【法令情報】立法担当者による緊急解説!~デジタル改革関連法の概要~

NEW時事ニュース

2021.07.20

 令和3年5月19日にデジタル改革関連法が公布されました。本記事では、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室・デジタル改革関連法案準備室の主査・弁護士である長島寛人氏に、各法の概要と地方公共団体における業務への影響について解説していただきました。

はじめに

 ①デジタル社会形成基本法、②デジタル庁設置法、③デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律、④公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律、⑤預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律(令和3年法律第35号~39号)(以下、「デジタル改革関連法」と総称する。)1は、法案として令和3年2月9日に閣議決定され、第204回国会に提出された後、国会での審議を経て、同年5月12日に可決、成立し、同月19日に公布されました。

 本稿は、デジタル改革関連法の概要を解説するものですが、各法の詳細な内容については、デジタル庁(準備中)のHP(https://www.digital.go.jp/laws)等に掲載している条文を参照して下さい。

 なお、本稿の文中意見にわたる部分は、あくまで執筆者の個人的見解を述べるものであり、執筆者の所属組織の公式な見解を述べたものではないことをあらかじめお断りしておきます。

注1:デジタル改革関連法には、総務省が法案を提出し、総務委員会で審査が行われた地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和3年法律第40号)が含まれますが、本稿では内閣官房・内閣府が法案を提出した5法について解説を行います。

デジタル社会形成基本法について

⑴制定の趣旨
 今般の新型コロナウイルス感染症への対応においては、行政や民間におけるデジタル化の遅れや人材不足、煩雑な手続きや給付の遅れなどの様々な課題が浮き彫りになりました。このような課題を解消するため、デジタル社会形成基本法は、高度情報通信ネットワーク基本法(以下、「IT基本法」という。)のいわば後継法として、「誰一人取り残さない」「人に優しいデジタル化」といった考え方の下、デジタル社会の形成に向けた基本理念、施策の策定に係る基本方針等を定めたものです。

⑵概要
 まず、目指すべき社会としての「デジタル社会」を、「インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて自由かつ安全に多様な情報又は知識を世界的規模で入手し、共有し、又は発信するとともに、先端的な技術をはじめとする情報通信技術を用いて電磁的記録として記録された多様かつ大量の情報を適正かつ効果的に活用することにより、あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展が可能となる社会」と定義し、この「デジタル社会」の形成に関する基本理念を規定しました。

 また、国・地方公共団体及び事業者の責務等を規定しておりますが、これらのうち事業者の責務(第16条)はIT基本法の内容に追加して今回新たに規定したものとなります。

 さらに、デジタル社会の形成に関する施策の策定に当たっては、多様な主体による情報の円滑な流通の確保(データの標準化等)、アクセシビリティの確保、人材の育成、生産性や国民生活の利便性の向上、国民による国及び地方公共団体が保有する情報の活用、公的基礎情報データベース(ベース・レジストリ)の整備、サイバーセキュリティの確保、個人情報の保護等のために必要な措置が講じられるべき旨を規定しており、これらの基本方針に則って策定された施策を強力に推進する司令塔としてのデジタル庁を内閣に設置し、政府がデジタル社会の形成に関する重点計画2を作成する旨規定しました。

 なお、地方公共団体に関するものとしては、地方公共団体の責務を規定した第14条、情報システムの共同化又は集約の推進などを規定した第29条、重点計画を定める際の地方六団体への協議を規定した第37条第5項などの規定も確認しておくべきでしょう。

注2:令和3年6月18日に、デジタル社会形成基本法の施行(同年9月1日)を見据え、重点計画に現時点において盛り込むべきと考えられる事項を示しつつ、IT基本法第36条第1項に規定する重点計画等として策定する「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定しました。

デジタル庁設置法について

⑴制定の趣旨
 デジタル庁は、前述した新型コロナウイルス感染症への対応で明らかとなった行政のデジタル化の遅れや近年のデータの利活用の重要性の高まりに対応するため、行政の縦割りを打破し、マイナンバーの利用促進やベース・レジストリ、ガバメントクラウドの整備等のデジタル化の基盤構築に取り組むとともに、これらの基盤の上で、準公共分野や民間分野を含め、社会全体のデジタル・トランスフォーメーションを継続的に進めていく組織であり、デジタル社会の形成を強力に推進する司令塔としての役割が求められています。

