不当な扱いが定着してしまった。これでは農家の暮らしが成り立たない。県は新しいオリジナル品種「福?笑い」を起爆剤にして転換を図りたい考えだ。果たして風評は吹き飛ばせるだろうか。
□自治体政策最前線──地域からのイノベーション
起業志民プロジェクト
──ICT起業家の育成を推進し地域課題解決と新産業創出を図る(岩手県八幡平市)
岩手県八幡平市は、ICT関連の職を求める若者の転出に歯止めをかけるため、新たなビジネスの創出をめざした「起業志民プロジェクト」を進めている。無償でプログラミング言語が習得できる短期集中の「スパルタキャンプ」を開催し、その後も事業化を支援して起業家の育成を図る取り組みだ。市内に十数社が立ち上がり、産学官連携で遠隔医療等に取り組む「メディテックバレープロジェクト」が始動するなど、活発な動きが展開されている。
●Governance Topics
□関東大震災から100年を経て、人々には何が受け継がれてきたのか──第54回『都市問題』公開講座
□3市の団体が連携し、休眠預金を活用したローカルアクションを支援──「ローカルな総働で孤立した人と地域をつなぐ」事業成果報告会
□縮退局面の中山間地域の未来をどう展望するか──中山間地域フォーラム設立17周年記念シンポジウム
連載
□自治・分権改革を追う/青山彰久
□新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之
□市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照
□地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚
□“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘
□地域経済再生の現場から~Bizモデルの中小企業支援/藤田敬太(ゆざわ-Biz)
□自治体の防災マネジメント/鍵屋 一
□市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹
□公務職場の人・間・模・様/金子雅臣
□生きづらさの中で/玉木達也□議会局「軍師」論のススメ/清水克士
□地方議会シンカ論/中村 健(早稲田大学マニフェスト研究所)
□「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭
□From the Cinema その映画から世界が見える
『福田村事件』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『著者に訊く!/『客観性の落とし穴』村上靖彦]
カラーグラビア
□つぶやく地図/芥川 仁
声を聴き祈る、藍への敬い──岡山県久米郡美咲町
□技の手ざわり/大西暢夫
素材から作る使い続けられる箒──【松本箒職人】米澤資修さん(長野県塩尻市)
□わがまちDiary──風景・人・暮らし
大自然が織り成す絶景 山の稜線を流れ落ちる滝雲(新潟県魚沼市)
□本日開園中 FUN!FUN!動物園③/鶴岡市立加茂水族館(山形県鶴岡市)
【特別企画】
■幕張メッセに日本のデジタル化をリードするキーパーソンが集結!──地方自治情報化推進フェア2023
■JTBの地域交流事業
地域・旅行者・社会の「三方よし」目指す
■DATA・BANK2023 自治体の最新動向をコンパクトに紹介!
※表紙写真は「枝折峠の滝雲」
*「ザ・キーノート」は休みます。