月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2022年5月号 特集:VUCA時代の自治体政策と組織

地方自治

2022.04.27

 

●特集:VUCA時代の自治体政策と組織

近年、VUCAの時代だといわれている。「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとったもので、不確実で将来の予想が難しい社会状況を指す言葉だ。2月末からのロシアによるウクライナ侵攻はそれをまざまざと感じさせた。今後どのようになっていくかは現時点では全く見通せないが、冷戦後に築かれてきた国際関係を根底から揺るがしていることは間違いない。そして日本の社会や地域にもこれからさまざまな影響が及ぶはずだ。もちろんまだ終息に至らない新型コロナパンデミックや、気候変動への対応をはじめ、多くの世界共通の課題にも、自治体や地域は向き合わなければならない。こうした時代の中で自治体はどう政策や計画を立案し、実行、実現させていくのか。今回は考えてみたい。

■VUCA時代の自治体の役割/牛山久仁彦

国の政策の不確実性は、自治体の政策実施のあり方にも影響を与える。新型コロナ禍への対応では、自治体は政策の不確実性に振り回された。VUCA時代の到来は、集権的な体制では、もはや地域住民の求める政策実施が困難となり、自治体が国の政策方向をふまえつつも、自ら政策実施に責任を負い、地域にとって最適な政策を実施していく体制を創っていくことを求めているのである。

牛山久仁彦 明治大学政治経済学部地域行政学科長・教授

自治体は行財政能力に大きな開きがある。国が全国的に政策を進めようと思っても、自治体の状況によって組織も政策も対応はさまざまにならざるを得ない。自治体は、政策実施にあたり、VUCAを前提に地域でどのような現実が生じるのかを自ら考えていかざるを得ないのである。

■ウクライナ危機は日本社会に何をもたらすか/熊野英生

ロシアのウクライナへの軍事侵攻に対して、欧米の対応は素早く、厳しい経済・金融制裁を科した。この制裁は、たとえ停戦合意を決めたとしても継続され、エネルギー分野でロシアからの供給がストップした状態が長引く可能性が大きい。そして、ウクライナ危機は、これまでデフレで苦しんできた日本経済をインフレに転換させることになるだろう。

■VUCA時代の行政計画/佐藤 徹

行政やビジネスを取り巻く外部環境が目まぐるしく変化し、先行き不透明な時代が到来しているなか、旧態依然とした行政計画では、VUCA時代には到底対応できない。それでは、VUCA時代の行政計画に実装すべき機能とは何だろうか。今後、行政計画をどのように策定し、運用すればよいのだろうか。自治体経営のオペレーティング・システムにあたる総合計画を念頭に検討してみたい。

■VUCA時代の政策形成にデジタルをどう活かすか/川島宏一

VUCAという先が見えず不確実な社会だからこそ、自治体には自らの存立基盤である地域や住民のことを精緻に把握し、ニーズを汲み取り、対話しながら政策をつくっていくことが求められる。そのカギを握るのが、現在急速に進化しているデジタル技術だ。その政策形成への活かし方について、筑波大学の川島宏一教授に話を聞いた。

■VUCA時代に求められるダイバーシティな地域づくり/田村太郎

VUCAの時代、人々はより安全で寛容な地域で暮らすことを以前にも増して希求する。ダイバーシティな地域づくりが、これからの持続可能な自治体となれるかどうかを左右することになるだろう。多様な働き方や住まい方、性的指向や家族のあり方に対応し、新たな考え方に基づいた自治体施策の整備が急がれる。

■VUCA時代に求められる行政組織のダイナミック・ケイパビリティ
──行政組織の不条理とDX/菊澤研宗

今日、企業のみならず行政組織にも求められているのは、ダイナミック・ケイパビリティつまり変化対応的な自己変革力である。しかも、そのような能力を高めるためには、行政組織のデジタルトランスフォーメーションは避けて通れないのである。

■VUCA時代に求められる人材とは/沢渡あまね

VUCAの時代とは、いわばこれまでの経験や成功法則が通用しにくい時代である。一方で、日本の多くの組織が過去の「勝ちパターン」から脱却できずにいる。VUCAの時代において、「統制型」モデルによる思考停止構造は組織及びそこで働く人たちにとって大きなリスクである。これからの時代は、「オープン型」の仕事のやり方を部分的にでも取り入れていく必要がある。

■VUCA時代に求められる"問いかける力"
──正解のない問いを共に生きるために/広石拓司

これからの自治体職員には“正解のない問い”に取り組む力が求められる。“正解のない問い”に対しては、“解く”ことから入るのではなく、「問いの背景は何か、自分の現場では何が起きているのか、何が問題なのか、問題はどう変化しているのか、どうして問題は解決できていないのか」と問い自体を問い直し続け、かつそれを多様な人と取り組んでいく必要がある。それが「正解のない問いを共に生きる」という言葉で表していることだ。

