徴収の智慧 第4話 膏血を絞る

NEW地方税・財政

2019.06.20

徴収の智慧

第4話 膏血を絞る

『月刊 税』2014年10月号

 「膏血を絞る」とは「こうけつをしぼる」と読み、その意味は、人が苦労して得たものを絞り取るというもので、転じて、重税を課すとか、税を厳しく取り立てるということである。もとより時代や場所は変われども、租税というものは、権力者から人民に対して一方的に課されるものであり、同時にまた、一方的に取り立てられるものであるところから、このような言われ方がされたのも、いわば悲しい宿命(さだめ)とでも言えるだろうか。

税制は国家等の財政的基盤

 しかし、その原型と目すべきものも含め、租税というものが、人類の歴史に寄り添って発展してきた事実を顧みれば、それもむべなるかなと思うのである。すなわち、国家等ー近現代の国家だけでなく、古代や中世の専制君主国家(ないしは、体制・集団)も含む(以下、同じ)ーを運営していくためには、古今東西を問わず、その財源確保が不可欠であり、そのための資金調達手段として租税(制度)というものが考案されたというわけである。欧米先進諸国やわが国では、今でこそ「租税法律主義」や「租税公平主義」といった民主的な租税原則に基づいた税制が確立しているものの、何千年にもわたる悠久なる人類の歴史を紐解いてみれば、これらの原則とて確立したのは、つい最近のことに過ぎない。とはいえ、それは人類が幾多の試練の末にたどり着いた至高の価値であり、今の時代に生きるわれわれ税務職員の責務として、これらの原則とそれに基づいた税制を実務の中で敷衍ふえん徹底させる必要があるし、さらには発展させていくことが期待されて もいると思う。

 「膏血を絞る」と似たような言い方として「苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)」という言葉もある。こちらもその意味は、「膏血を絞る」と似ていて、税金を厳しく責め取り立てるということである。これらの表現は、いずれもそのルーツ(語源)は、中国の故事にあるが、税にまつわるこうした厳しい表現が現代にまで伝わっていることからすると、いにしえの中国では、さぞかし苛烈な税の取立てが横行していたのであろう。

 かつて学生時代に、租庸調や地丁銀などといった古代から中世にかけて中国で行われていた税制について学んだ記憶のある方も多いことと思う。所変わってわが国においても、「年貢」(「田租」とか「貢租」などとも言われていたようである)という税制(の原型)があり、こちらの取立ても相当に厳しかったことが今に伝えられている。かの中国にしてもわが国にしても、何ゆえこのように厳しい税の取立てが行われていたのであろうか。

 恐らくそれは、時代を遡ること数千年にもなるであろうーー人類が集団生活を営むようになった頃から、政治的・軍事的な支配層の人々は、税制(その原型も含む)が国家等の存立の財政的基盤であることに気づいていたからではないだろうか。これを疎(おろそ)かにすれば、国家等は立ち行かなくなるからこそ、厳格な運用が求められるのである。ただ現代は、かつてのような専制君主国家の世ではなく、民主主義の世の中であるから、納税者でもある国民には基本的人権が保障されており、これを最大限尊重すべきであるというのが日本国憲法の精神である。したがって、冒頭に紹介したような、基本的人権が保障されていなかった頃の租税徴収の方法が現代社会で通用しないのは言うまでもない。

法律に基づいた適正な徴税

 ただ、時代は変われども、税制が国家等の存立の財政的基盤であることには変わりがなく、依然としてその重要性に普遍的な存在価値が認められるからこそ、現代のわが国においても、消費税をはじめとした税制に関する論議が国会で、そして市井でも、かまびすしく交わされているのであろう。そうだとすると、いにしえの中国で行われていたとされる「膏血を絞る」かのような徴税や、「苛斂誅求」な徴税は論外だとしても、法律に基づいた適正な徴税というものは、いささかも疎(おろそ)かにすることはできないし、これを怠ることは、国家百年の計を危うくする重大な不作為だと言わなければならない。

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