最新法律ウオッチング
最新法律ウオッチング ― 入管法・技能実習法改正(一部を除き、公布の日(2024年6月21日)から3年以内に施行)
自治体法務
2024.12.05
※2024年10月時点の内容です。
最新法律ウオッチング 第132回 出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律
(『月刊 地方財務』2024年11月号)
2024年の通常国会において、入管法と技能実習法の一部改正法が成立した。
近年の我が国の労働力不足は深刻であり、外国人材が経済社会の重要な担い手になっている一方で、国際的な人材獲得競争は一層激しさを増している状況にある。
従来の技能実習制度は、人材育成を通じた国際貢献を目的とし、労働力の需給調整の手段として行われてはならないとされていたが、技能実習を行う外国人である技能実習生が国内の企業等の貴重な労働力として受け止められており、制度目的と運用実態の乖離が指摘されてきた。また、技能実習生の転籍が制限されていること等による失踪や人権侵害といった課題も指摘されてきた。
政府は、これらを踏まえ、我が国が魅力ある働き先として選ばれる国になるという観点から、外国人が我が国で就労しながらキャリアアップできる分かりやすい制度に改めるとともに、人権侵害等の防止、是正等を図り、我が国の人手不足分野で活躍できる外国人材を確実に育成、確保するため、前記の改正法案を国会に提出し、成立した。
入管法・技能実習法の改正
●育成就労の在留資格
入管法を改正し、技能実習の在留資格に代わるものとして、育成就労産業分野で就労することを内容とする育成就労の在留資格を創設した。
なお、この育成就労産業分野とは、育成就労法(後述)において、特定技能の在留資格で就労可能な特定産業分野のうち、その分野に属する技能を我が国で就労を通じて修得させることが相当な分野をいうこととされた。
●育成就労制度
技能実習制度について定めていた技能実習法の題名を「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(育成就労法)に改めるとともに、法律の目的として育成就労産業分野で人材を育成し、確保することを明記した。
そして、政府は、育成就労産業分野の選定や、その分野で求められる人材に関する基本的な事項等を基本方針として定めることとした。この基本方針にのっとり、主務大臣である法務大臣・厚生労働大臣や育成就労産業分野を所管する関係行政機関の長等は、共同してその分野で求められる人材の基準に関する事項等を分野別運用方針として定めることとした。
その上で、外国人ごとに作成する育成就労計画の認定の仕組みを設け、業務、技能、日本語能力等の目標や内容、外国人が送出機関に支払った費用の額等に関する基準など、適正な受入れのための認定の基準等を定めた。
また、技能実習制度では、やむを得ない事情がある場合に限って実習実施者の変更を認めていたが、一定の要件の下で、育成就労外国人の意思による育成就労実施者の変更、すなわち転籍を可能とした。
さらに、監理支援事業を行う監理支援機関を設け、育成就労の適正な実施や育成就労外国人の保護を図るため、機能を十分に果たしていない機関を適切に排除することができるよう、その許可の基準等を定めた。
あわせて、育成就労の適正な実施や育成就労外国人の保護等を図るため、認可法人である外国人育成就労機構を設けることとした。同機構は、育成就労実施者の変更等を支援するための育成就労外国人と育成就労実施者との間の雇用関係の成立のあっせん等の業務を行うほか、入管法により、特定技能外国人に対する相談対応等の業務を行うこととした。
●永住許可の要件の明確化等
将来的に長期にわたり我が国に貢献する人材を確保する観点から、入管法による永住許可の要件について、入管法上の義務の遵守や公租公課の支払を明確化するとともに、これらを怠った場合に永住資格の取消しを可能とし、永住資格の取消しに伴う他の在留資格への変更についての規定も設けた。
●施行期日
この法律は、一部を除き、公布の日(2024年6月21日)から3年以内に施行される。
国会論議等
国会では、育成就労外国人の意思による転籍が可能となり、賃金水準の高い都市部に育成就労外国人が集中するのではないかとの指摘がされた。また、入管法上の義務の遵守や公租公課の支払を怠った場合に永住資格の取消しを可能とすることについて、重大な制裁であるにもかかわらず、立法事実が明らかでないとの指摘がされた。
これらを踏まえ、衆議院で、政府は、育成就労外国人が大都市圏その他の特定の地域に過度に集中して就労をすることとならないよう必要な措置を講ずる、永住資格の取消しに当たっては、外国人の従前の公租公課の支払状況や現在の生活状況等に十分配慮する等の規定を加える修正が行われた。