【キャリアサポート面】

●キャリサポ特集
 情報発信の極意

新年度がスタートし、新たな事業やプロジェクトなども始まります。それを成功に導く大きなカギを握るのが発信力。
近年、インターネットやSNSをはじめメディアが多様化する中で、事業の対象となる人にどうアプローチし、どう伝えていけばいいのか。また、一方的に伝えるだけでなく、どう双方向のコミュニケーションをとるかも問われます。これは広報担当だけに限らず、自治体全体、そして職員一人ひとりの課題でしょう。
今月は、そうした情報発信のポイントをご紹介します。

■伝わる情報発信と伝わる魅せ方/谷 浩明

新年度がスタートし、広報や観光をはじめ、住民への情報発信が必要な部署に配属が決まった方もいるだろう。そんなみなさんの中には、「そもそも情報発信の方法がわからない…」「(住民に)情報は伝えてはいるが本当に伝わっているかわからない…」「住民に伝わる情報発信をしたい…」など、情報発信についての課題や悩みをお持ちの方はいないだろうか?今回はそんなみなさんに向け、前半は「伝わる情報発信」の考え方、後半は「伝わる情報の魅せ方(デザイン・言葉)」について一緒に考えていきたいと思う。

■まちのファンをつくる、自治体ウェブ発信の秘訣/狩野哲也

情報発信のポイントは情報設計だと考える。「その情報が本当に必要な人はどんな人なのか?」を強く意識しないと、本当に必要な人に情報が届かない場合がある。そのために情報設計を常に更新し続けていく必要がある。

〈取材リポート〉
◆「いがいと!福知山」「明智光秀」をキーワードに魅力を発掘・発信/京都府福知山市

2021年12月、民間団体が主催する第1回シティプロモーションアワードの表彰式が行われ、京都府福知山市が他の12市町とともに金賞を受賞した。ブランドメッセージ「いがいと!福知山」を核とする市民向けの取り組みと、明智光秀をテーマとする市外向けの取り組みが対象。いずれも、複数のSNSを活用して市内外の住民を巻き込み、楽しみながらまちの魅力を発掘・発信しているのが特徴だ。

●連載

■管理職って面白い! 選択理論/定野 司
■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ まちの雰囲気が未来を創る/後藤好邦

■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇
■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/鈴木香理 ■自治体DXとガバナンス/稲継裕昭
■働き方改革その先へ!人財を育てる“働きがい”改革/高嶋直人 ■キャリアを拓く!公務員人生七転び八起き/堤 直規 ■そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室/関根健夫 ■宇宙的公務員 円城寺の「先憂後楽」でいこう!/円城寺雄介 ■次世代職員から見た自治の世界/青木悠太 ■ただいま開庁中!「オンライン市役所」まるわかりガイド/辻村真輝 ■誰もが「自分らしく生きる」ことができる街へ/阿部のり子 ■自治体法務と地域創生──政策法務型思考のススメ/関東学院大学地域創生実践研究所 ■にっぽんの田舎を元気に!「食」と「人」で支える地域づくり/寺本英仁 ■もっと自治力を!広がる自主研修・ネットワーク/小美玉OM

●巻頭グラビア

自治・地域のミライ
壬生照玄・長野県高森町長
「なりたい『あなた』に会えるまち」を目指し、地域に根差した人材育成を推進

2018年1月の町長選で「人材育成」を柱に23項目のマニフェストを掲げて初当選した長野県高森町の壬生照玄町長。今年1月に再選し、町の将来像「なりたい『あなた』に会えるまち~日本一のしあわせタウン高森~」を目指し、「地域に根差した人材育成」がさらにパワーアップしている。

壬生照玄・長野県高森町長(52)。町長室にて。ここからオンラインの会議などにも参加。「地域に根差した人材育成」を柱に据える。首長としては「ぶれないことが大切。絶対に軸は変えない」と話す。

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
3・11から4・11へ、震災が起こした断層地震
──福島県いわき市、原発事故に隠された災害[原発事故、続く模索]

「4・11」。そう呼ばれる地震があったのをご存じだろうか。東日本大震災からちょうど1箇月後の2011年4月11日、福島県いわき市の田人地区を震源として、断層地震が起きたのだ。土砂崩れで4人が亡くなるなどしたものの、津波や原発事故の混乱に紛れて広くは知られなかった。だが、「正断層」が地表に現れた地震は観測史上初めてといい、学術的に貴重だ。地元では教訓を忘れないためにも、断層の保存や語り継ぎが行われている。

