最新法律ウオッチング
最新法律ウオッチング―こども家庭庁設置法/こども基本法(2023年4月1日施行)
自治体法務
2022.12.05
※2022年10月時点の内容です。
最新法律ウオッチング 第120回 こども家庭庁設置法・こども基本法
(『月刊 地方財務』2022年11月号)
2022年の通常国会においてこども家庭庁設置法とこども基本法が成立した。
こどもに関する施策については、待機児童対策や幼児教育、保育の無償化、児童虐待防止対策など各般の施策の充実が図られてきたが、少子化の進行、人口減少に歯止めがかかっていない。
また、児童虐待相談や不登校の件数が過去最多になるなどこどもを取り巻く状況は深刻で、こどもに関する取組や政策を我が国社会の真ん中に据え、強力に進めることが急務とされる。
そこで、こどもを誰一人取り残さず、健やかな成長を社会全体で後押ししていくため、強い司令塔機能を有し、こどもの最善の利益を第一に考え、常にこどもの視点に立った政策を推進するこども家庭庁を設置する必要があるとして、政府は、こども家庭庁設置法案を国会に提出し、成立した。
また、このような組織法と相まって、こどもに関する様々な取組を講ずるに当たっての共通の基盤となるものとして、こども施策の基本理念や基本となる事項を明らかにすることで、こども施策を社会全体で総合的かつ強力に実施していくため、衆議院の議員立法によりこども基本法案が国会に提出され、成立した。
こども家庭庁設置法・こども基本法
●こども家庭庁設置法
こども家庭庁は、こども家庭庁長官を長として、内閣府の外局として設置される。そして、心身の発達の過程にある者(こども)が自立した個人としてひとしく健やかに成長することのできる社会の実現に向け、子育てにおける家庭の役割の重要性を踏まえつつ、こどもの年齢・発達の程度に応じ、その意見を尊重し、その最善の利益を優先して考慮することを基本とし、こどもとこどものある家庭の福祉の増進・保健の向上その他のこどもの健やかな成長とこどものある家庭における子育てに対する支援、こどもの権利利益の擁護に関する事務を行うことを任務とした。
その任務を達成するため、内閣府や厚生労働省で所管している子ども・子育て支援給付やこどもの保育、虐待の防止など、こどもの福祉や保健、子育て支援等に関する事務を移管するとともに、小学校就学前のこどもの健やかな成長のための環境の確保と小学校就学前のこどものある家庭における子育て支援に関する基本的な政策の企画・立案・推進、地域におけるこどもの適切な遊びと生活の場の確保、こどもの安全で安心な生活環境の整備に関する基本的な政策の企画・立案・推進、いじめの防止等に関する相談の体制その他の地域における体制の整備、こどもの権利利益の擁護等をつかさどるほか、こどもが自立した個人としてひとしく健やかに成長することのできる社会の実現に向けた基本的な政策に関する事項や結婚、出産、育児に希望を持つことができる社会環境の整備等少子化の克服に向けた基本的な政策に関する事項等の企画・立案・総合調整をつかさどることとした。
また、こども家庭庁長官は、所掌事務を遂行するために必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、説明その他必要な協力を求めることができることとした。
●こども基本法
こども施策の基本理念として、児童の権利に関する条約の4原則である差別の禁止、生命・生存・発達に対する権利、児童の意見の尊重、児童の最善の利益のほか、こどもの養育や子育てについての基本理念を定めた。
また、国や地方公共団体の責務、政府による年次報告やこども施策に関する大綱の策定、都道府県や市町村によるこども施策についての計画の策定の努力義務を定めた。
さらに、基本的施策として、こども施策に対するこども等の意見の反映、支援の総合的かつ一体的な提供のための体制の整備、関係者相互の有機的な連携の確保、こども施策の充実と財政上の措置等を定めた。
●施行期日
これらの法律は、一部を除き、2023年4月1日から施行される。
国会論議
国会では、文部科学省所管の幼稚園や学校などの教育施策がこども家庭庁に移管されない理由、また、こども家庭庁を省としない理由について質問があり、政府から、文部科学省所管の学びに関する行政には、児童福祉など育ちに係る行政と相互に関連する側面があるものの、それぞれの目的を追求する中で専門性を高めつつ、相互に調整し、密接に連携する方が、政府全体としての施策の充実、質の向上になると考えたものであり、また、政府を挙げて政策を強力に推進するためには、各省庁より一段高い立場から政府部内の総合調整を行う権限が重要であり、それを恒常的に実施できるのは総理大臣直属の機関だけであることから、こども家庭庁は内閣府の外局である庁としたとの説明がされた。