月刊「税」

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巻頭言 税制鳥瞰図 空き家対策と地方税制 ― 固定資産税を中心に

NEW地方税・財政

2021.08.24

巻頭言 税制鳥瞰図
空き家対策と地方税制 ― 固定資産税を中心に

広島大学大学院人間社会科学研究科教授 手塚 貴大

『月刊 税』2021年4月号

地方税制の視点から空き家問題を考える

 最近では空き家の問題が言われる。空き家が景観を害したり、犯罪の温床になる等とすれば、それが撤去されることが望ましい。そこで、空き家の撤去の可能性について、本稿は特に地方税制の視点から議論したい。

 周知のように、固定資産税における住宅用地特例(以下、「特例」という)があり(地方税法349条の3の2)、これは、かねてから空き家の建つ土地には適用されない可能性があったが、実務上従前その適用除外がなされ難かったという(北村喜宣他編『空き家対策の実務』(有斐閣、2016年)13頁)。

 この点、所有者が自主的に撤去してくれればよいが、現実には奏功しない。何故なら、もし、空き家を撤去すれば、特例適用がなくなり固定資産税負担は増えるし、また適用を除外しても、さほど固定資産税負担が重くなければ、撤去費用と比較した損得勘定が可能だからである。しかも、土地所有者不明である場合には、特例の適用除外は意味を持たないとも言える。

 ここでいわゆる空家対策特措法の成立に触れるべきであろう。右法によれば、特定空家等には勧告(14条2項)がなされると、特例の適用が除外される(前掲地方税法該当条文)。結果として特例適用除外は固定資産税を強制的に空き家所有のコストとする。そもそも税制には政策実現機能もあり、特例適用除外も空き家撤去という目的実現の一手段と見做しうるが、特例適用除外は、住宅用地ではない土地に本則的課税を実現するためのものであり、政策税制論の枠内で議論すべきではない。とはいえ、かかるコストが低いと撤去のインセンティブは所有者に生じ難い。特例適用除外は、政策税制ではなくとも、納税者に対する税負担の効果が無視できない好例である。

空き家対策行政

 では、別の可能性を探ることもありうる。以下のような法定外税はどうか。空き家の存在により行政需要が生じるとし、空き家対策行政に充てるべく、特例適用除外と併せて、法定外目的税の創設を行うのである。例えば、具体的形態としては、納税義務者は空き家の所有者、課税物件は空き家の所有、課税標準・税率については、必要とされる行政コストを予測し、それを空き家の戸数で除すことにより、課税物件一単位当たりの税負担を設定するというものを仮定する。これにより、法律上空き家所有のコストを高める措置が講じられたことになる。しかし、少なくとも、所有者不明の空き家に対する課税の実効性がない以上、現実の制度として合理性を持つか否かは必ずしも明確ではないかもしれない。

 以上は税負担の引上げ政策であるが、固定資産税の税負担の減免もある。これは市町村で、一定の空き家を撤去した後の土地について、一定期間固定資産税の減免を行うものである。この固定資産税の減免は実質的には撤去費の補助とも考えられ、本則課税を行いつつの撤去費の交付では二度手間であるため、便宜である。以上のように減免策は相応の機能性を有すると思われるが、その正当化のため、税収の喪失を上回るメリットの獲得(空き家撤去の実現)が必要であるし、減免額の妥当性についてはその実効性から当否が判断されるべきであろう。さらに、減免の要件として空き屋バンクへの登録といった空き家撤去後の土地の有効活用の見込みを求めること(例、木更津市)、加えて、空き家の所在地にもよるが、撤去が計画性ある街づくりと結びつく場合に減免額を増額するといったメリハリをつけることもありうる。

 本稿は議論を税制に限定したが、空き家問題は、それに限らず、政策を総動員して考えるべき重要な問題であろう。

 

 

Profile
手塚 貴大 てづか・たかひろ
広島大学大学院人間社会科学研究科教授
 慶應義塾大学大学院法学研究科単位取得退学、広島大学助教授、同准教授を経て現職。専攻領域は行政法、租税法、租税政策論。主著として、『租税政策の形成と租税立法』(信山社、2013年)、『法人・企業課税の理論』(弘文堂、2017年)、「租税法律主義」日税研論集75号等。

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