⑵概要
 そのため、デジタル庁については、内閣総理大臣を長とする組織として内閣に直接置くこととし(第2条・第6条)、その任務は、デジタル社会形成基本法に定めるデジタル社会の形成についての基本理念にのっとり、デジタル社会の形成に関する内閣の事務を内閣官房とともに助けるとともに、デジタル社会の形成に関する行政事務の迅速かつ重点的な遂行を図ることとしています(第3条)。

 そして、デジタル庁の所掌事務については、デジタル社会の形成のための施策に関する基本的な方針に関する企画立案・総合調整に加え、デジタル庁固有の事務が規定されており(第4条)、この事務の中には、地方公共団体の情報システムの整備及び管理の基本的な方針の作成及び推進に関すること(同条第13号)が含まれます。その上で、デジタル庁による司令塔機能が適切かつ強力に発揮されるべくデジタル庁の長である内閣総理大臣を助けるデジタル大臣を置き、かつ、デジタル大臣に勧告権を付与することなどによりデジタル庁による総合調整機能の実効性を確保することとしています(第8条)。

 さらに、デジタル庁においては、長である内閣総理大臣及びデジタル大臣に加え、副大臣及び大臣政務官を置く(第9条・第10条)とともに、内閣任免の特別職としてデジタル監等を置くこととしています(第11条)。また、デジタル庁は、情報通信技術の急速な発展や行政需要の変化に的確に対応しながら、社会全体のデジタル・トランスフォーメーションを進めていくことが求められており、業務の分配が固定的な局課制ではなく、柔軟な業務の分配を可能とする組織形態を採ることとしています(第13条)。

 デジタル庁は、令和3年9月1日に発足する予定です(附則第1条)。

デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律について

⑴デジタル整備法の背景
 デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(以下、「デジタル整備法」という。)は、デジタル社会形成基本法に基づく「デジタル社会」の形成に向けた対応として必要となる法制上の措置(新法を除く。)について、59法律(附則改正を除く。)を一括改正する整備法として立法したものです。

 多種・多様なデータを扱うための情報通信技術の進展により、データ利活用の重要性が高まり、データの適正な利用のためのルール整備が重要になっている一方、新型コロナウイルス感染症への対応の中で給付金の給付の遅れが生じるなど行政事務、行政手続のデジタル化の遅れが顕在化しており、行政事務・手続のデジタル化を進めて効率化を図ることが必要でした。また、コロナ禍において「押印のための出社」や「領収書保存のための出社」が議論となったことなどを背景に、押印・書面交付を義務付ける手続に係る制度を見直し、国民負担の軽減を図ることが必要とされていました。

 これらの諸課題の解決に向けて、デジタル整備法においては、①個人情報保護制度の見直し、②マイナンバーを活用した情報連携の拡大等による行政手続の効率化、③マイナンバーカードの利便性の抜本的向上、発行・運営体制の抜本的強化及び④押印・書面の交付等を求める手続の見直しを措置することとしました。

⑵デジタル整備法の概要
 ⓐ個人情報保護制度の見直し(個人情報保護法の改正等)
 個人情報の保護に関する法律、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律の3本の法律を1本の法律に統合するとともに、地方公共団体の個人情報保護制度についても統合後の法律において全国的な共通ルールを規定し、全体の所管を個人情報保護委員会に一元化することで、いわゆる2000個問題の解決を図ります。また、医療分野・学術分野の規制を統一するため、国公立の病院、大学等には原則として民間の病院、大学等と同等の規律を適用します。同時に、学術研究分野を含めたGDPR(EU一般データ保護規則)の十分性認定への対応を目指し、学術研究に係る適用除外規定について、一律の適用除外ではなく、義務ごとの例外規定として精緻化します。さらに、個人情報の定義等を国・民間・地方で統一するとともに、行政機関等での匿名加工情報の取扱いに関する規律を明確化します。

 ⓑマイナンバーを活用した情報連携の拡大等による行政手続の効率化
 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以下「マイナンバー法」という。)等の改正により、国家資格に関する事務等におけるマイナンバーの利用及び情報連携を可能とすることで、行政手続の際の添付書類を省略できるようにします。また、従業員本人の同意があった場合における転職時等の使用者間での特定個人情報の提供を可能とします。

