ICTを活用した人材育成への挑戦〜「Web講義」〜『月刊 税』2024年7月号

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2024.07.05

ICTを活用した人材育成への挑戦〜「Web講義」〜
(特集 地方税務行政DX化のミライ 業務改善事例)


公益財団法人 東京税務協会

(『月刊 税』2024年7月号)


 公益財団法人 東京税務協会は、地方税制度の研究、情報交換、税知識の普及啓発の推進の専門機関として、昭和27年に、東京都、特別区、都内市町村を会員として設立されました。他にも、地方自治体の税務職員に向けた研修事業や、実務図書の出版等、会員団体を中心とした地方税実務を側面から支援してきました。

 令和3年度からは、地方自治体の税務初任者向けの研修教材として、「Web講義」の配信を開始し、多くの団体にご利用いただいております。令和6年4月からは、講義内容やラインナップをリニューアルしました。

1 「Web講義」の特長

 「Web講義」では、税務初任者向けに、基礎知識や根拠法を分かりやすく解説しています。

 オンデマンド配信なので、インターネット環境さえあれば場所を選ばず学習できます。業務繁忙の時期など、職場での研修が実施できなくても、各自の業務スケジュールに合わせて学習時間を自由に設定でき、最大で1年間(4月〜3月)何度でも繰り返し学習できるなどの特長があります。

 令和5年度は200を超える地方自治体等の団体が利用。その8割が、人口20万人以下の市、および町村であり、道府県主催の集合研修や、外部機関の研修等への参加が難しい団体となっています。

2 令和6年度に大幅リニューアル!

 「Web講義」は、令和6年4月配信から大幅にリニューアルしています。スライドでの説明を中心とした内容から、アニメーションやイラストを活用した動画へと刷新。専門的な税の講義を、税務初任者の方々がより理解しやすいものになっています。その他進化した点は次のとおり。

①講義時間の見直し:各科目5時間程度とし、さらに章ごとに確認小テストを導入。これにより、講義への集中力が増し、理解度がその場で確認できます。②講義内容の字幕表示:全編字幕表示のため、視聴時に音声が利用できない環境でも受講可能です。③講義音声の高質化:プロのナレーターを起用することで、講義が聞き取りやすくなりました。④科目選択の多様化:ご要望にお応えして、全税目(8科目)セットの他、税目別セットをご用意し、価格面含めご利用しやすくなりました。また市町村(政令市、中核市、特別区を除く)を対象に1アカウントからの選択も可能です。

3 新たなスタイルの人材育成に向けて

 近年、頻発する豪雨や震災等への災害対策、人口減少社会への対応、行政のデジタル化といった様々な課題への対応が求められ、施策に必要な財源確保の重要性とともに、税務部門の責任と期待は増しており、税務実務を担う人材の育成は不可欠となっています。

 当協会のオンデマンド型「Web講義」を税務初任者の人材育成等にご活用いただき、地方自治体の税務行政の一層の充実に寄与できれば幸いです。なお、当協会のWEBサイトにて、各税目のサンプル動画を掲載していますので、この機会にぜひご覧ください。

≪「Web講義」価格≫

  全税目(8科目)セット 税目別セット(一律)
5アカウント 33,000円(税込) 16,500円(税込)
3アカウント 22,000円(税込) 11,000円(税込)
1アカウント ※ 11,000円(税込) 5,500円(税込)

※1アカウント購入は、一般市町村(政令市、中核市、特別区を除く)が対象。 ≪税目別セットの内訳≫ 〇資産税セット:固定資産税課税・家屋評価・土地評価・償却資産・地方税法総則 〇住民税セット:個人住民税・法人住民税・地方税法総則 〇滞納整理セット:滞納整理・地方税法総則

導入事例 「Web講義」の導入により税務課職員の基礎的な知識レベルの底上げに取り組む ―埼玉県神川町―

埼玉県神川町
面積47.40㎢、人口約1万3,000人。歳入約59億円、そのうち町税約17億円、固定資産税が5割、住民税が3割である。埼玉県の北西に位置し、神流川を挟んで群馬県藤岡市と接している。西部には山間地帯が広がり、晩秋に可憐な花をつける「冬桜」で名高い城峯公園、神流川の景勝地「三波石峡」など美しい水と緑が広がる自然豊かな町だ。また、中央部から北部の農業地帯では「梨」の栽培も有名で、実りの時期にずらりと並ぶ直売所の風景は季節の風物詩となっている。

 全国の自治体、特に小規模市町村が抱える課題の一つが、職員研修。通常業務との兼ね合いで、効率的な研修を行うためには、どのような方法があるのか。なかでも、法律に基づいた厳格な対応が求められる税務部門は、より正確でしかも効果的な研修が欠かせない。独自の研修はハードルが高いという小規模市町村にとって、その悩みはなおさらのことだ。

 そうした要望にフィットした研修システムとして、このところ注目されているのが、東京税務協会が提供する「Web講義」。特に、必要不可欠な地方税の基礎知識を習得するのに、的確でしかも手頃な、まさに痒いところに手が届くプログラムが揃っていると、近年その評価が高まっている。

 人口約1万3000人の、埼玉県北西部に位置する神川町も、そうした悩みを抱えていた自治体の一つだったが、「Web講義」の導入で、ハードルをクリア。さらに、研修の効果を高める独自の工夫も取り入れて、税務運営の円滑化につなげている。