□現場発!自治体の「政策開発」
成果連動型の委託契約で大腸がん検診受診率を高める
──SIB導入による大腸がん検診・精密検査受診率向上事業(東京都八王子市)

東京都八王子市は、大腸がんの検診と精密検査の受診率を向上させるため、SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)を導入したモデル事業を実施した。民間の資金と創意工夫・ノウハウを活用し、事業成果に応じて委託料を支払う取り組みで、ヘルスケア分野では全国初の試みだ。受診率向上など効果が認められたことから、市はノウハウを生かして大腸がん検診の受診勧奨を継続するとともに、乳がん検診受診率向上への成果連動型委託契約事業を開始した。

□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
町村議会の議員報酬・政務活動費の充実に向けた議論を──全国町村議会議長会

全国町村議会議長会(会長=南雲正・新潟県湯沢町議会議長)は2月、「議員報酬・政務活動費の充実に向けた論点と手続き?住民福祉の向上を実現する町村議会のための条件整備?」と題した報告書をまとめた。また、5月末には「議会力アップのための活動例」と題した事例集を発行する予定。両者を基に、町村議会の議員報酬・政務活動費の充実に向けた議論を盛り上げていく。

●Governance Focus

□封印された農業用ダム決壊を掘り起こす
──京都府亀岡市「平和池」。住民が訴える「知・備・伝」/葉上太郎

戦後間もない1951年、現在の京都府亀岡市に建設された農業用ダム「平和池」が豪雨で決壊し、同市を中心に死者114人、負傷者238人を数える大惨事となった。国家的プロジェクトとして誘致してから、わずか2年弱での災害。行政は実質的に「事実」を封印し、教訓が伝わらないままになってきた。疑問を抱いた被災地の住民が発災50年を機に調査を始める。「知る、備える、伝える」に力点を置いた取り組みは、やがて行政や他の被災地を動かしていった。

●Governance Topics

□「地方議会評価モデル」導入で、キックオフ講演会を開催/長野県飯田市議会

長野県飯田市議会は、(公財)日本生産性本部の研究会が作成した「地方議会評価モデル」を導入することを3月23日に公表、3月29日には同モデル導入に伴うキックオフ講演会を開催した。全議員を対象とした同モデルの導入は全国初。市議会では1年かけて議論、来年3月末には議会プロフィール、新「議会改革・運営ビジョン」と「ロードマップ」を公表する予定だ。

□都市と地方をつなぐ新たな拠点に/ちよだグルショップ+Aリニューアルオープン記念セミナー

東京の真ん中・千代田区で、地方のおいしいものを紹介してきたアンテナショップ「ちよだいちば」が「ちよだグルメショップ+A」にリニューアルしたのを記念するセミナーが4月11日、開催された。セミナーは会場とオンラインのハイブリッド方式で、多くの自治体関係者などが参加。都市と地方をつなぐ新しい拠点の誕生に期待を寄せた。

●連載

□ザ・キーノート/清水真人
□自治・分権改革を追う/青山彰久
□新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之
□市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照
□地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚 □“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘 □自治体の防災マネジメント/鍵屋 一 □市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹 □公務職場の人・間・模・様/金子雅臣 □生きづらさの中で/玉木達也 □議会局「軍師」論のススメ/清水克士 □「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭 □注目映画情報/『ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇』『スープとイデオロギー』 □リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『公務員30歳からの時短仕事術』柳田 香]

●カラーグラビア

□技・匠/大西暢夫
2000年前から変わらない煤づくりの技
──紀州松煙煤職人・堀池雅夫さん(和歌山県田辺市)
□わがまちの魅どころ・魅せどころ
瀬戸内ならではの絶景と文化・芸術の融合を実感!/香川県三豊市
□山・海・暮・人/芥川 仁
身を削る資源保護の努力──茨城県東茨城郡大洗町
□生業が育む情景~先人の知恵が息づく農業遺産
厳しい環境下で培われた「水」の知恵
──持続可能な水田農業を支える「大崎耕土」の伝統的な水管理システム(宮城県大崎地域)
□人と地域をつなぐ──ご当地愛キャラ/かのやカンパチロウ(鹿児島県鹿屋市) □クローズ・アップ
アートを通した「地域の魅力発見」──京都府亀岡市「霧の芸術祭」


■DATA・BANK2022 自治体の最新動向をコンパクトに紹介!

 


【特別企画】

□デジタル技術によって誰一人取り残さない社会の実現へ①
遠隔通訳者とAIによる多言語通訳システムで
外国人住民への窓口対応を向上──川崎市

□自治体とスタートアップが共創する地域創生
オープンイノベーションの取り組みの今を知る
──「GAPs SAGA」(佐賀県)

※「童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝」「From the Cinema その映画から世界が見える」は休みます。

 

 

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株式会社ぎょうせい

「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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