 ⓒマイナンバーカードの利便性の抜本的向上、発行・運営体制の抜本的強化
 住所地市区町村が指定した郵便局において、公的個人認証サービスの電子証明書の発行・更新等を可能とします(地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律の改正)。また、公的個人認証サービスにおいて、本人同意に基づき、基本4情報(氏名、生年月日、性別及び住所)の提供を可能とするとともに、電子証明書について、マイナンバーカードに加え、スマートフォン(移動端末設備)への搭載も可能とすることで、スマートフォンのみによる行政手続等を実現します(電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律の改正)。加えて、マイナンバーカード所持者の転出届に関する情報を、転入地に事前通知する制度を設け、転出・転入手続の時間短縮化、ワンストップ化を図ります(住民基本台帳法の改正)。さらに、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)によるマイナンバーカード関係の事務について、国による目標設定、計画認可、財源措置等の規定等を整備します(地方公共団体情報システム機構法の改正)。

 ⓓ押印・書面の交付等を求める手続の見直し
 押印を求める各種手続についてその押印を不要とするとともに、書面の交付等を求める手続について電磁的方法により行うことを可能とします(48法律の改正)。

公金受取口座登録法及び預貯金口座個人番号利用申出法について

 マイナンバーと預貯金口座に関する法律として、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律(以下「公金受取口座登録法」という。)及び預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律(以下「預貯金口座個人番号利用申出法」という。)の2法が新たに制定されました。

⑴公金受取口座登録法
 公金受取口座登録法は、昨年のコロナ禍での突発的な給付金支給事務における課題などを踏まえたものです。昨年の特別定額給付金の支給事務においては、

 ・給付金を振り込むための口座情報を市区町村への申請時に申告していただく必要があり、申請者や、
         確認作業を行う職員などにとって、大きな負担となった
 ・特別定額給付金の支給事務が、法律に基づかない事務であったため、行政機関で、マイナンバーが利
         用できず、申請者等と給付対象者の照合作業が非効率なものとなった

という課題がありました。

 こうしたことを踏まえ、本法は、国民の皆さまに、任意で、公金受取のための口座をマイナンバーとともに登録していただき、その口座情報を災害や感染症などの緊急時の給付金等の支給に利用できるようにするものです。これにより、緊急時の給付金等の申請においては、

 ・口座情報の記載や通帳の写し等の添付
 ・行政機関における口座情報の確認作業等

を不要とすることができます。

 また、昨年の特別定額給付金の事務においては、行政機関で、マイナンバーが利用できませんでしたが、本法では、法律に基づかない緊急時の給付金の支給事務等であっても、内閣総理大臣が特定公的給付に指定すれば、マイナンバーが利用できることとしています。

⑵預貯金口座個人番号利用申出法
 預貯金口座への付番は、公正な社会保障給付や税負担の実現に資する観点から、マイナンバー法の改正により、平成30年1月より開始されていますが、預貯金者は、金融機関ごとにその窓口でマイナンバーを届け出る必要があり、また、金融機関による付番の案内をどのように行うかは各金融機関の判断に委ねられていました。預貯金口座個人番号利用申出法では、国民の皆さまが自らの判断で、金融機関の窓口だけでなく、マイナポータルからも付番することを可能とし、さらに、一回の付番の申出を行うことにより、本人が他の金融機関にお持ちの口座についても、個別に申出をする必要なく、預金保険機構を通じて付番することを可能としています。また、金融機関には、口座開設時等に預貯金者に対して付番の希望の有無を確認することを義務付けています。

 また、こうした口座への付番を前提に、相続人や被災した預貯金者の手続における負担軽減を実現するため、相続時や災害時に口座の所在を確認することを可能としています。これらを通じて、国民の皆さまの利便性を向上させることにより、付番の実効性を高めることとしています。

最後に

 デジタル改革関連法の中でも、地方公共団体に関係するものとしては、デジタル庁を中心とする地方の情報システムの統一・標準化の推進ガバメントクラウドの整備の推進、個人情報保護制度の見直し、マイナンバーカードの発行・交付の仕組みの見直しなど、様々な分野で規定が設けられています。

 デジタル社会の実現に向けて、地方のデジタル化は重要な政策課題であると認識しており、政府としては引き続き地方の意見をしっかりと聞きながら、取組を進めていきたいと考えております。

 

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 弊社では、『現行日本法規』「現行法令電子版Super法令Web」でいち早くこれらのデジタル改革関連法の内容を反映させるほか、番号制度・住民基本台帳事務ご担当者の必備書『番号法実務質疑応答集』などで、解説の見直し、新規問答の収録をし、皆様にお届けしてまいります。また、こちらの「ぎょうせいオンライン」でも改正情報を発信してまいりますので、ご覧ください。

 

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