基礎的な税務研修の必要性を強く実感

 「税務課に配属された当時は、研修予算の枠も無く、継続的な税務研修は行われていませんでした」と語るのは、神川町税務課の大畠由行主査。実は、税務課に「Web講義」を導入した立役者なのだ。大畠さんは、令和3年4月に、農業関係の部署から税務課に異動、資産税の担当となった。つまり、税務はまったくの初心者。しかも、4、5月は、固定資産税にとって納税通知書の発送や納税証明の発行など、年度替わりの最も多忙な時期である。大畠さんは、馴染みの薄い税務用語が飛び交うなか、間違いは絶対に許されないプレッシャーを抱えながら、課の先輩や他部署の税務経験者に実務上の不明な点を相談するなど「右往左往の毎日でした」と、大変だった当時を振り返る。定期的に人事異動がある地方税の現場では、国税に比べ税務のベテランが少ないのが実情。ましてや、小規模市町村では、経験者の大半が入れ替わることも稀ではない。

 ちなみに、神川町の歳入の約29%を占める町税のうち、ほぼ半分が固定資産税収入。その税務を担う職員は11名で、課長と課長補佐を除く9名が町民税、資産税、管理(収納)の3つの係に分かれている。大畠さんが担当する資産税は2名体制だ。こうしたタイトな条件のなかで、体系的な税務研修を実施するのは、正直、どの市町村でも難しいといわざるを得ない。

 大畠さんも、当初、国や県が行う税務研修などに参加したものの、対面の研修では、参加者のレベルもまちまちで、初心者にとっては、質問することすらままならず、まるで「準備運動もしていない草野球の選手が、プロと試合をするようなもの」と、苦い思いを経験した。

 「まずは、基礎知識の習得を…」。この時、その必要性を強く感じた大畠さんは、早速リサーチを開始。令和3年は、ちょうど新型コロナ禍で、対面の研修が減少し、リモート研修が増加する環境にあったが、そのリモート形式こそ、基礎知識を習得するのに適しているのではないか。大畠さんは、苦い経験からリモートの利点に着目。そしてヒットしたのが、東京税務協会の「Web講義」だった。

基礎学習に最適な要件が揃っている

 ではなぜ、数ある研修サイトのなかから、東京税務協会の「Web講義」を選択したのか?導入の決め手となったのは、何といってもコストパフォーマンスの良さだ。費用と時間と内容、この3つの要件が揃っている。

 なかでも、まず目を引いたのが費用。税務研修予算の枠がなかった神川町にとって、3つのアカウント(ID・パスワード)で2万円(当時)は、課内決裁で導入できるありがたい価格。「費用が安価のため別の予算から賄うことができました」と、内部手続上の手軽さを強調する。

 受講生は、地方税法総則や滞納整理のほか住民税、固定資産税など、どの税目も視聴できる(全税目セット購入のみ)ので、担当外でも地方税の基礎がすべて学べる、まさに基礎研修にはもってこいのシステムだ。そのため、「担当者が不在の時でも、納税者からの初歩的な質問には、誰でも答えられるようになりました」と、大畠さん。導入による効果は大きいようだ。

 さらに、視聴期間も、通年と長い。同時期、併用して導入した研修サイトでは、「復習しようと思った時には、すでに期限切れ」という事態も。その点でも、使い勝手はいい。

 費用面だけではない。基礎知識を習得するには、いつでも、どこでも、何度でも学べることが必須条件だが、「Web講義」は、配付されたID・パスワードがあってネット環境が整ってさえいれば、スマホでも見ることが可能だから、学習する場所も時間も選択は自由。自宅でも随時見ていた大畠さんは、付いている倍速機能の活用で、さらに時間を有効に使えたと、コストパフォーマンスの優れたポイントにも触れる。

 もちろん、分かりやすいイラストや画像、図表などもふんだんに使用されていて、初心者には理解しやすい画面構成になっているので、視聴した職員の評判は良好のようだ。今年度からはさらにブラッシュアップされているとのこと。「神川町のような規模で、類似の事情を抱えている市町村だけでなく、全国どの自治体でも、基礎知識を学ぶには、利用しやすい研修システムだと思います」と、これは大畠さんの実感である。


埼玉県神川町税務課主査の大畠由行さん

勉強会の導入でWeb講義の効果UP!


 しかし、いいことばかりではない。いつでも見ることができるということになると、安心感から、ついつい視聴が後回しになることも。業務の都合などもあり、時間配分や見るか見ないかの判断は個人に任せるしかないのだが、「折角導入した素晴らしい研修システムだけに、もっと活用してもらいたい」というのが、大畠さんの率直な思い。配信される「Web講義」には、全体的な視聴状況をチェックする管理プログラムも備えられているし、定期的に学習成果を確認するテスト機能もあり、自己評価も可能ではあるが、それが、視聴率を後押しする決め手にはなりにくいことも、確か。

 そこで大畠さんは、昨年から、「Web講義」をベースにした定期的な勉強会を立ち上げ、研修の成果を課内で共有することにした。勉強会での発表が、学習の一つの到達目標にもなると考えたからである。

第一章 滞納整理の基本 第1節 滞納整理とは
アニメやイラストを活用し、より分かりやすくなった。

 

 「お互いに不明だった点や疑問を、その場の討議で確認し合えるので、情報交換の場としても活用できます」と、「Web講義」の学習効果を高める工夫に磨きをかける神川町。それは、東京税務協会の「Web講義」に、活用の広がりを期待させる事例でもあるといえそうだ。


「Web 講義」はいつでもどこでも受講可能

 

<問合せ先>
公益財団法人 東京税務協会企画広報課
Tel:03-3228-7998
E-mail:webkogi@zeikyo.or.jp
東京税務協会WEBサイト:https://www.zeikyo.or.jp/

 

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