最新法律ウオッチング

月刊「地方財務」

最新法律ウオッチング―最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する法律(2022年11月18日から3か月以内に施行)

自治体法務

2023.02.13

※2022年12月時点の内容です
最新法律ウオッチング 第121回 最高裁裁判官国民審査法改正
(『月刊 地方財務』2023年1月号)

最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する法律

 2022年の臨時国会において最高裁判所裁判官国民審査法の一部改正法が成立した。

 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行われる衆議院議員の総選挙や、その後10年を経過した後初めて行われる衆議院議員の総選挙の際、国民の審査に付し、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は罷免されると憲法で規定されている。

 国外に住所を有する18歳以上の日本国民は、衆議院議員の選挙と参議院議員の選挙については、在外公館での投票等の在外投票が可能となっていたが、最高裁裁判官の国民審査については、在外投票の仕組みが設けられていなかった。その理由として、政府からは、国民審査の投票は、審査に付される裁判官の氏名を印刷した投票用紙の罷免を可とする裁判官に対する記載欄に×の記号を記載する方式で行われ、在外投票を認めた場合、投票用紙を印刷して国外に交付する手続が国民審査の告示後となる一方、在外公館での投票では、投票日の5日前までには投票用紙を送付しなければならないため、国民審査のための期間をほとんど確保することができず、技術的に実施不可能に近い状況にあると説明されていた。

 しかし、最高裁判所は、2022年5月、憲法は、主権者である国民の権利として審査権を保障しており、在外審査制度の創設には運用上の技術的な困難があるが、国民審査の公正を確保しつつ、在外国民の審査権の行使を可能にするための立法措置をとることが、事実上不可能ないし著しく困難であるとはいえず、在外国民に審査権の行使を全く認めていないことは、憲法に違反すると判断した。

 そこで、政府は、在外国民の審査権行使の機会を保障するため、在外投票を可能とする等の措置を講ずる最高裁裁判官国民審査法の一部改正案を国会に提出し、成立した。

最高裁裁判官国民審査法の改正

●在外投票
 国民審査について、在外選挙人名簿に登録をされている審査人による投票を可能とし、在外選挙と同様、在外公館等における在外投票、郵便等による在外投票、国内における投票を行うことができることとした。

 投票用紙には、点字による審査の投票に用いるものを除き、1から15までの数字を印刷するとともに、当該数字のそれぞれに対する×の記号を記載する欄を設け(この投票用紙は在外公館に配置しておくと説明されている。)、中央選挙管理会は、審査の告示の際に、審査に付される裁判官の氏名の告示順序を示す番号を告示することとした。その上で、審査人は、罷免を可とする裁判官については投票用紙に印刷をされた数字のうち当該裁判官に係る告示番号に相当するものに対する記載欄に自ら×の記号を記載し、罷免を可としない裁判官については投票用紙に印刷をされた数字のうち当該裁判官に係る告示番号に相当するものに対する記載欄に何らの記載をしないで、投票することとした。

●洋上投票等
 遠洋区域を航行区域とする船舶等の乗船中の船員等の審査の投票の機会を確保するため、洋上投票等を可能とする措置も講じられた。

 すなわち、遠洋区域を航行区域とする船舶等に乗船中の船員等が衆議院議員の総選挙と参議院議員の通常選挙において行うことができるファクシミリ装置を用いる投票方法である洋上投票等について、国民審査についても行うことができることとした。

●施行期日等
 この法律は、公布の日(2022年11月18日)から3か月以内に施行される。

 なお、2023年3月から5月までの間に任期が満了する地方公共団体の議会の議員や長の選挙等について、原則として、その選挙の期日を、都道府県と指定都市の選挙にあっては同年4月9日、指定都市以外の市、町村と特別区の選挙にあっては同月23日に統一をする臨時特例法もこの法律と同時に成立した。

国会論議

 国会では、在外国民のインターネットによる投票を求める声が多くなっているとして、その課題等について尋ねる質問があり、政府から、これまで、実証用のシステムを用いた検証を行うとともに、制度、運用面の論点の洗い出しを行ってきており、引き続き、こうした論点の方向性や、システムに必要な機能、システム構成などについての検討を行うこととしているが、導入に当たっては、マイナンバーカードの海外利用を前提とした確実な本人確認、二重投票の防止、投票の秘密保持、システムのセキュリティー対策などの論点について、確実な対応を行うことが必要となり、また、現在認められていない新たな投票方法を導入することが制度の根幹にも関わることから、各党各会派における議論を踏まえる必要があるとの説明がされた。

 

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