最新法律ウオッチング

月刊「地方財務」

最新法律ウオッチング―刑法等の一部を改正する法律(2022年6月17日施行)

自治体法務

2022.10.20

※2022年8月時点の内容です
最新法律ウオッチング 第119回 刑法等改正
(『月刊 地方財務』2022年9月号)

 2022年の通常国会において刑法等の一部改正法が成立した。

 新たな犯罪被害者を生まない安全、安心な社会を実現するためには、罪を犯した者の改善更生と再犯防止を図ることが重要であり、これまで、国、地方公共団体、民間協力者が一体となって様々な取組を進めてきたこともあり、再犯者の人員は減少傾向にあるが、依然として刑法犯の検挙人員のうち5割近くを再犯者が占めている。このため、罪を犯した者について、その特性に応じたきめ細かな指導、支援を行うことができるようにするなど、その改善更生と再犯防止に向けた処遇の充実を更に推進することが必要と指摘されていた。

 また、近時、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化していることを契機として、誹謗中傷に対する非難が高まり、これを抑止すべきとの国民の意識も高まっていることから、侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止することが必要と指摘されていた。

 そこで、政府は、罪を犯した者の施設内、社会内処遇をより一層充実させるとともに、侮辱罪の法定刑を引き上げるため、刑法等の一部改正案を国会に提出し、成立した。

刑法等の改正

●拘禁刑の創設
 刑法に定める刑のうち、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる「懲役」と刑事施設に拘置する「禁錮」を廃止し、これらに代わるものとして、「拘禁刑」を創設し、拘禁刑は、刑事施設に拘置し、拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、必要な指導を行うことができることとした。

 また、従来は、刑法では、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が1年以下の懲役か禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときは、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができることとされていたところ、この対象を拡大し、前に拘禁刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が2年以下の拘禁刑の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときとした。あわせて、猶予の期間内に更に犯した罪について公訴の提起がされている場合には、当該罪についての有罪判決の確定が猶予の期間の経過後となったときにおいても、猶予された当初の刑を執行することができることとした。

●矯正処遇に関する改正等
 「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」では、受刑者には、矯正処遇として、刑事施設の長が定める処遇要領に基づいて、作業を行わせ、指導を行うこととしているところ、資質や環境の調査の結果に基づき受刑者ごとに定めるものとされている処遇要領について、入所後できる限り速やかに、矯正処遇の目標や作業、指導ごとの内容、方法をできる限り具体的に記載して定めることとした。

 また、刑事施設の長や保護観察所の長は、被害者等から申出があったときは、その心情等を聴取することとし、これを矯正処遇や保護観察に生かすこととするほか、被害者等から申出があったときに保護観察対象者に対して被害者等の心情等を伝達する従来からの措置に加えて、受刑者に対しても被害者等の心情等を伝達することとした。

●侮辱罪の法定刑の引上げ
 刑法では、事実を摘示せずに公然と人を侮辱する侮辱罪の法定刑について、従来は、1日以上30日未満、刑事施設に拘置する「拘留」又は千円以上1万円未満の「科料」とされていたところ、1年以下の拘禁刑(懲役・禁錮)や30万円以下の罰金も法定刑に加えられた。

●施行期日
 この法律は、公布の日(2022年6月17日)から3年以内に施行されるが、侮辱罪の法定刑の引上げについては、公布の20日後から施行された。

国会論議

 国会では、拘禁刑により罪を犯した者の改善更生が可能となるのかについて質問があり、政府から、拘禁刑の創設により、個々の受刑者の特性に応じ、作業と指導とをベストミックスした処遇を行うことが可能となることによって、一層効果的に罪を犯した者の改善更生、再犯防止を図ることができるようになるとの説明がされた。

 また、侮辱罪の法定刑の引上げにより言論の自由が大幅に制限されかねないという指摘があり、政府から、侮辱罪の処罰対象となる行為の範囲は変わらず、また、侮辱罪も教唆犯、幇助犯の対象となるが、教唆や幇助自体の意義や処罰範囲を変更するものではなく、逮捕状による逮捕・勾留に関して、住居不定であることなどの制限はなくなるが、それ以外の要件は変わらず、恣意的な逮捕等が可能になるものでもないことから、言論の自由に不当な萎縮効果を生ずるものではないとの説明がされた。

 

 

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